Unitree A2|時速18kmで走るロボット犬、100kg積載のハイスペックモデルが登場

Unitree A2|時速18kmで走るロボット犬、100kg積載でガラス突破の衝撃映像公開

中国のUnitree Roboticsが2025年8月、四足歩行ロボット「A2 Stellar Explorer」を発表した。

同社は以前にヒューマノイドロボット「R1」を発表している。A2は最高速度時速11.2マイル(約18 kph)で走行でき、ホイール装着によりさらに高速化が可能である。積載能力は歩行時最大55ポンド(25 kg)、静止時221ポンド(100 kg)となっている。

超広角Lidar 3D認識技術、前面HDカメラ、高度なコンピューティング機能を搭載し、交換可能な2つのバッテリーを備える。同社は産業用および民間用途向けとしているが、価格と販売時期は未発表である。

米陸軍がAI対応砲塔を装備した類似の四足歩行ロボットをテスト済みであり、中国人民解放軍も独自の四足歩行ロボットを試験している。Unitreeは2016年に設立された企業である。

From: 文献リンクThis remarkable ‘robot dog’ will send a shiver down your spine

【編集部解説】

Unitree A2 Stellar Explorerが示すのは、ロボティクス分野の急速な技術革新とコスト削減の同時実現です。

技術的ブレークスルーの詳細

従来のBoston Dynamics社のSpotロボットが最高速度1.6m/s(約5.7km/h)に対し、A2は5m/s(18km/h)という約3.2倍の速度を実現しています。これは単なる速度向上ではなく、制御システムの根本的な進歩を意味します。12自由度の関節モーターによる180Nmのトルク出力と、デュアルLiDARシステム(前方・後方配置)による360度環境認識が、この性能を支えています。

実用性における重要な改善点

稼働時間の大幅な改善も注目すべき点です。デュアル9,000mAhバッテリー(計18,000mAh)で無負荷時5時間/20km、25kg積載時3時間/12.5kmの連続歩行が可能であり、ホットスワップ対応により24時間運用が理論上可能です。標準モデルでは8コアCPU、上位モデルのA2-PROではIntel Core i7プロセッサーを搭載することで、リアルタイムでの複雑な計算処理にも対応しています。

産業応用における潜在的インパクト

IP56の外装保護レベルとIP67のコア部品保護により、-20°C〜55°Cの幅広い環境での運用が可能です。これにより、建設現場の測量、災害現場での捜索救助、物流倉庫での自動搬送など、従来は人間やホイール型ロボットに依存していた分野での活用が現実的になります。

軍事応用への懸念と現実

記事で言及された軍事利用については、既に現実のものとなっています。米軍はAI搭載砲塔付きの類似ロボットを中東でテスト済みであり、中国人民解放軍も独自の四足歩行ロボットを試験配備しています。A2の物理的耐久性(最大100kg搭載など)や高速移動能力は、民間用途を超えた応用可能性を示唆しています。

規制環境への影響

現在、四足歩行ロボットに対する包括的な国際規制は存在しません。しかし、A2のような高性能機種の普及により、各国政府は軍民両用技術としての管理強化を検討する可能性があります。特に、自律性能の向上と武装化の容易さが、今後の規制議論の焦点となるでしょう。

長期的な技術トレンドへの示唆

Unitreeが2016年の創業以来追求してきた「高性能ロボットの民主化」というビジョンは、A2により新たな段階に到達しました。同社が過去に発表したGo1(約3,500ドル)やR1ヒューマノイド(推定価格未発表)と合わせ、ロボット技術の大衆化が加速することは間違いありません。

これは単なる製品発表を超えて、人間と機械の共存形態を根本的に変える可能性を秘めた技術的転換点と捉えるべきです。A2が示すのは、SF映画の世界が現実になる瞬間の到来なのです。

【用語解説】

LiDAR(Light Detection and Ranging)
レーザー光を使って物体までの距離を測定し、3次元空間の形状を把握する技術である。自動運転車やロボットの環境認識に広く使用される。

ペイロード(Payload)
ロボットや輸送機器が運搬できる有効荷重を指す。燃料や機体重量を除いた、実際に運べる物質の最大重量である。

クアドルペド(Quadruped)
4脚で歩行する動物や機械を意味し、四足歩行ロボットの技術分野における標準的な呼称である。

自律機能(Autonomous Capabilities)
人間の直接操作なしに、プログラムされた目標に向かって独立して行動できる機能である。センサーデータに基づく判断と行動実行を含む。

IP56/IP67保護等級
国際規格による機器の防塵・防水性能の等級表示。IP56は粉塵の侵入を防ぎ強い噴流に耐え、IP67は完全防塵かつ一時的な水没に耐える。

ホットスワップ(Hot Swap)
機器の電源を切ることなく、稼働中にバッテリーやコンポーネントを交換できる技術である。

【参考リンク】

Unitree Robotics公式サイト(外部)
中国・杭州に本社を置く四足歩行ロボットの世界的メーカー。2016年設立で、消費者向けおよび産業用高性能ロボットの研究開発から販売まで手がける

Boston Dynamics Spot仕様(外部)
比較対象となる米国製四足歩行ロボット。最高速度1.6m/s、積載14kg、平均稼働時間90分(待機時間3時間)の仕様を持つ業界標準機種

【参考動画】

【参考記事】

Watch: Heavy heftin’ robodog smashes speed and agility barriers(外部)
A2の技術仕様詳細レポート。デュアルLiDAR、Wi-Fi 6、4G/GPS対応、octa-coreプロセッサー搭載など技術的詳細を報告

The US Army Is Testing Killer Robot Dogs With AI-Powered Rifles in the Middle East(外部)
Ghost Robotics製「Lone Wolf」ロボット犬が、サウジアラビアのRed Sands実験施設で反ドローン任務にテスト配備されている実態を報告

China tests armed robotic dogs in live-fire drills near Russian border(外部)
中国人民解放軍第76集団軍が、自動小銃を搭載した四足歩行ロボットを実戦演習で使用している映像を公開。ロシア国境近くの北部中国で実施

China Deploys Armed Robotic Dogs in Live-Fire Drills Near Russia’s Border(外部)
CCTV-7の報道に基づく中国軍のロボット犬配備状況の詳細分析。歩兵部隊との連携運用と戦術ドローンとの協調作戦の実例を報告

US Army Looks Into Robot Dog Armed With AI Rifle to Shoot Down Drones(外部)
米陸軍第10山岳師団が「Operation Hard Kill」演習でGhost Robotics Vision 60に搭載されたAI制御ライフルをテスト。自動標的追尾機能の実証実験を詳報

【編集部後記】

A2の圧倒的な性能を目の当たりにして、皆さんはどう感じられたでしょうか。このロボットのプロモーション映像のガラスを突き破るシーンは非常に衝撃的です。

時速18kmで走り、100kgを支える四足ロボットが、もはや研究室の産物ではなく実用段階にある現実。私たちは今、人間と機械の境界線が曖昧になる時代の入り口に立っています。これらのロボットが日常に溶け込んだとき、私たちの働き方や社会のあり方はどう変わるのでしょう。そして、その変化を私たち自身がどう迎え入れていくべきなのか。ぜひSNSで皆さんの率直な想いをお聞かせください。

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