PNG画像形式が大幅アップデート、Mozilla開発のAPNGが正式仕様に採用

PNG画像形式が大幅アップデート、Mozilla開発のAPNGが正式仕様に採用

World Wide Web Consortium(W3C)が2025年6月24日、Portable Network Graphics(PNG)形式の仕様第3版をW3C勧告として正式発表した。

PNG形式の主要改訂は1996年のバージョン1.0、2003年の第2版に続き22年ぶりとなる。新仕様では、2004年にMozillaが開発し2008年からFirefoxで実装されていたAPNG(アニメーションPNG)が公式に標準化された。また、Coding Independent Code Points(CICP)による色空間識別を通じてHDR(ハイダイナミックレンジ)サポートが追加され、わずか4バイトの追加でより広い色域を表現可能になった。さらにEXIFデータの公式サポートも実現した。

W3CのPNG担当ワーキンググループ議長のクリス・ブルームが「PNG is back!」と題した投稿で新機能を説明している。Chrome、Safari、Firefox、Photoshop、macOS、iOSなど主要プラットフォームが既に対応済みで、W3Cは既に第4版、第5版の開発に着手している。

From: 文献リンクExif marks the spot as fresh version of PNG image standard arrives

【編集部解説】

PNG第3版の発表は、ウェブ技術の基盤インフラが着実に進化していることを示す重要な節目です。22年という長期間のブランクは、PNG形式がいかに完成度の高い技術として定着していたかを物語っています。

今回の更新で最も注目すべきは、APNGの正式標準化でしょう。2004年に登場しChromium系ブラウザでも対応していたこの技術が、ようやく公式仕様に組み込まれました。これにより、開発者はGIFの代替として高品質なアニメーション画像を安心して採用できるようになります。

HDR対応の技術的背景も興味深いポイントです。CICPによる色空間識別は、放送業界で使われていた仕様をウェブ画像に応用したもので、わずか4バイトの追加データで実現されています。これはJPEG XLなど他の次世代フォーマットでも採用されている手法で、技術の相互利用が進んでいることを示しています。

実用面では、主要プラットフォームが既に対応済みという点が重要です。新しい仕様が発表されても実装が追いつかないケースが多い中、PNG第3版は「既に使える技術」として登場しています。

興味深いのは、W3C Timed Text Working Group、BBC、Comcast、NBCUniversal、MovieLabsなどの放送・メディア企業がPNGのHDR対応を強く要望していた点です。字幕やバナー表示でのHDR対応需要が、今回のアップデートを後押ししました。

PNG第3版の登場は、既存技術の着実な進化を示すものですが、同時にウェブ画像フォーマットの標準化競争がいかに複雑化しているかも浮き彫りにしています。技術的優位性だけでなく、プラットフォーム事業者の戦略的判断が標準の普及を左右する現実を改めて認識させる事例といえるでしょう。

【用語解説】

PNG(Portable Network Graphics)
1996年に開発された可逆圧縮のラスター画像形式。「ピング」と発音される。透明度をサポートし、特許フリーでGIFの代替として普及した。

APNG(Animated Portable Network Graphics)
2004年にMozillaが開発したPNGの拡張形式で、アニメーション機能を持つ。24ビットカラーと8ビット透明度をサポートし、GIFより高品質なアニメーション画像を作成できる。

EXIF(Exchangeable Image File Format)
デジタル画像ファイルに埋め込まれるメタデータ。カメラの機種、撮影日時、露出設定、GPS位置情報、カメラ設定などの情報を含む。

HDR(High Dynamic Range)
従来の画像よりも広い明度範囲を表現できる技術。人間の目に近い色彩表現が可能で、より自然で鮮やかな画像を実現する。

CICP(Coding Independent Code Points)
色空間を識別するための仕様。放送業界で使用されていた技術をウェブ画像に応用したもので、わずか4つの数値で色空間情報を格納できる。

JPEG XL
次世代画像フォーマットの一つ。高い圧縮効率を持つが、GoogleやInterop 2024からの支持を得られていない状況が続いている。

【参考リンク】

W3C(World Wide Web Consortium)(外部)
ウェブ標準を策定する国際的な標準化団体。HTML、CSS、XMLなどの仕様を開発している

Mozilla Firefox(外部)
Mozillaが開発するオープンソースのウェブブラウザ。APNGを2008年から正式サポート

PNG第3版公式仕様書(外部)
W3Cが発表したPNG第3版の公式仕様書。image/pngとimage/apngを定義

【参考記事】

PNG is back! – Chris Blume(外部)
PNG第3版の新機能について詳細に解説。HDRサポートとAPNG標準化を説明

After more than twenty years: Time for a new PNG(外部)
ドイツのテクノロジーメディアによるPNG第3版の技術的背景解説記事

PNG file specifications updated for the first time in over 20 years(外部)
PNG第3版について詳しく解説。HDRサポートの視覚的効果を画像例で説明

【編集部後記】

PNG第3版の登場で、ウェブ画像の未来がまた一歩前進しました。皆さんは普段、どんな場面でアニメーション画像を使っていますか?GIFの粗い画質に物足りなさを感じたことはありませんか?APNGの正式標準化により、これまでとは違う表現の可能性が広がりそうです。また、HDR対応によって、スマートフォンで撮影した鮮やかな写真をウェブでもそのまま表示できるようになります。クリエイターの方々にとって、この変化はどのような影響をもたらすでしょうか?ぜひ皆さんの視点や体験を教えていただけると嬉しいです。

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