いすゞ自動車株式会社は2027年度から自動運転レベル4トラック・バス事業開始を目指し、自社部品物流ルートで事業実証を2026年1月より開始する。
対象となるのは大型トラック「ギガ」25トン8×4モデルであり、栃木県栃木市の岩舟パーツセンターと愛知県一宮市の中部部品センターを結ぶ区間で運行される。運行と荷役はいすゞロジスティクス株式会社及び同社子会社ワン・トランス株式会社が担う。新東名高速道路の自動運転優先レーン(駿河湾沼津SA~浜松SA)などで、セーフティドライバーが乗車した状態で自動走行が実施される。
Applied Intuition, Inc.と共同開発した自動運転車両で、2026年度末までに30台導入される予定。Step 1として週5日の定期実証を行い、Step 2・Step 3ではさらなる運行効率や技術的な検証が進められる。
From:
自社部品物流ルート(栃木~愛知)で自動運転事業実証を開始 … | いすゞ自動車公式
【編集部解説】
物流業界は現在、深刻な人材不足やドライバーの高齢化、それに伴う長距離物流の維持困難といった構造的課題に直面しています。2024年には働き方改革関連法による時間外労働の規制強化がなされ、今後、長距離輸送路線での運行本数や業務継続がさらに厳しくなることが予想されています。
こうした背景の中、いすゞ自動車がApplied Intuitionと共同で着手した自動運転レベル4トラックの本格実証は、産業・社会課題双方に直結する挑戦といえます。自社物流拠点間での週5回運行、セーフティドライバーを同乗させた段階的な検証、2026年度末までに30台を投入する計画など、商用化への道筋が明確に示されています。
自動運転により、人件費・燃料費の圧縮や稼働率の大幅向上、安全性の強化といった効果が期待されます。実際、内外の試算では物流コストの3割前後、運行のスピードや安定性、夜間・荒天時の輸送安定確保が可能との結果も出ています。またAI/センサーでルート最適化が進み、無駄な配車や燃料の浪費を抑えられるだけでなく、事故リスクの低減、環境負荷削減、24時間連続運行による働き方改革への貢献も期待されています。
国内外で自動運転トラックの開発競争は激化しており、かつてはGoogle系のWaymoやTuSimpleなどが市場を牽引してきましたが、近年は各社で戦略の転換も見られます。国内ではヤマト運輸が実用化に向けた実証実験を行うなど、実用化に向けた動きが活発です。こうした日本型の自動運転商用化は、物流サプライチェーン全体の最適化や倉庫自動化との連携を通じて、地方創生や低輸送量・高頻度輸送のモデル普及、ひいては物流危機の打開策になる可能性があります。
ただし現場では緊急時対応や法制度、事故時の責任所在などハードルが高く、社会実装には課題と丁寧な検証も欠かせません。今回のいすゞのトライアルは、テクノロジーを現実の物流基盤へ実装しようとする過程の貴重な一歩といえるでしょう。
【用語解説】
自動運転レベル4
特定の条件下で車両が全て自動運転を担う状態。ドライバー操作不要、限定エリア・状況で稼働。
ミリ波レーダー
物体との距離や速度を計測する車載センサー。周囲認識技術の要。
LiDAR
レーザーで対象物の距離や形状を測定し、車両の空間認識を担うセンサー。
GNSS
グローバル衛星測位システム。車両の位置情報を高精度に取得。
IMU
慣性計測ユニット。加速度と角速度から車両の動きを検知。
【参考リンク】
いすゞ自動車株式会社(外部)
トラック・バスを中心に商用車を生産・開発する日本の大手メーカー公式サイト。
Applied Intuition, Inc.(外部)
自動運転システム開発・評価支援プラットフォームを提供する米国テック企業公式サイト。
【参考記事】
Isuzu Motors Joins Forces With Applied Intuition To Develop Level 4 Truck Tech(外部)
いすゞとApplied Intuitionによるレベル4自動運転トラック開発協力と、日米での実証・センサー技術連携の詳細。
Isuzu to build $47m autonomous truck test track in Japan(外部)
北海道に4700万ドル規模の自動運転専用テストコースを建設、事業化を見据えた検証体制構築について。
Isuzu Unveils ¥7.4B Test Track for Autonomous Trucks and Buses(外部)
北海道のテストコース完成や今後の検証計画、センシング・遠隔監視技術への投資指針。
【編集部後記】
日々社会を支える物流の世界は、普段目にすることが少ないかもしれません。しかし、トラック運転手の不足や働き方改革による長時間労働の制限など、今の日本の物流現場が抱える課題は年々深刻になっています。今回の事例は、自動運転技術で「運ぶ」を変革する可能性に満ちています。みなさんは自動運転トラックの普及によって、生活や働き方がどのように変わると感じますか。これからの未来を一緒に考えてみませんか。

