Amazon Kuiper、1.28Gbps衛星インターネット実証でStarlink追撃へ

Amazon Kuiper、1.28Gbps衛星インターネット実証でStarlink追撃へ

AmazonがProject Kuiperインターネット衛星サービスで最大1.28 Gbps(1,289 Mbps)のダウンロード速度を実証した。

AmazonのKuiper責任者Rajeev BadyalがLinkedInで公開した動画では、speedtest.netによる速度テストで平均1,189 Mbpsを記録した。衛星は高度630kmに配置されている。同時に米国の航空会社JetBlueが2027年から機内でKuiperによる無料インターネットアクセスを提供すると発表した。それまではViasatを使用する。元Microsoft製品担当チーフで現Amazon デバイス・サービス担当シニアVPのPanos Panayがコメントを発表した。

Amazonは4月に最初の商用Kuiper衛星を打ち上げ、現在軌道上に100基強の衛星を配置している。しかし競合のStarlinkは7,000基以上(2025年4月時点)の衛星を配置し、さらに毎月その数を増やしている。Kuiperは2026年にオーストラリアで商用サービスを開始予定である。

From: 文献リンクAmazon demos 1.28 Gbps Kuiper satellite speed

【編集部解説】

AmazonのProject Kuiperが実証した1.28 Gbpsという速度は、衛星インターネット業界において重要な技術的マイルストーンです。しかし、この数値には注意深く見るべき点があります。

この速度テストは企業向けの高性能端末を使用し、ユーザーがほとんどいない理想的な条件下で実施されました。現実のサービス運用時には、多数のユーザーが同時接続した場合、速度は大幅に低下することが予想されます。また、Amazonが提供予定の標準端末では最大400 Mbpsに制限される予定です。

競合するStarlinkとの比較では、規模に圧倒的な差があります。Starlinkは7,000基以上の衛星を運用している一方で、Kuiperは現在100基強の数に留まります。この差は単なる数の問題ではありません。衛星数が少ないということは、カバレッジエリアが限定的で、サービスの継続性に課題があることを意味します。

JetBlueとの提携は2027年開始予定ですが、これもKuiperの慎重なアプローチを示しています。多くの航空会社が既にStarlinkを採用している中で、JetBlueがKuiperを選択したのは、Amazonの企業向けサービスとの統合やAWSとの連携による付加価値を期待してのことでしょう。

技術的な側面では、Kuiperは590-630kmという高度に配置され、独自の「Prometheus」チップを搭載しています。また、プロトタイプ段階で100Gbpsの衛星間光通信リンク(OISL)実証に成功しており、量産機への搭載を進めている。これにより将来的には地上局への依存度を下げ、より低遅延なグローバルネットワーク構築を目指している。

規制面では、FCC(連邦通信委員会)が2026年7月までに1,618基の衛星配置を義務付けており、Amazonはこの期限に向けて急速な展開を迫られています。打ち上げコストと頻度が事業成功の鍵となりますが、Blue Originの遅れにより他社ロケットに依存している状況は懸念材料です。

長期的には、この分野は単なる速度競争を超えて、エンタープライズ向けサービスや地上インフラとの統合が差別化要因となります。AmazonのAWSとの連携は、IoTやクラウドサービスとの親和性において優位性を持つ可能性があります。

【用語解説】

Project Kuiper
Amazonが開発する低軌道衛星インターネット通信サービス。計画では約3,236基の衛星を590-630km の高度に配置し、世界規模でブロードバンドインターネット接続を提供する。

低軌道衛星(LEO)
高度160-2,000km程度の軌道を周回する衛星。静止軌道衛星(約36,000km)と比較して低遅延で高速通信が可能だが、カバー範囲が狭いため多数の衛星が必要となる。

Ka帯
26.5-40GHzの周波数帯域を指す電波の分類。衛星通信において高速データ伝送に適しており、Project Kuiperでも採用されている。

フェーズドアレイアンテナ
複数の小型アンテナ素子を電子的に制御し、ビーム方向を機械的な可動部なしで変更できるアンテナ技術。衛星通信では高速移動する衛星を追尾するために重要な技術である。

FCC(連邦通信委員会)
米国の独立行政機関で、電波や通信に関する規制を行う。衛星通信事業者に対して衛星配置の期限や技術基準を定める権限を持つ。

Viasat
米国の衛星通信事業者で、航空機や船舶向けの衛星インターネットサービスを提供している。

【参考リンク】

Amazon Project Kuiper(外部)
AmazonによるProject Kuiper衛星コンステレーションの公式アップデート情報

Starlink(外部)
SpaceXが運営する低軌道衛星インターネットサービス公式サイト

JetBlue Airways(外部)
2027年からProject Kuiperでの機内Wi-Fi提供を発表した米国格安航空会社

Blue Origin(外部)
Jeff Bezos創設の航空宇宙企業、New Glennロケットを開発

【参考記事】

Amazon’s Project Kuiper vs. Starlink: How do they compare?(外部)
Kuiper102基対Starlink8,097基という具体的衛星数比較データを提供

Test of Amazon’s Initial Project Kuiper Broadband Satellites Hits 1.29Gbps(外部)
標準端末400Mbps制限など現実的サービス提供時の速度予測を詳細解説

Amazon targets April 9 for launch of 1st production satellites(外部)
FCC義務付けの2026年7月までに1,618基配置要件について詳細分析

【編集部後記】

皆さんは今の自宅のインターネット速度にどれくらい満足されていますか?Amazonが実証した1.28 Gbpsという数値は、現在多くの家庭で利用されている光回線(1Gbps)を上回る速度です。しかし注目すべきは速度だけではありません。衛星インターネットが普及することで、山間部での遠隔ワークや災害時の通信確保、さらには機内での高速通信まで可能になりそうです。

一方で、夜空を見上げた時に無数の人工衛星が輝く未来については、どのように感じられるでしょうか?技術の進歩と環境への配慮、このバランスについて皆さんと一緒に考えていければと思います。

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