40歳以降に注意すべき6つの眼疾患|老視・白内障・緑内障の最新治療とAI診断技術

40歳以降に注意すべき6つの眼疾患|老視・白内障・緑内障の最新治療とAI診断技術

CNETは2025年9月2日、加齢に伴う眼の健康について記事を公開した。記事は40歳以降に発症する可能性のある6つの眼疾患を解説している。

まず1つ目は老眼である。Mayo Clinicによると、40歳を過ぎるとほぼ全ての人が老化による視力の衰えを感じるという。
2つ目は加齢黄斑変性である。American Academy of Ophthalmologyによれば、加齢黄斑変性は50歳以上の視力問題の主要原因であり、多くがドライ型AMDを発症するという。
3つ目はドライアイである。これは年齢を問わず多くの人が経験するが、加齢による体内の涙液量の低下によって症状が現れる可能性が高まる。
4つ目は緑内障である。これは視神経の損傷によって視力障害(失明を含む)を引き起こす一連の疾患の総称で、中でも最も一般的なタイプは開放隅角緑内障である。
5つ目は白内障で、これは老眼と並んで加齢に伴う眼疾患で最も一般的な症状のひとつである。National Eye Instituteによると、80歳以上のアメリカ人の半数以上が白内障を患うか除去手術を受けている。
6つ目は、上記以外の場合に感じる視覚の問題で、National Institute on AgingとAmerican Optometric Associationは加齢による色覚困難やまぶしさ感度の増加を正常な変化として挙げている。

これらの疾患から眼を守るために、記事では定期的な眼科検査とUV保護付きサングラスの着用を推奨している。

From: 文献リンクEye Health and Older Age: How These 6 Conditions May Become More Common

【編集部解説】

この記事で取り上げられた高齢化に伴う眼疾患の問題は、単なる医学的話題を超えて、今後の社会インフラやテクノロジー開発に大きな影響を与える重要な課題です。

特に注目すべきは、AI技術の眼科領域への応用が急速に進展していることです。2025年現在、人工知能を活用した診断システムでは、緑内障の予測においてAUROC値0.90を達成するなど、従来の検査手法を上回る精度を実現しています。また、加齢黄斑変性の5年後のリスク予測では、C-index 0.85という高い精度を示すモデルも開発されています。

CDCの最新データによると、2025年現在アメリカでは40歳以上の人々の多くが何らかの眼や視力の問題を抱えており、2050年までに効果的な介入がなければ、緑内障、加齢黄斑変性は倍増、白内障は87%の増加が予測されています。これらの統計は、記事で言及された6つの疾患がいかに深刻な社会問題となるかを示しています。

医療テクノロジーの観点から見ると、スマートコンタクトレンズによる眼圧のリアルタイム監視や、AIによる眼底画像解析システムなど、予防的医療に向けた技術開発が加速しています。これらの技術は、記事で言及された緑内障や加齢黄斑変性の早期発見を可能にし、治療が困難な進行段階に至る前に介入できる可能性を示しています。

一方で、デジタル機器の普及による新たなリスクも浮上しています。研究によると、コンピューター作業を定期的に行う人の50-90%が何らかの眼の症状を経験しているという報告があります。高齢化社会においてデジタルデバイドを解消するためのIT普及が進む中、この問題は特に深刻です。

遺伝子治療の分野でも革新的な進展が見られます。アイルランドの研究チームが開発している視神経損傷を修復する遺伝子治療や、ニコチンアミド(ビタミンB3)やコエンザイムQ10を用いた神経保護薬の研究が進行中です。これらの治療法はまだ実用に至ってはいませんが、現在「不可逆的」とされる視力損失を回復可能にする可能性を秘めています。

社会経済的な影響も無視できません。80歳以上のアメリカ人の半数以上が白内障を患うという統計は、医療費増大と労働力不足が深刻化する高齢社会において、予防医療とテクノロジーによる効率化の重要性を示しています。

規制面では、AI診断システムの医療機器承認プロセスや、スマートデバイスを活用した遠隔医療の制度整備が急務となっています。患者データの収集と活用に関するプライバシー保護の枠組み構築も重要な課題です。

この分野における技術革新は、単に治療の改善にとどまらず、QOL(生活の質)の向上と社会参加の促進という、より広い社会的意義を持っています。Tech for Human Evolutionの理念の下、これらの進歩が人間の可能性をどのように拡張していくか、引き続き注視していく必要があります。

【用語解説】

加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration, AMD)
網膜の中心部にある黄斑が変性することで中心視野に影響を与える疾患で、50歳以上の視力障害の主要原因である。

緑内障(Glaucoma)
眼圧上昇により視神経が損傷を受け、視野欠損や失明に至る可能性のある疾患群の総称である。緑内障による視力の損失は元に戻すことができない。

開放隅角緑内障(Open-angle Glaucoma)
最も一般的な緑内障のタイプで、初期段階では症状が現れにくく、周辺視野から徐々に視力を失う特徴がある。

アムスラーグリッド(Amsler Grid)
加齢黄斑変性の早期発見に用いられる格子状の検査チャートで、中心視野の歪みを検出する。

【参考リンク】

Mayo Clinic – Presbyopia(外部)
アメリカの非営利医療機関で、老視に関する症状、原因、治療法について医学的に信頼性の高い情報を提供している。

American Academy of Ophthalmology(外部)
世界最大の眼科医師・外科医の専門団体で、32,000名の医師が所属し、眼科教育の標準設定と患者・一般市民の権利擁護を行っている。

National Eye Institute(外部)
アメリカ国立衛生研究所の一部門で、白内障をはじめとする眼疾患の研究と情報提供を行う政府機関である。

American Optometric Association(外部)
アメリカ検眼協会で、眼科検査の臨床ガイドラインを策定し、年間眼科検査の重要性を推進している専門機関である。

【参考記事】

Artificial intelligence technology in ophthalmology public health: Current status and future prospects(外部)
眼科領域におけるAI技術の現状と将来展望について、緑内障予測でAUROC値0.90、加齢黄斑変性のリスク予測でC-index 0.85を達成するなど、具体的な精度データを示している研究論文。

How Eye Care is Evolving in 2025: Trends and Innovations(外部)
2025年の眼科医療技術トレンドとして、スマートコンタクトレンズによる眼圧監視やAI診断システムの導入について詳述した記事。

The impact of digital technologies on eye health(外部)
デジタル機器の普及による眼への影響について、コンピューター作業者の50-90%が何らかの眼症状を経験するという統計データを示した研究。

State Vision Fact Sheets 2025(外部)
CDC統計による2025年の視力障害データで、40歳以上のアメリカ人9000万人が眼の問題を抱え、2050年までに緑内障100%、加齢黄斑変性100%、白内障87%の増加が予測されることを示した報告書。

【編集部後記】

今回の記事を読まれて、私自身、目の健康について改めて意識させられました。

皆さんが最後に眼科検診を受けたのはいつでしょうか?記事にもあったように、40歳を過ぎると多くの人が何らかの視力変化を経験します。「まだ大丈夫」と考えがちですが、早期発見によって治療の選択肢が大きく広がることを考えると、定期的なチェックの価値は計り知れません。

テクノロジーの進歩で治療法も日々革新されています。皆さんはどのような変化や可能性に期待されますか?

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