AI企業Gensparkは「バイブワーキング」と呼ばれるAIネイティブな働き方により、20人のチームで驚異的な成長を記録している。
同社は2024年6月にMainFuncによりローンチされ、当初AI検索エンジンとして500万ユーザーを獲得したが、2025年4月2日にSuper Agentへピボットした。Super AgentはAnthropic Claude搭載で、電話、ドキュメント作成、ポッドキャスト制作、深層調査などを5分で処理する汎用AIエージェントである。
同社は4月11日にSuper Agentローンチから9日で1,000万ドルARRを達成し、5月2日に2,200万ドル、5月19日に3,600万ドルARRに到達した。共同創設者兼CTO朱开华（Kay Zhu）は元GoogleとBaiduで20年以上検索技術に従事した経歴を持つ。同社はコードの80%以上をAIが作成し、9つの異なるLLMと80以上のツール、10以上のデータセットを活用するMixture-of-Experts（MoE）システムを運用している。7月にOpenAIがChatGPT Agentを発表したのとほぼ同時期に、Gensparkは100万ドルサイドバイサイドAIショーダウンを開始し、競合他社との性能比較を実施している。
【編集部解説】
AI業界において、Gensparkの「バイブワーキング」という新しい働き方は、単なるトレンドを超えた本質的な変化を示しています。この概念は、従来の階層型組織や厳格なワークフローを排し、AIエージェントとの協働を前提とした組織運営を指します。
「バイブワーキング」という用語は、AI研究者アンドレイ・カルパシー氏が提唱したとされる「バイブコーディング」の概念を拡張したものです。バイブコーディングが開発者とAIとの対話的なコード生成に焦点を当てていたのに対し、バイブワーキングはプレゼンテーション作成、表計算、調査、メール対応、電話対応まで含む包括的な協働概念です。
技術的な側面で注目すべきは、GensparkのSuper Agentが採用している「Mixture-of-Experts（MoE）」アーキテクチャです。これは9つの異なる大規模言語モデル（LLM）を協調動作させ、それぞれの専門性を活かしながら最適な結果を生み出すシステムです。Claude、GPT、Geminiなど複数のモデルを同時に実行し、アグリゲーターモデルが最も費用対効果の高いプロセスを選択する仕組みが構築されています。
しかし、この急速な成長には潜在的なリスクも存在します。コードの大部分をAIが生成している状況において、品質管理とセキュリティの確保は重要な課題です。同社は「厳格なコードレビュープロセス」を実施していると述べていますが、AIネイティブな開発における品質保証の新たな手法については、業界全体での議論が必要でしょう。
競争の激化という観点では、OpenAIがChatGPT Agentを発表したのとほぼ同時期に、Gensparkは自社技術の優位性を示すことを目的に「100万ドル サイドバイサイド AIショーダウン」を開始しました。このような公開比較は、AI業界における透明性の向上と技術革新の加速に寄与しています。このような公開比較は、ユーザーにとって客観的な判断材料を提供する一方で、AI企業間の建設的な競争を促進する効果があります。
長期的な視点では、Gensparkのアプローチは働き方改革の新たなモデルを示唆しています。従来の1,000人規模のチームが抱えていた組織的摩擦を、20人のAIネイティブチームが解決できている事例は、特に日本企業にとって重要な示唆を含んでいます。
ただし、スケーラビリティの課題は残されています。現在の20人体制から拡大した際に、この「バイブワーキング」文化をどのように維持するかは、今後の成長における重要な試金石となるでしょう。また、AIエージェントとの協働が一般化した際の労働市場への影響についても、継続的な検討が必要です。
【用語解説】
MoE（Mixture-of-Experts）システム
複数の大規模言語モデル（LLM）を組み合わせて、各モデルの専門性を活かしながら最適な結果を生み出すAIアーキテクチャ。Gensparkでは9つの異なるLLMを協調動作させ、アグリゲーターモデルが最適なプロセスを選択する。
ARR（Annual Recurring Revenue）
年間経常収益。サブスクリプション型ビジネスにおける重要な成長指標で、継続的に得られる年間収益を示す。Gensparkは45日で3,600万ドルのARRを達成したと発表している。
バイブコーディング（Vibe Coding）
AI研究者アンドレイ・カルパシー氏が提唱した、開発者とAIとの対話的なプログラミング手法。従来の厳密なコード設計ではなく、自然言語での対話を通じてコードを生成する。
【参考リンク】
Genspark（外部）
本記事で紹介されたAIワークスペース企業の公式サイト。Super Agentをはじめとする統合型AIツールを提供
MainFunc（外部）
GensparkやSuper Agentを開発した親会社。Microsoft、Google、Baidu出身者によって設立
Genspark AI Showdown（外部）
総額100万ドルの賞金をかけたAI比較コンペティション。他社AIツールとの性能比較を実施
OpenAI ChatGPT Agent（外部）
2025年7月中旬にOpenAIが発表したAIエージェント。ウェブアプリを自律的に操作可能
【参考動画】
【参考記事】
Genspark AI Startup Hits $36M ARR in 45 Days with Vibe Working（外部）
Gensparkの45日間で3,600万ドルARR達成について、バイブワーキング手法に焦点を当てて解説
【編集部後記】
このGensparkの事例を読んで、皆さんの職場でも「AIと協働する働き方」について考えてみませんか？
特に興味深いのは、20人という少数精鋭チームが従来の大規模組織を上回る成果を生み出している点です。もし皆さんがAIツールを日常業務に取り入れるとしたら、どの領域から始めますか？プレゼン作成、データ分析、それとも調査業務でしょうか。また、「バイブワーキング」のような新しい働き方が日本企業に定着する際の課題や可能性について、皆さんはどうお感じになりますか？ぜひSNSで、皆さんの体験や考えをお聞かせください。
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