2025年5月20日から23日まで台北南港展示センター ホール1・2で開催されたCOMPUTEX 2025で、The Registerが注目すべき製品を取材した。
中国深圳銀辰公司のAkkoブランドは「Bun Wonderland」キーボードを展示し、全ての文字・数字キーをパンの形状にデザインした製品を発表した。
中国企業Biosongは5月にB7イヤホンを発売し、アクリル製つけ爪素材の薄片を収納するスロットを搭載してネイルサロンでのカスタマイズを可能にした。
NVIDIAのCEOジェンセン・ファンの基調講演は需要が高く、台北展示センターから5,000席の台北ミュージックセンターに会場変更された。NVIDIAはCOMPUTEXとGTCカンファレンス用にグッズストアを設置し、ファンの顔をプリントしたパーティーシャツをNT$1,100(37ドル)で販売した。
ASUSは「Destrier Core」ゲーミングチェアとXG Station 3外部グラフィックスドックを発表し、後者はNVIDIA GeForce RTX 50またはAMD Radeon RX 9000シリーズGPUを収納してThunderbolt 5経由でラップトップに接続可能である。
References:
Get a custom paint job for earbuds at a nail salon, type on a baguette, then build a fountain for your PC
【編集部解説】
COMPUTEX 2025で注目を集めたこれらの製品群は、一見すると奇抜に見えますが、実はテクノロジー業界における重要なトレンドを反映しています。
カスタマイゼーション市場の拡大
Biosong B7イヤホンのネイルサロン連携は、従来のテック業界とビューティー業界の境界を曖昧にする革新的なアプローチです。イヤホン市場は年間数億台規模で成長を続けており、差別化が困難な成熟市場において、このような体験型カスタマイゼーションは新たな収益源となる可能性があります。
ネイルサロンという既存のインフラを活用することで、テクノロジー企業が新しい販売チャネルを開拓できる点も注目に値します。これは単なる製品販売ではなく、サービス体験の提供という観点で捉えるべきでしょう。
ゲーミング周辺機器の多様化
Akkoの「Bun Wonderland」キーボードは、機能性よりもアイデンティティ表現を重視するユーザー層の存在を示しています。メカニカルキーボード市場は年率15%以上の成長を続けており、特にカスタマイゼーション可能な製品への需要が高まっています。
ただし、記事でも指摘されているように、デザイン性と実用性のバランスは重要な課題です。タイピング効率の低下は、長期的なユーザー満足度に影響を与える可能性があります。
外部GPU市場の転換点
ASUS XG Station 3は、Thunderbolt 5の普及により外部GPU市場が本格的な成長期に入ることを示唆しています。従来の外部GPUは帯域幅の制約により性能が制限されていましたが、Thunderbolt 5の80Gbps帯域により、この問題が大幅に改善されます。
これにより、薄型ノートPCでもデスクトップ級のグラフィック性能を必要に応じて利用できるようになり、モバイルワークステーションの概念が大きく変わる可能性があります。特にAIワークロードや3Dレンダリングなど、高いGPU性能を要求する作業において、その効果は顕著に現れるでしょう。
COMPUTEX 2025の規模と影響力
今年のCOMPUTEXは「AI Next」をテーマに、AI & Robotics、Next-Gen Tech、Future Mobilityの3つの重点分野に焦点を当てて開催されました。台湾貿易センター(TAITRA)主催のこのイベントには、36の国・地域から1,500社が出展し、世界最大級のAI・IoT展示会としての地位を確立しています。
Jensen Huang現象の意味
NVIDIAのJensen HuangがComputexで受けた熱狂的な歓迎は、AI革命における同社の影響力の大きさを物語っています。5,000席の会場変更という異例の対応は、テクノロジー業界におけるNVIDIAの地位がAppleやGoogleと同等レベルに達していることを示しています。
グッズ販売という商業的な側面も興味深く、テクノロジー企業のブランド価値がエンターテインメント業界に近づいていることを表しています。これは、テクノロジーがより身近で感情的な存在になっていることの証左でもあります。
潜在的なリスクと課題
一方で、これらの製品には注意すべき点もあります。カスタマイゼーション重視の製品は、品質管理や耐久性の面で課題を抱える可能性があります。また、外部GPUのような高性能機器は消費電力や発熱の問題も考慮する必要があります。
さらに、ニッチな市場をターゲットとした製品は、スケールメリットを活かしにくく、価格競争力の面で不利になる可能性もあります。
【用語解説】
COMPUTEX TAIPEI:
台湾貿易センター(TAITRA)主催の世界最大級のAI・IoT展示会。2025年は「AI Next」をテーマに台北南港展示センターで開催。
メカニカルキーボード:
各キーの下に独立したスイッチ機構を持つキーボード。一般的なメンブレン式と比べて耐久性が高く、打鍵感が優れている。
Thunderbolt 5:
インテルが開発した最新の高速データ転送規格。従来のThunderbolt 4の2倍となる80Gbpsの帯域幅を実現。
外部GPU(eGPU):
ノートPCに外付けで接続するグラフィックス処理装置。
【参考リンク】
COMPUTEX TAIPEI 2025公式サイト(外部)
台湾貿易センター主催の世界最大級AI・IoT展示会。事前登録や出展者情報を提供。
AKKO(艾酷)公式サイト(外部)
中国の深圳銀宸科技が運営するゲーミング周辺機器ブランド。キーボード、マウス、キーキャップなどを展開。
ASUS ROG公式サイト(外部)
ASUSのゲーミングブランドROGの製品情報。Destrier CoreチェアやXG Station 3外部GPUを展開。
NVIDIA公式サイト(外部)
グラフィックスカードとAI技術のリーディングカンパニー。GeForceシリーズやAI関連製品を提供。
【編集部後記】
今回のCOMPUTEX 2025で見えてきたのは、テクノロジーがより個人的で感情的な存在になっているということです。パンの形をしたキーボードやネイルサロンでカスタマイズできるイヤホンは、一見奇抜に見えますが、実は私たちの「自分らしさを表現したい」という欲求に応えているのかもしれません。皆さんは、機能性と個性のバランスをどう考えますか?また、Jensen Huangのような技術者がロックスター並みの人気を集める現象をどう捉えていますか?テクノロジーの未来について、ぜひご意見をお聞かせください。