Alef Aeronautics社は、公道走行可能で垂直離陸するフライングカーの試験運用開始について、ハーフムーンベイ空港とホリスター空港との正式協定を発表した。既存の3か所と合わせて計5か所の試験地点となる。
同社は「Model Zero Ultralight」から始めて商用のModel Aへ移行する予定である。Model Aは完全電気式で、道路走行時は最大200マイル、飛行時は110マイルの航続距離を持つ。昼間飛行のみが許可され、混雑地域での飛行は禁止される。
同社は連邦航空局から限定試験用の特別耐空証明を既に取得している。2022年に事前注文を開始し、3,300台超の予約を受けている。通常待機列への参加費は150ドル、優先は1,500ドルの返金可能デポジットが必要だ。1台当たりの予想価格は約30万ドルで、2025年末頃の生産開始を予定している。
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The world’s first flying car is ready for takeoff
【編集部解説】
フライングカーの実用化が現実味を帯びてきました。Alef Aeronautics社の取り組みは、これまでSF映画の世界でしかなかった空飛ぶクルマを、私たちの生活に導入する重要なステップといえるでしょう。
この技術の革新性は、単なる垂直離着陸機能だけではありません。道路走行と飛行の両方に対応した設計により、既存のインフラを活用しながら3次元の移動が可能になります。200マイルの道路走行と110マイルの飛行能力を組み合わせることで、従来の交通手段では困難だった効率的な長距離移動が実現します。
注目すべきは規制面での進展です。FAA(連邦航空局)からの特別耐空証明取得は、単なる技術開発を超えて、実際の運用に向けた法的基盤が整いつつあることを示しています。ただし、昼間飛行限定や人口密集地での飛行禁止など、安全面での制約は依然として厳しく設定されています。
一方で課題も見えてきます。30万ドルという価格設定は一般消費者には高額で、当初は富裕層向けの製品となる可能性が高いでしょう。また、空域管理システムの整備や操縦ライセンス制度の確立など、インフラ面での課題も残されています。
3,300台を超える事前注文は市場の強い期待を反映していますが、実際の量産開始から安全な運用体制の確立までには相応の時間を要すると予想されます。2025年末の生産開始予定は野心的なスケジュールといえます。
【用語解説】
垂直離着陸(VTOL)
Vertical Take-Off and Landingの略。滑走路を必要とせず、その場から真上に離陸し、真下に着陸できる技術である。ヘリコプターが代表例だが、最近は電動推進システムを用いたeVTOL機の開発が進んでいる。
特別耐空証明
FAA(連邦航空局)が発行する航空機の安全性を証明する資格の一種。通常の型式証明とは異なり、実験機や試作機、特殊用途機に対して限定的な飛行を許可する証明書である。
ウルトラライト機
重量254ポンド(約115kg)以下の単座航空機。アメリカでは操縦免許が不要で、昼間のみの飛行や人口密集地上空の飛行禁止など、厳格な運用制限がある。
ハーフムーンベイ空港
カリフォルニア州サンフランシスコ湾エリア南部にある小規模空港。正式名称はHalf Moon Bay Airport(HAF)で、一般航空機やプライベート機の運航に使用されている。
ホリスター空港
カリフォルニア州ホリスター市にある公共使用空港。正式名称はHollister Municipal Airport(CVH)で、一般航空機の拠点として機能している。
【参考リンク】
Alef Aeronautics公式サイト(外部)
フライングカー「Model A」の詳細仕様や事前予約情報、技術的な特徴について説明している公式サイト
FAA Advanced Air Mobility(外部)
連邦航空局による先進航空モビリティ(AAM)に関する規制情報や認証プロセスを詳細に解説
【参考記事】
Alef Aeronautics begins testing operations at Silicon Valley airports(外部)
シリコンバレーの2つの空港で試験運用開始、既存3つの試験地点との連携について詳述
Flying Car to Begin Testing at California Airports(外部)
カリフォルニア州での空港試験開始について、航空専門誌の視点から技術課題や規制進展を分析
Alef Aeronautics Model A Flying Car Overview(外部)
Model Aの技術仕様、30万ドルの価格設定、3,300台超の事前注文状況について詳細分析
With New Rule, FAA is Ready for Air Travel of the Future(外部)
FAA(連邦航空局)の先進航空モビリティ向け新規則発表、eVTOL機の商用運航規制整備
Alef’s Model A — a single-seater ‘retro’ flying car(外部)
科学誌による200マイル道路走行・110マイル飛行能力、完全電気式設計の技術的背景解説
【編集部後記】
フライングカーが現実のものとなる日が近づいているこのタイミングで、皆さんはどのような期待や不安をお感じでしょうか。私自身、子どもと空を見上げながら「いつか一緒に空を飛べるかもしれないね」と話すことがあります。このAlef社の取り組みは、まさに私たちが想像していた未来を形にしようとする挑戦です。
皆さんにとって、フライングカーはどんな場面で活用したいと思われますか?通勤時間の短縮、観光での新体験、それとも緊急時の移動手段として?また、30万ドルという価格や安全性への懸念など、実用化に向けた課題についてはいかがお考えでしょうか。こうした新技術が私たちの生活にどのような変化をもたらすのか、ぜひ一緒に考えてみませんか。

