BloombergのMark Gurman氏は2025年7月10日、Appleが当初2025年10月または11月頃に予定していたM5チップ搭載MacBook Proの発売を2026年初頭に延期したと報じました。同社は14インチと16インチのMacBook Pro(コードネームJ714とJ716)のリリース時期を内部的に見直しています。現在のM4 MacBook Proは2024年10月に発表され、11月に発売されました。
Appleは2026年にMacBook Pro発売20周年を迎えます。同年にはリデザインされたモデルの投入が計画されており、OLEDディスプレイの初搭載、より薄型のデザイン、ノッチからパンチホール式FaceTimeカメラへの変更が噂されています。OLEDディスプレイは2024年にiPad Proで初めて採用された技術です。
リデザインモデルにはM6チップの搭載が予想され、TSMCの2nmプロセスで製造される見込みです。また、C2セルラーモデムの搭載によりセルラー接続機能が追加される可能性があります。このMacBookに搭載される予定のmacOS 27はIntel Macをサポートしない見込みで、Appleシリコンへの完全移行を象徴する製品となります。
From:Why a redesigned MacBook Pro could still happen in 2026
【編集部解説】
今回のニュースは、Appleの製品戦略における重要な転換点を示すものです。M5 MacBook Proの発売延期という表面的な情報の背後には、同社の長期的な製品開発戦略が見え隠れしています。
M5チップ延期の技術的背景
BloombergのMark Gurman氏による報告は、TechRadar、9to5Mac、AppleInsiderなど複数の海外メディアで確認されており、情報の信頼性は高いと考えられます。M5チップの延期は、単なるスケジュール調整ではなく、より戦略的な判断である可能性があります。
現在のM4チップが2024年10月に発表されたばかりで、従来の年次更新サイクルを維持する必要性が薄れていることも要因の一つでしょう。
興味深いのは、M5 iPad Proは2025年秋に予定通り発売される見込みであることです。これは、AppleがMacとiPadで異なる戦略を採用していることを示唆しています。
2026年リデザインの技術的意義
2026年のMacBook Proリデザインで最も注目すべきは、OLEDディスプレイの採用です。これは2024年にiPad Proで初めて導入されたTandem OLED技術の発展形で、従来のmini-LEDと比較して輝度向上、コントラスト比の改善、電力効率の向上が期待されます。
TSMCの2nmプロセスを採用するM6チップは、従来の3nmプロセスから約15%の性能向上を実現する見込みです。これは特にAI処理において重要な意味を持ちます。機械学習タスクの高速化により、ローカルでのAI処理能力が飛躍的に向上し、クラウドへの依存度を下げることが可能になります。
セルラー接続の戦略的重要性
C2セルラーモデムの搭載検討は、MacBookの使用シーンを根本的に変える可能性があります。これまでWi-Fi環境に依存していたMacBookが、iPadのようにどこでもインターネット接続できるようになることで、真のモバイルワークステーションとしての地位を確立できるでしょう。
ただし、セルラー接続の実装には課題もあります。バッテリー消費の増加、通信キャリアとの契約体系、データプランの料金体系など、ユーザーにとって新たな検討事項が生まれます。
産業への波及効果
Appleの動向は業界全体に大きな影響を与えます。OLEDディスプレイの大型化により、Samsung DisplayやLG Displayなどのパネルメーカーの投資戦略にも影響が及んでいます。Samsung Displayは約30億ドルをIT向け第8世代OLED生産ラインに投資しており、Apple以外の顧客獲得も課題となっています。
長期的な競争環境への影響
2026年のMacBook Proリデザインは、Appleの「最薄・最軽量」戦略の一環でもあります。これは、Microsoft Surface、Dell XPS、Lenovo ThinkPadなどの競合製品に対する差別化要因となるでしょう。特に、macOS 27がIntel Macのサポートを終了することで、Appleシリコンへの完全移行が完了し、ソフトウェアとハードウェアの統合がさらに深化します。
潜在的なリスクと課題
一方で、急激な技術革新にはリスクも伴います。OLEDディスプレイの焼き付き問題、セルラー接続による通信費用の増加、より薄型化による放熱性能への影響などが懸念されます。また、2nmプロセスの歩留まり向上が予定通り進まない場合、供給不足や価格上昇の可能性もあります。
innovaTopiaの視点
このニュースが示すのは、Appleが単なる年次アップデートから、より戦略的な製品開発サイクルへと移行していることです。2026年のMacBook Pro 20周年という節目を活用し、真の次世代ラップトップを提示しようとする意図が読み取れます。これは、テクノロジー業界全体の発展方向を示す重要な指標となるでしょう。
【用語解説】
M5チップ
Appleが開発中の次世代プロセッサ。現行のM4チップの後継として2026年初頭に登場予定。TSMCの3nmプロセスで製造される見込みで、M1からM2、M2からM3への変化と同様の性能向上が期待される。
M6チップ
Appleが開発中のM5の次世代プロセッサ。TSMCの2nmプロセスで製造される初のAppleシリコンとなる予定。AI処理能力の大幅な向上と電力効率の改善が期待され、2026年後半のリデザインMacBook Proに搭載される可能性がある。
C2セルラーモデム
Appleが開発中の自社製5Gモデム。現在のQualcomm製モデムからの脱却を目指す第2世代の通信チップ。MacBookへの搭載により、Wi-Fi環境に依存しないセルラー接続が可能になる。
OLEDディスプレイ
有機発光ダイオードを使用した次世代ディスプレイ技術。現行MacBook ProのminiLEDと比較して、より高いコントラスト比、深い黒表現、電力効率の向上を実現する。
Tandem OLED
2層のOLED構造を持つディスプレイ技術。2024年にiPad Proで初採用され、従来のOLEDより高輝度と長寿命を実現している。
パンチホール式カメラ
ディスプレイに小さな穴を開けてカメラレンズを配置する設計。現行MacBook Proのノッチ(切り欠き)と比較してより洗練された外観を実現する。
macOS 27
2026年に発売予定のmacOSの新バージョン。Intel Macのサポートを完全に終了し、Appleシリコン専用となる初のmacOSとなる。
2nmプロセス
半導体製造における最先端の微細化技術。現行の3nmプロセスより小さなトランジスタを実現し、性能向上と電力効率の改善をもたらす。
【参考リンク】
Apple(日本)(外部)Appleの日本公式サイト。iPhone、iPad、Mac、Apple Watchなど全製品の情報と購入が可能
TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)(外部)世界最大の半導体受託製造企業。Appleのプロセッサを含む多くの先端チップを製造
Samsung Display(外部)サムスンのディスプレイ事業部門。OLED、QLED、フレキシブルディスプレイなど次世代技術を開発
LG Display(外部)LGのディスプレイ事業部門。TV、モニター、モバイル、自動車向けディスプレイを開発
【参考記事】
Apple Plans New MacBook Pro, iPhone 17e and iPads by Early 2026(外部)
Mark Gurman氏による2026年前半のApple製品ロードマップを報告
Bad news, Apple fans – the M5 MacBook Pro may not launch until 2026(外部)
TechRadarによるM5 MacBook Pro延期の詳細分析と過去のリリースパターンとの比較
Apple’s M5 chip could continue an unexpected new trend(外部)
9to5MacによるM5チップの発売戦略分析とiPad Pro・MacBook Proの異なる戦略
How Apple Product identifiers have leaked every Mac release through 2026(外部)
AppleInsiderによるM5およびM6 Mac製品の内部コードネームと2026年までの発売計画
【編集部後記】
2026年のMacBook Proリデザインについて、皆さんはどのような期待をお持ちでしょうか?
OLEDディスプレイやセルラー接続機能の搭載により、ラップトップの使い方が大きく変わる可能性があります。特に、Wi-Fi環境に依存しないセルラー接続は、働き方そのものを変革するかもしれません。
一方で、より薄型化が進むことで放熱性能への影響や、新技術導入による価格上昇も気になるところです。
皆さんは現在のMacBook Proに何を求めていますか?また、2026年の新モデルで最も期待する機能は何でしょうか?
ぜひSNSで、皆さんの率直なご意見をお聞かせください。私たちも一緒に未来のテクノロジーについて考えていきたいと思います。