SecondFi始動|「鍵は自分のまま」EMURGOが挑む、暗号資産で使う・貯める・稼ぐ時代

SecondFi始動|「鍵は自分のまま」EMURGOが挑む、暗号資産で使う・貯める・稼ぐ時代

EMURGOは2026年6月8日、セルフカストディ型ネオファイナンス・プラットフォーム「SecondFi」の正式ローンチを発表した。

SecondFiは、CardanoウォレットYoroi Walletがマルチチェーン型の金融プラットフォームへ進化したものである。Cardanoネイティブトークンに限られていたYoroiと異なり、SecondFiは1万種類以上の資産でクロスチェーンスワップに対応し、SOLからADAなどのスワップをアプリ内で行える。

Wirexとの提携でセルフカストディ型Visaカードを導入し、BanxaおよびEncryptusと提携して法定通貨のオン・オフランプに対応する。カードは現段階で、フィリピン、ベトナム、ドイツ、台湾などを含む39カ国で利用でき、最低チャージ額はなく、Apple PayとGoogle Payに追加できる。日本は第3四半期に提供予定である。

ADAのステーキング報酬、DRep委任、ステークプール参加はSecondFi内でも維持される。

From: 文献リンクSecondFi Launches: Spend, Save, and Earn With Crypto While Keeping Full Control

【編集部解説】

まず押さえておきたいのは、今回の「ローンチ」が突然の発表ではなく、周到に設計された段階的ロールアウトの到達点だという点です。EMURGOは2026年4月22日、バンコクで開催された金融カンファレンス「Money20/20」でSecondFiを初公開し、その時点ではウェイトリストの受付を開始していました。

続く5月7日にWirexとの提携深化が公表され、6月8日の正式ローンチへと至ります。innovaTopiaがこのタイミングで取り上げるのは、構想から実装へと移った「いま」が、暗号資産の自己管理と日常決済が初めて本格的に両立する転換点になりうるからです。

最大の論点は、見出しにもある「セルフカストディ型のVisaカード」という、一見すると矛盾した概念をどう理解するかにあります。従来の暗号資産カードの多くは、利用者がいったん資産を取引所や発行会社に預け、そこから支払う「カストディアル(預託型)」の仕組みを採用してきました。

SecondFiのカードはここを反転させます。利用者の資金は取引の瞬間までユーザー自身のウォレットに留まり、ADA、BTC、ETH、USDCなどの資産を、Visaが使える店舗で支払いに充てられる仕組みです。つまり「決済が成立する直前まで鍵を握り続ける」設計であり、これが「セルフカストディを保ったまま使える」という主張の核になっています。

ただし、この表現は一定の留保を要します。決済が確定する瞬間には、暗号資産の換金や決済ネットワークへの連携が発生し、そこにはWirexやVisaという第三者が介在します。「常に完全に自己管理」というよりは、「保有の局面では自己管理を維持し、支払いの局面でのみ仲介を通す」と理解するのが正確でしょう。免責事項にも、提供可否が法域・コンプライアンス・提携先の承認に左右されると明記されています。

この技術が開くのは、長らく暗号資産文化を縛ってきた「Not your keys, not your coins(鍵を持たぬ者にコインなし)」という標語と、日常の利便性とのトレードオフの解消です。FTX破綻のような中央集権的取引所の崩壊が、資産を自己管理へ移す動きを繰り返し後押ししてきた経緯があり、SecondFiはその不安に応えつつ決済体験を損なわない着地点を狙っています。

戦略的な射程はさらに広く見えます。EMURGOが照準を合わせているのは、暗号資産に明るい層だけではありません。ステーブルコインの流通額が3000億ドルを超えるなか、安定した通貨や基本的な銀行サービスへのアクセスが限られる東南アジア・ラテンアメリカ・アフリカといった新興国市場で、国境を越える金融ツールへの需要が高まっている、というのが同社の見立てです。カードの対応国にフィリピンやベトナムが含まれ、日本が第3四半期に控えるのも、この文脈で読むと一貫しています。

一方で、潜在的なリスクも冷静に見ておくべきです。支払い資産が暗号資産である以上、価格変動は購買力に直結します。ステーブルコインを使えば緩和できますが、今後予定されるステーブルコインのイールドやRWA(実物資産)連携は、各国で規制論議が活発な領域でもあります。

規制面では、日本市場への参入が特に注目に値します。日本は暗号資産交換業や資金移動業に関する規制が厳格で、Visaカードを通じた暗号資産決済には独自のハードルが想定されます。もっとも、日本の提供はあくまで「Q3予定」であり、現時点で公開されている対応国一覧に日本は含まれていません。提供可否は法域・コンプライアンス・提携先の承認に左右されると免責事項にも明記されており、確定情報ではない点に留意が必要です。第3四半期という時期設定が予定通り実現するか、どのような形態で提供されるかは、国内の他事業者にとっても試金石となるはずです。

長期的に見れば、今回の動きはCardanoエコシステムの性格そのものの転換を示唆します。基盤を支えてきたYoroiが、ADAの保有・管理を中心とした従来型のウォレットから、生活者向けの金融アプリへと衣替えするわけです。提携先のWirexは130カ国で700万人以上に利用されているとされ、SecondFi自身も100万人超の利用者を掲げています。ただし、自己管理型カードが日常決済として数百万人規模へ広がるかどうかは、確定した事実ではなく、これからの問いです。SecondFiは、その問いに対するCardano陣営からの具体的な解答だと位置づけられます。

【用語解説】

セルフカストディ(自己管理型)
暗号資産の秘密鍵をユーザー自身が保有し、取引所や事業者に預けずに資産を管理する方式である。対義語は、第三者に資産を預ける「カストディアル(預託型)」となる。

クロスチェーンスワップ
異なるブロックチェーン上の資産同士を交換する取引である。たとえばSolana上のSOLとCardano上のADAのように、本来は別々のネットワークにある通貨を1つのアプリ内で交換できる。

ステーキング/ステークプール
保有する暗号資産をネットワークの維持に預け入れ、その対価として報酬を得る仕組みである。Cardanoでは、複数の参加者の資産をまとめる「ステークプール」へ委任して報酬を受け取る。

DRep(Delegated Representative/委任を受けた代表者)
Cardanoのオンチェーン・ガバナンスにおいて、投票権を委ねる代表者を指す。保有者は自ら投票する代わりにDRepへ委任し、ネットワークの意思決定に間接的に参加できる。

オンランプ/オフランプ
法定通貨を暗号資産に交換する経路を「オンランプ」、暗号資産を法定通貨に戻す経路を「オフランプ」と呼ぶ。現実のお金とブロックチェーンの世界をつなぐ出入口にあたる。

RWA(Real World Assets/実物資産)
不動産や債券、貴金属など現実世界の資産をブロックチェーン上でトークン化したものである。伝統的金融とWeb3をつなぐ領域として注目されている。

Not your keys, not your coins(鍵を持たぬ者にコインなし)
秘密鍵を自分で管理しない限り、その暗号資産を本当に所有しているとは言えない、という標語である。自己管理の重要性を説く文脈で広く使われる。

FTX
かつて大手だった暗号資産取引所で、2022年に経営破綻した。預けた資産が引き出せなくなった事例として、自己管理の必要性が再認識される契機となった。

【参考リンク】

SecondFi 公式サイト(外部)
EMURGOが提供する自己管理型ネオファイナンスの公式サイト。対応国の一覧や各機能、最新情報をここで確認できる。

EMURGO 公式サイト(外部)
SecondFiとYoroiを開発するCardano共同創設エンティティの公式サイト。プレスリリースや事業内容を掲載している。

Wirex 公式サイト(外部)
SecondFiカードを発行するグローバル決済企業の公式サイト。VisaとMastercardの主要会員として知られる存在だ。

Banxa 公式サイト(外部)
SecondFiが提携する、法定通貨と暗号資産の出入口を提供するインフラ企業の公式サイト。対応通貨や仕組みを確認できる。

Encryptus 公式サイト(外部)
SecondFiが提携する機関投資家向けOTC・オフランプ企業の公式サイト。CardanoのステーブルコインUSDAにも関わる。

Cardano 公式サイト(外部)
ADAを基軸とするブロックチェーンの公式サイト。SecondFiが基盤とするネットワークの解説やエコシステム情報を掲載する。

Solana 公式サイト(外部)
クロスチェーンスワップの例に挙がったSOLを基軸とするブロックチェーンの公式サイト。技術や用途の解説を掲載している。

Visa 公式サイト(外部)
SecondFiカードが加盟店ネットワークとして利用する、世界的な国際決済ブランドの公式サイト。サービス概要を確認できる。

Money20/20 公式サイト(外部)
SecondFiが初公開された国際的なフィンテック・カンファレンスの公式サイト。開催情報や登壇企業などを掲載している。

【参考記事】

EMURGO Unveils SecondFi(EMURGO 公式)(外部)
2026年4月22日の初公開を伝えるEMURGO公式発表。ステーブルコイン3000億ドル超という市場背景が示されている。

SecondFi and Wirex Partner(PR Newswire)(外部)
Wirexとのカード提携深化を伝える公式リリース。130カ国700万人超という規模や提携の経緯が記されている。

SecondFi and Wirex Partner(Chainwire)(外部)
同提携の詳細版。Wirexが130カ国で200億ドル超を処理した実績や、取引の瞬間まで自己管理する仕組みを解説する。

Yoroi Wallet Is Evolving Into SecondFi(EMURGO 公式)(外部)
既存Yoroiユーザー向けの移行案内。自動更新で新規DL不要、資産やアクセスがそのまま継承される点を示している。

Non-custodial crypto cards proliferate(Blockworks)(外部)
自己管理型カードの業界潮流を論じた記事。FTX破綻が資産を自己管理へ移す動きを後押しした経緯を指摘している。

EMURGO launches SecondFi neobank platform(cryptonews.net)(外部)
第三者メディアによる紹介記事。暗号資産初心者でも複雑な設定なしに使える設計である点などが報じられている。

暗号資産に関連する事業を行うみなさまへ(金融庁)(外部)
国内で暗号資産交換サービスを行うには交換業登録が必要と示す公的情報。日本提供が「予定」段階である留保の根拠だ。

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【編集部後記】

「鍵は自分で持ったまま、コンビニでも海外でも使える」――そんな財布が現実になりつつあります。便利さのために資産を誰かに預けるのか、それとも自分で握り続けるのか。この問いは、暗号資産に縁がない方にとっても、これからのお金との付き合い方を考えるヒントになりそうです。みなさんなら、日々の支払いに自己管理型のカードを使ってみたいと思いますか。日本での提供が予定される今年第3四半期(Q3)に向けて、一緒に動向を追いかけていけたら嬉しいです。気づいたことがあれば、ぜひ教えてください。

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