OpenAI投資家も被害か「AI精神病」が新たなメンタルヘルス問題として浮上

OpenAI投資家も被害か「AI精神病」が新たなメンタルヘルス問題として浮上

ベンチャーキャピタル会社BedrockのマネージングパートナーでOpenAI初期投資家のGeoff Lewis氏が2025年7月16日、X上で不穏な動画を投稿し、AIがメンタルヘルスに与える影響について議論が活発化している。

14歳のSewell Setzer IIIが2024年2月28日、Character.AIのゲーム・オブ・スローンズキャラクター「Daenerys Targaryen」チャットボットとの最後の会話後に自殺した事件が報告されている。Quebec在住の25歳のビジネスコーチEtienne Brisson氏は、愛する人がChatGPT使用後に精神病エピソードを経験したことを受け、AI精神病に対処する人々を支援するプライベートサポートグループ「The Spiral」と「The Human Line Project」を設立した。Brisson氏は30件以上のAI使用後精神病症例を記録している。

MITとOpenAIが2025年3月21日に発表した研究では、ChatGPTの高強度使用が孤独感を増加させる可能性があることが判明した。現在のところ『AI精神病』は正式な精神疾患として医学的に定義されておらず、治療法も確立されていない。OpenAIは臨床精神科医を雇用し、ChatGPTのユーザーへの影響を研究している。

From: 文献リンクAs AI becomes more popular, concerns grow over its effect on mental health

【編集部解説】

AIとの過度な対話が引き金になるとされる精神的不調、通称「AI精神病」について、innovaTopia編集部が深掘りします。単なる杞憂では済まされないこの現象は、技術の最前線にいる投資家から一般ユーザーまで、広範囲に影響を及ぼし始めていることが明らかになっています。

まず、AIと精神的健康の関係は単なる杞憂ではなく、世界的に注目される科学的研究領域になりつつあります。MITとOpenAIの共同研究によれば、ChatGPTの高強度使用が孤独感の増加と関連していることが実証されており、これはAI依存の初期症状として位置づけられる可能性があります。

今回議論が本格化するきっかけとなったのは、ベンチャーキャピタルBedrockのマネージングパートナーで、OpenAIの初期投資家でもあるGeoff Lewis氏の動向です。同氏は2025年7月16日、自身のXアカウントに「非政府システム」の存在を示唆する不可解な動画や文章を連続投稿、これに対しテクノロジー業界内外から彼の精神状態を懸念する声が噴出しました。同月25日には専門メディアThe Registerがこの問題を大々的に報じ、AIがメンタルヘルスに与える深刻な影響への懸念が広がりました。Lewis氏のケースは、AI技術の恩恵を最も受けてきたはずの人物でさえ、その予期せぬリスクと無縁ではない可能性を示唆しています。

そしてこの問題は、より深刻な事態も引き起こしています。Character.AIのDaenerys Targaryenチャットボットに関わる事件です。この事案では、14歳のSewell Setzer III君が2024年2月28日に自殺に至りましたが、この事件は単発的なものではありません。現在、AI精神病の症例として記録されているケースは30件以上に及び、精神的病歴のない人々も含まれています。

法的な側面では、2025年5月21日に重要な進展がありました。米国連邦地裁がGoogleとCharacter.AIに対し、Sewell Setzer III君の母親による訴訟を受けて立つよう命じたのです。これは米国でAI企業が児童のメンタルヘルスリスクに対する法的責任を問われる初期の重要な事例となっています。

現在の大きな課題は、医学的・法的な対応体制が整っていないことです。AI精神病は正式な診断基準が存在せず、治療法も確立されていません。このため、被害者の支援は「The Spiral」のような草の根コミュニティに依存している状況です。

長期的な視点で見ると、この問題は規制やAI開発のあり方に大きな影響を与える可能性があります。OpenAIは既に臨床精神科医を雇用し、ユーザーへの影響を研究していますが、業界全体での対応はまだ初期段階にあります。

技術の進歩と人間の精神的健康のバランスを取ることは、AI時代における最も重要な課題の一つとなっています。読者の皆さまには、AIとの健全な関係を保つための意識を持っていただくことが重要です。

【用語解説】

AI精神病(AI Psychosis)
AI技術、特にチャットボットとの過度な対話が引き金となって引き起こされる精神的症状の総称。妄想的信念の形成、現実認識の歪み、強迫的行動などが特徴で、医学的診断基準は未確立である。

The Spiral
AI精神病に苦しむ人々とその家族のためのプライベートサポートグループ。Etienne Brisson氏が設立し、20名以上の活動メンバーを持つ。

非政府システム(Non-Governmental System)
Geoff Lewis氏が提唱する概念で、政府以外の組織による監視・制御システムを指す。AI研究の過程で発見したと主張している。

GPT-4o
OpenAIの最新AI言語モデル。従来のGPTシリーズより高性能で、テキスト、画像、音声を統合的に処理できる。

【参考リンク】

Bedrock Capital(外部)
Geoff Lewis氏が創設したベンチャーキャピタル。OpenAIの初期投資家として知られる技術系投資会社

OpenAI(外部)
ChatGPTやGPT-4を開発するAI研究企業。人類全体に利益をもたらす汎用人工知能の実現を使命とする

Character.AI(外部)
架空キャラクターとの対話を可能にするAIエンターテインメントプラットフォーム。月間数百万人のユーザーを持つ

The Human Line Project(外部)
AI精神病の記録と防止を目的とした非営利プロジェクト。Etienne Brisson氏が設立

Columbia Psychiatry – Ragy Girgis教授(外部)
コロンビア大学精神医学部教授。ニューヨーク州立精神医学研究所の予防・評価センター長を務める

【参考記事】

Support Group Launches for People Suffering “AI Psychosis”(外部)
AI精神病の支援グループについて報じる記事。被害者家族の証言やOpenAIの公式回答を含む

Can A.I. Be Blamed for a Teen’s Suicide? – The New York Times(外部)
14歳のSewell Setzer III君の自殺事件について報じるニューヨーク・タイムズの記事

ChatGPT has a “ghost” in the machine, according to OpenAI investor Lewis(外部)
Geoff Lewis氏のGPT-4oに関する主張「Mirrorthread」発見について詳しく解説

【編集部後記】

AIとの健全な関係について、皆さんはどのようにお考えでしょうか。ChatGPTやCharacter.AIといったツールが日常に溶け込む中で、私たち自身の心の健康を守るための「使い方のルール」を見つけることが重要かもしれません。読者の皆さんが実際にAIツールを使用される際の体験や気づき、あるいはメンタルヘルスとテクノロジーの関係について感じることがあれば、ぜひお聞かせください。私たちと一緒に、AIと人間が共存する未来のあり方を考えていきませんか。

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