The Register誌の記者Rupert Goodwinsが2025年7月28日に公開した記事で、Microsoft Windows 11を「マルウェア」と厳しく批判し、大きな波紋を広げている。
2021年10月5日にリリースされたWindows 11は、Microsoftが収益化を追求するあまり、広告配信システムや監視機能をOSに深く統合しており、ユーザーの生産性を著しく阻害していると記事は指摘している。特にAIアシスタント機能「Copilot Vision」が有効化された際に、画面上の情報を継続的にキャプチャ・分析することや、ポップアップ広告の頻発によりユーザーの集中を妨げることが問題視されている。
記事では、これらの機能が従来の悪意あるソフトウェアと同じ「侵入的で望まない監視・広告配信」を行うため、Windows 11自体が「マルウェア」と本質的に変わらないと指摘している。解決策として、GitHubなどで公開されている既存のデブロートツールを統合し、技術レベルを問わず誰でも安全に使用できるオープンソースの自動Windows解毒ツールの開発を提案しているが、究極的にはMicrosoft自身のビジネスモデルと開発方針の転換が不可欠だと結論づけている。
From: Windows 11 is a minefield of micro-aggressions in the shipping lane of progress
【編集部解説】
Windows 11が「マルウェア」と断じられる背景には、従来のコンピューティング環境における脅威モデルの根本的な変化があります。これまでマルウェアは外部から侵入する悪意あるソフトウェアでしたが、Windows 11では収益化を目的とした監視・広告配信機能がOSの核心部分に統合されています。これはコンピューター史上において、信頼すべきプラットフォーム自体が脅威となる特異な状況を示しています。
Microsoft社のビジネスモデル転換が、この変化の根本原因です。従来のライセンス販売中心から、継続的なデータ収集とサービス課金に軸足を移した結果、ユーザーエクスペリエンスよりも収益最大化が優先されるようになりました。Copilot Visionのような機能は技術的には画期的ですが、プライバシーの観点では従来のスパイウェアと同じ動作パターンを示しています。
企業環境への影響は深刻です。2025年10月14日のWindows 10サポート終了により、企業は事実上の強制移行を迫られていますが、Windows 11導入後の実際の生産性は低下する傾向にあります。かなりのシステムリソースがOS固有のプロセスに消費され、従業員は頻繁な通知や広告により集中を妨げられます。さらに、GDPR、CCPA等のデータ保護規制下では、OS自体による無断データ収集が法的リスクを生む可能性があります。
技術的対策としては、GitHub上で公開されている多数のデブロートツールを統合した、包括的なオープンソースソリューションの開発が現実的です。PowerShellスクリプト、レジストリ編集、グループポリシー設定を自動化し、技術レベルを問わず安全に実行できるGUIツールの需要は確実に存在します。
しかし、真の解決には構造的変化が必要です。EU DMA(デジタル市場法)のような独占規制が強化されれば、デフォルト設定による広告配信や強制的なサービス利用は制限される可能性があります。同時に、Ubuntu、Fedora、macOSなど代替プラットフォームの企業採用が加速すれば、Microsoftも市場圧力により方針転換を迫られるでしょう。
【用語解説】
デブロートツール
Windowsに標準搭載される不要アプリや広告機能を一括で削除・無効化するソフト。
Copilot Vision
Microsoft AIアシスタントの画面認識機能。Copilot VisionなどのAI機能が有効化されると、画面上の情報を継続的に解析・キャプチャする。
DMA(Digital Markets Act)
EUで2024年施行の大規模オンラインプラットフォーム規制。独占的行為やデフォルト設定の強制を制限する。
【参考リンク】
Microsoft公式サイト(外部)
Windows 11やCopilotなど自社製品の概要・サポート情報を提供。
Windows 11ダウンロードページ(外部)
正式ISOやインストールアシスタントを入手できる公式サイト。
Microsoft Lifecycle FAQ(外部)
Windows 10サポート終了日(2025-10-14)を明示する公式ドキュメント。
【参考記事】
「Copilot Vision、『Windows』上の全コンテンツの閲覧・分析が可能に」(外部)
画面解析AIの仕組みとプライバシー懸念を解説するZDNet Japanの報道。
AIが画面を見ながら作業をお手伝い。Copilot Visionが正式提供開始(外部)
Copilot Visionの正式リリースと機能詳細を伝える国内記事。
Is Microsoft Pushing Windows 11 Into Malware Territory?(外部)
他メディアによる同様の批判を紹介し、利用者の実体験を交えて分析している。
【編集部後記】
広告や監視機能が標準化しつつあるOSに、皆さんは何を思いますか?また、どんな対策を考えているでしょうか。これらの問題は個人であればデブロートで軽量化する、あるいは別のOSへ乗り換えるなどの対策も可能ですが、皆さんの会社などではこういった問題について話し合いなど行われているでしょうか?──進歩するテクノロジーの中で、実体験は次の一手を形づくるヒントになります。日常の小さな気づきや試行錯誤を、ぜひSNSで共有していただけませんか?私たちも同じ利用者として、その声から未来のコンピューティング像を探りたいと思います。
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