Azure・Linode障害から東芝統合まで|アジア太平洋テック週報2025年9月第1週

Azure・Linode障害から東芝統合まで|アジア太平洋テック週報2025年9月第1週

2025年9月6日5時45分UTC以降、紅海での海底光ファイバーケーブル切断により、Microsoft AzureとLinodeが中東を通過するネットワークトラフィックの遅延増加を警告した。

この件についてNetBlocksはサウジアラビアのジェッダ市近くでSMW4とIMEWEケーブルシステムに問題が発生したと特定している。Microsoftは代替ネットワーク経路にトラフィックをルーティングしたが、復旧予定時刻は不明で、現在も影響が継続している。

東芝は2026年4月1日に東芝デジタルソリューション株式会社との合併を発表し、2024年5月に公表した「東芝再興計画」に基づく主要4事業会社の再統合を推進している。これに先立ち、東芝デジタルソリューションズは2025年10月1日付で東芝データを吸収合併し、データ事業の強化を図る。同社は既に2025年4月に東芝インフラシステムズの統合を完了しており、2026年4月には東芝エネルギーシステムズの統合も予定されている。

Lenovoは1424 x 280のクリップオン式ディスプレイ「Magic Bay HUD」を今月から選択された市場で60ユーロ(約70ドル)で販売開始すると発表した。この製品はThinkBookシリーズのノートPCに対応し、ポゴピンコネクタを使用して接続する。メイン画面から情報を分離し、より集中しやすい環境での作業を可能にする革新的なアクセサリーとして注目されている。

Amazon Web Servicesがニュージーランドで初のリージョンap-southeast-6を3つのアベイラビリティゾーンで開設した。AWSは当初ニュージーランドに独自のデータセンター建設を計画していたが、高い電力価格のため計画を変更した経緯がある。それでも最終的に75億NZドル(約53億米ドル)の投資を実現し、現地経済への貢献を果たしている。

韓国科学技術部はGoogleと音声フィッシング対策の協力を発表し、強化詐欺防止プログラム(EFP)が悪意のあるアプリのインストールを自動ブロックする。韓国では2025年上半期だけで音声フィッシング被害が6400億ウォン(約460百万ドル)に達しており、約3500万人のAndroidユーザーが対象となる。このプログラムは既にシンガポール、インド、ブラジルで展開されている実績を持つ。

From: 文献リンクRed Sea submarine cable outage slows Microsoft cloud

【編集部解説】

今回のThe Registerの記事について特に注目すべきは、これらの出来事が単発の事象ではなく、グローバルなデジタルインフラと企業戦略の転換点を示している点です。

紅海での海底ケーブル切断事故は、現代のクラウドサービスがいかに物理的なインフラに依存しているかを浮き彫りにしました。SEA-ME-WE-4とIMEWEという2つの主要ケーブルシステムが同時に損傷を受けた結果、Microsoft AzureやLinodeのユーザーは遅延増加を経験することになりました。この事象は、地政学的な不安定性がデジタルサービスに直接影響を与える現実を示しています。

クラウドプロバイダーは冗長性を確保するため複数の経路を用意していますが、今回のような地理的に集中した障害には脆弱性が露呈しました。Microsoftは代替ルートでトラフィックを迂回させましたが、完全な復旧までには時間を要する見込みです。

東芝の組織再編については、同社が2024年5月に発表した「東芝再活性化計画」の一環として位置づけられます。4つの基幹事業会社を段階的に統合する戦略は、意思決定の迅速化とコスト削減を目的としています。特にデジタル事業は、今後の成長分野として期待される一方で、従来の事業部制では競争力の確保が困難になっていました。

Lenovoの「Magic Bay HUD」は、ノートPCの新たな可能性を示唆する興味深い製品です。1424 x 280という特殊な解像度のセカンドスクリーンは、メイン画面を邪魔することなく、通知やウィジェットを表示できます。この製品は、リモートワークの普及により、限られた画面スペースでの生産性向上が求められる現状に対応しています。

AWSのニュージーランド進出は、同社のグローバル戦略における重要な一歩です。当初2024年予定だった開設が遅れた背景には、現地のエネルギー価格高騰という課題がありました。しかし、最終的に75億NZドル(約53億米ドル)の投資と1000人の雇用創出を実現し、現地経済への貢献を果たしています。

韓国とGoogleの協力による詐欺対策は、音声フィッシング被害が2025年上半期だけで6400億ウォン(約460百万ドル)に達した深刻な状況への対応策です。Enhanced Fraud Protection(EFP)プログラムは、すでにシンガポール、インド、ブラジルで展開されている実績があり、韓国の約3500万人のAndroidユーザーの保護が期待されています。

これらの事案は、テクノロジー業界がインフラの脆弱性、企業統合の必要性、ユーザー体験の革新、地域展開の課題、サイバーセキュリティの重要性という5つの重要なテーマに直面していることを示しています。

【用語解説】

Linode
Akamai Technologiesが運営するクラウドコンピューティングプラットフォーム。開発者やスタートアップ企業向けに仮想プライベートサーバーを提供している。

ポゴピン
弾力性のあるピン状のコネクタで、機械的接触により電気的接続を行う。今回のMagic Bay HUDでは磁力と組み合わせて簡単な着脱を実現している。

アベイラビリティゾーン
AWSが提供するクラウドサービスにおける独立したデータセンター群。災害などによる障害から保護するため、地理的に分散して配置されている。

【参考リンク】

Microsoft Azure ステータス(外部)
Azureサービスの稼働状況と障害情報を提供する公式ステータスページ。現在も紅海ケーブル障害による中東経由トラフィックの遅延について更新情報を掲載している。

東芝デジタルソリューションズ株式会社(外部)
IoT、AI、ICTソリューション事業を担う東芝の子会社。製造業向けのデジタル変革ソリューションを幅広く展開している。

AWS Asia Pacific (New Zealand) Region(外部)
AWSがニュージーランドに新設したクラウドリージョンの公式情報ページ。サービス概要と地域経済への貢献について詳細を掲載している。

Lenovo ThinkBook Magic Bay HUD(外部)
ThinkBookシリーズ向けの外付けHUDディスプレイ。生産性向上を目的とした革新的なアクセサリーの詳細仕様と価格情報を提供している。

【参考記事】

Microsoft Azure services see major disruption after Red Sea cables cut(外部)
TechRadarによる海底ケーブル障害の詳細報告。Microsoftの対応措置と影響範囲について技術的な観点から分析している。

Amazon launches infrastructure region in New Zealand(外部)
RCR Wirelessによるニュージーランドリージョン開設の経済分析。75億NZドル投資の内訳と雇用創出効果について詳しく報告している。

Science ministry to join forces with Google to tackle voice phishing(外部)
Korea Timesによる韓国とGoogleの詐欺対策協力の詳細報告。2025年上半期の被害額6400億ウォンという具体的数値とEFPプログラムの技術的仕組みを説明している。

Regarding the Integration of Toshiba Digital Solutions Corporation(外部)
東芝による公式発表。デジタルソリューション部門統合の背景と2026年4月1日実施の具体的スケジュールについて詳述している。

Now Open — AWS Asia Pacific (New Zealand) Region(外部)
AWSの公式ブログによるニュージーランドリージョン開設発表。ap-southeast-6というAPIネームと3つのアベイラビリティゾーン構成について技術的詳細を提供している。

【編集部後記】

今回の紅海でのケーブル切断事故から、私たちが日常的に使っているクラウドサービスがいかに物理的なインフラに依存しているかが見えてきました。Microsoft Azureの遅延を経験された方もいらっしゃるかもしれません。こうした事象を通じて改めて、デジタルの世界も結局は物理的な基盤の上に成り立っているのだと実感しますね。

海底ケーブルという「見えないインフラ」について、普段どのくらい意識されていますか?また、企業の組織再編やハードウェアの進化といった変化も、私たちの働き方や生活にどんな影響をもたらすとお考えでしょうか。ぜひご一緒に考えてみませんか。

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