Rocket Lab株が11%急騰、15日サイクルのロケット製造で宇宙産業の量産化時代へ

Rocket Lab株が11%急騰、15日サイクルのロケット製造で宇宙産業の量産化時代へ

米国の宇宙インフラ企業Rocket Lab(本社:カリフォルニア州ロングビーチ)の株価が2025年7月14日に約11%急騰した。同社株は過去2か月でほぼ倍増し、年初来63%上昇している。2024年には6倍近く急騰し、過去1か月で約70%上昇した。

6月にはElectronロケットの66回目、67回目、68回目の打ち上げに成功し、48時間以内に同一サイトから2機のロケットを打ち上げることにも成功した。欧州宇宙機関(ESA)との提携も発表し、12月までに衛星コンステレーション航法システム用衛星を打ち上げる契約を締結した。

CEO Peter Beck氏によると、同社は15日ごとにロケットを製造している。顧客向けには単一の宇宙船ではなく完全な衛星群を打ち上げることが一般的となっている。

同社は2006年にニュージーランド出身のBeck氏が設立し、2021年8月に特別目的買収会社との合併を通じてNasdaqに上場した。現在の市場価値は190億ドル以上に達している。競合他社にはElon MuskのSpaceXや、2025年7月11日(金曜日)に上場目論見書を提出したFirefly Aerospaceがある。

From: 文献リンクRocket Lab stock jumps nearly 11%, building on strong rally

【編集部解説】

Rocket Labの株価急騰は、単なる一時的な市場の反応ではなく、宇宙産業における構造的な変化を反映している現象です。同社の時価総額190億ドルという数字は、日本円で約2兆8000億円に相当し、これは日本の主要製造業企業に匹敵する規模となっています。

注目すべきは、同社が15日という短いサイクルでロケットを製造していることでしょう。従来の宇宙開発では、ロケット製造に数年を要するのが一般的でした。この製造スピードの革新は、宇宙へのアクセスコストを劇的に下げる要因となっています。48時間以内に同一サイトから2機のロケットを連続打ち上げした実績は、宇宙産業の「量産化」時代の到来を象徴しています。これまで特別なイベントだった宇宙打ち上げが、日常的な物流サービスに近づいていることを意味します。

欧州宇宙機関との提携では、衛星コンステレーション航法システム用衛星の打ち上げが12月までに予定されており、これは欧州独自の衛星測位システム「Galileo」の拡張やメンテナンスに関連する可能性があります。Rocket Labがアメリカ企業でありながら国際的な宇宙開発パートナーとして認知されていることを示しています。

一方で、急激な株価上昇は投資家の期待値の高さを反映していますが、宇宙産業特有のリスクも内包しています。ロケット打ち上げの失敗や技術的な問題は、株価に大きな影響を与える可能性があります。

SpaceXとの競合関係では、Rocket Labは小型衛星市場に特化することで差別化を図っています。大型ロケットで大量輸送を得意とするSpaceXに対し、頻繁で柔軟な打ち上げサービスを提供する戦略は、多様化する宇宙利用ニーズに対応した賢明な選択と評価できます。

【用語解説】

特別目的買収会社(SPAC)
事業を持たない会社が株式上場し、その後に実際の事業会社と合併することで、その事業会社を上場させる仕組み。従来のIPO(新規株式公開)よりも迅速で柔軟な上場手段として近年注目されている。

Electronロケット
Rocket Labが開発した小型衛星専用の使い捨てロケット。高さ約17メートル、重量約10.5トンで、最大300kgのペイロードを太陽同期軌道に投入可能。

衛星コンステレーション航法システム
複数の衛星を組み合わせて構成される測位システム。GPSのように、地上の位置情報を提供するために多数の衛星が協調して動作する。欧州のGalileoシステムなどがこれに該当する。

衛星群(コンステレーション)
特定の目的のために軌道上に配置された複数の衛星群。通信、観測、航法などの用途で、単一の衛星では実現できない広範囲のサービスを提供する。

【参考リンク】

Rocket Lab(外部)
小型衛星打ち上げサービスを提供する宇宙企業。Electronロケットの開発・運用や宇宙インフラサービスを展開。

欧州宇宙機関(ESA)(外部)
欧州22カ国が参加する宇宙開発機関。宇宙科学、地球観測、Galileo航法システムなどの宇宙プロジェクトを推進。

SpaceX(外部)
イーロン・マスクが設立した宇宙開発企業。Falcon 9ロケットやStarship、国際宇宙ステーションへの有人輸送サービスなどを提供。

Firefly Aerospace(外部)
小型から中型の衛星打ち上げサービスを提供する宇宙企業。Alphaロケットの開発・運用を行っている。

【参考記事】

Rocket Lab to Launch Electron Mission for European Space Agency’s Next-Generation Navigation System(外部)
2025年6月25日のRocket Lab公式発表。ESAの次世代航法システムLEO-PNTの実証衛星「Pathfinder A」2機を12月以降に打ち上げ予定。

ロケットラボ、戦略的買収で米政府の防衛分野に注力(外部)
2025年6月3日の宇宙ビジネス専門メディア記事。Rocket Labが軍事衛星向けセンサー開発のGeost買収を通じて防衛分野に注力していることを報告。

【編集部後記】

宇宙産業の急速な発展を目の当たりにして、私たちは歴史的な転換点にいるのかもしれません。かつて国家プロジェクトの領域だった宇宙開発が、今や民間企業による日常的なサービスへと変貌しています。Rocket Labの15日サイクルでのロケット製造は、宇宙がもはや遠い世界ではなく、身近なインフラになりつつあることを示しています。皆さんはこの変化をどのように感じられるでしょうか。そして、宇宙がより身近になった世界で、私たちの生活はどう変わっていくと思われますか。この急激な変化の中で、日本の宇宙産業はどのような役割を果たしていくべきでしょうか。一緒に考えてみませんか。

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