MicrosoftはWindows 10のセキュリティサポートを10月14日に終了する予定だが、Windows 10ユーザーに対して1年間のセキュリティアップデートを受ける2つの無料オプションと1つの有料オプションを提供している。
第1はWindows バックアップを使用してOneDrive経由でクラウドに設定を同期することで無料でアップデートを受けられる。第2はMicrosoft Rewardsポイント1,000ポイントを交換して1年間のセキュリティアップデートを購入する方法である。第3はExtended Security Updatesプログラムの1年目のライセンスに30ドルを支払うことである。
Windows 10は2025年5月時点でインストール数の53%を超えており、依然として最も広く使用されているWindows OSである。Microsoftアカウントを持つユーザーは最大5GBのOneDriveストレージを無料で利用できるが、100GBのクラウドストレージは月額2ドルである。Extended Security Updatesプログラムは7月に開始され、サポート終了後の1年間アップデートが保証される。Windows 10は2015年7月にリリースされた。
【編集部解説】
今回のMicrosoftによるWindows 10延長サポートの発表は、同社のOS戦略において重要な転換点を示しています。
Microsoftは2025年10月14日にWindows 10の公式サポートを終了すると発表していましたが、実際にはWindows 10が全Windows端末の53%以上を占めている現実を受け、段階的な移行支援策を提供することになりました。この数字は、Microsoftが当初想定していたよりもWindows 11への移行が進んでいないことを物語っています。
最も注目すべきは、OneDriveを使った無料でのセキュリティアップデート継続サービスです。これは単なる延命措置ではなく、Microsoftのクラウドファースト戦略の一環と捉えることができます。ユーザーのデータをクラウドに誘導し、Microsoftのエコシステムにより深く組み込む狙いがあります。
OneDriveの無料容量は5GBですが、現代のPCユーザーのデータ量を考えると、多くの場合この容量では不足する可能性が高いでしょう。結果的に有料プランへの誘導効果も期待できる仕組みです。月額2ドルの100GBプランは年間24ドルとなり、有料のExtended Security Updates(30ドル)よりは安価ですが、実質的にはMicrosoftの収益機会を創出しています。
もう一つの無料オプションであるMicrosoft Rewardsポイント1,000ポイントでの交換も興味深い戦略です。これはユーザーをMicrosoftの各種サービス(BingやXboxなど)により深く関与させる効果があります。
技術的な側面では、Windows 11の厳格なハードウェア要件が大きな障壁となっています。TPM 2.0チップやSecure Bootの要求により、まだ十分に使用可能な多くのPCがWindows 11への移行から取り残される状況が生まれています。この「デジタル格差」の問題は、特に個人ユーザーや中小企業にとって深刻な課題となっています。
長期的な視点で見ると、この延長サポートは最大3年間の暫定的な措置であり、根本的な解決策ではありません。ユーザーは最終的にはハードウェアの更新かWindows 11への移行を迫られることになります。
セキュリティ面では、サポート終了後のWindows 10は新たな脆弱性に対して無防備になるため、今回の延長措置は重要な意味を持ちます。特に企業ユーザーにとっては、コンプライアンス要件を満たすためにも必要不可欠な選択肢となるでしょう。
この発表は、OSの世代交代における現実的な課題と、クラウドサービスを軸とした新たなビジネスモデルの模索を同時に示しており、テクノロジー業界全体にとって示唆に富む事例といえます。
【用語解説】
Extended Security Updates(ESU)
Windows 10のサポート終了後に、セキュリティアップデートを継続して提供する有料プログラム。個人ユーザーには1年目が年額30ドルで提供される。
Windows Backup
PCの設定やデータをOneDriveクラウドストレージに同期・バックアップするWindows標準機能。
TPM 2.0(Trusted Platform Module 2.0)
Windows 11の動作要件となっているセキュリティチップ。暗号化キーやハードウェア認証に使用される。
Microsoft Rewards
Bing検索やXboxゲームプレイ、Microsoft Storeでの購入などでポイントが獲得できるマイクロソフトの報酬プログラム。
【参考リンク】
Microsoft – Windows公式サイト(外部)
Windows 11の新機能やCopilot+ PCの情報、Windows 10からの移行案内などが掲載されているマイクロソフトの公式Windowsページ。
Microsoft – OneDrive サービス説明(外部)
OneDriveの各プランごとのストレージ容量制限と価格体系について詳細な情報を提供する公式文書。
【参考動画】
Ask Leo! – Should You Sign Up for Extended Security Updates (ESU) for Windows 10? Windows 10のExtended Security Updatesについて、技術系YouTuberが詳細に解説。無料オプションの説明や推奨事項について8分間で説明している。
【参考記事】
Extended Security Updates (ESU) program for Windows 10(外部)
Microsoft公式の技術文書。個人ユーザー向けESUが年額30ドル、企業向けが年額61ドルで最大3年間利用可能であることを明記。価格は毎年倍増する仕組みを説明。
How to Stay on Windows 10 Without Paying $30: Microsoft Has 2 Free Options(外部)
Microsoft Rewardsポイント1,000ポイントでESUが入手可能であることを説明。OneDriveバックアップ要件についても詳述。
How to get free Windows 10 security updates through October 2026 (two ways)(外部)
企業ユーザーは無料オプションが利用できず、デバイス1台あたり61ドルからの高額な料金が必要であることを指摘。個人ユーザー向け無料オプション2つの詳細な手順を解説。
Free Windows 10 security updates now available — with a catch(外部)
Windows 10のサポート終了が2025年10月14日であること、PCは継続して動作するがセキュリティアップデートが停止することを説明。無料オプション利用にはMicrosoftアカウントでの設定同期が必須条件。
【編集部後記】
今回のMicrosoftの発表を通じて、私たちは大きな変化の波を感じずにはいられません。クラウドサービスとハードウェア要件という、一見相反する要素が絡み合う現代のテクノロジーシーンで、皆さんはどのような選択をされるでしょうか。
Windows 10を使い続けるか、新しいPCでWindows 11に移行するか。それとも全く別のプラットフォームを検討されますか?私自身、親として子どもたちの学習環境を考える時、セキュリティとコストのバランスをどう取るべきか悩むことがあります。テクノロジーの進歩に取り残されることへの不安と、慎重な判断の必要性—この狭間で、皆さんはどのような基準で意思決定をされているのでしょうか。ぜひお聞かせください。