JFEエンジニアリング株式会社とJ&T環境株式会社は、2025年11月12日、廃棄物ガス化技術を用いた廃棄物ケミカルリサイクルプロセスの小型炉実証設備が完成し、竣工式を実施したと発表した。
設備はJFEスチール株式会社東日本製鉄所(千葉県千葉市)敷地内のJ&T環境千葉リサイクルセンターに建設された。本設備は、2024年2月にNEDOグリーンイノベーション基金事業に採択された技術開発プロジェクトの一環となっている。
新技術は「C-PhoeniX Process®」と呼ばれ、廃棄物から水素や一酸化炭素を含む精製合成ガスを製造し、プラスチック原料や持続可能な航空燃料(SAF)、水素源等へ利用可能である。実証試験は2025年12月開始、2026年6月完了予定。設備の処理能力は20トン/日である。
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世界でも希少な廃棄物ガス化技術を用いた ケミカルリサイクルプロセス確立へ本格始動!
【編集部解説】
C-PhoeniX Process®による廃棄物ガス化・ケミカルリサイクルの事例は、世界的にも数少ない先端技術として位置付けられています。JFEエンジニアリングによる独自開発のガス化改質技術は、幅広い種類の廃棄物から安定的かつ高純度な合成ガス(水素や一酸化炭素中心)を生産できるため、従来の単なる燃焼方式とは一線を画するものです。生成されたガスはプラスチック原料や航空燃料、さらには水素としても利用できる可能性が広がります。
グリーンイノベーション基金やNEDOの国際技術支援事業の一環として、この分野への巨額投資と研究開発が進められており、日本が世界のカーボンリサイクル・資源循環技術のリーダーシップを強化している状況です。実際、欧米企業でも類似技術(廃プラスチックからのガス化やパイロリシス)は導入されているものの、JFEエンジニアリングのプロセスは長期運転実績や安定性が評価されています。
この技術の社会的インパクトとして、廃棄物処理だけでなく重化学工業や航空産業など幅広い分野でのCO₂排出削減や資源循環推進が期待できます。また、生成した水素が将来的なカーボンフリーエネルギーの供給基盤となる可能性もあります。
一方、廃棄物由来の化学品製造は従来の化石燃料由来プロセスとの競争や、分別収集・混合廃棄物の品質変動など技術的・経済的な課題も残っています。さらに、今後の規制や国際標準の動向が事業化や社会実装を左右するリスクもあるため、広範な観点から継続的な検証が必要です。
現時点では、2025年12月開始予定の実証試験と設備の稼働が、2030年の商用実装へ至る重要なステップとなるでしょう。日本の廃棄物処理業界と資源循環型経済の未来像を変えうる技術革新のひとつです。
【用語解説】
ガス化技術
廃棄物を高温で熱分解することで、主な成分である水素や一酸化炭素を含む合成ガスを効果的かつ持続的に生成し、資源循環やエネルギー供給の基盤となる技術。
合成ガス
廃棄物や化石燃料などを高温処理して得られる、水素と一酸化炭素を中心に構成されるガスで、化学原料や燃料、プラスチックや燃料電池などさまざまな分野に展開可能。
持続可能な航空燃料(SAF)
廃棄物、植物油、古紙など多様な原料から合成される航空燃料のことで、化石由来燃料と比べてCO₂排出量を大幅に抑え、持続可能社会の実現に貢献する代替エネルギー。
NEDOグリーンイノベーション基金
脱炭素社会の実現を目指し、新しい技術開発や社会実装の支援を行う日本の公的基金で、エネルギー・環境分野の産業競争力強化やイノベーション促進の役割を担っている。
【参考リンク】
JFEエンジニアリング株式会社(外部)
総合エンジニアリング企業で、廃棄物処理やインフラ事業も展開している。
J&T環境株式会社(外部)
廃棄物処理・リサイクルを主軸とする企業で資源循環社会の実現に取り組む。
NEDOグリーンイノベーション基金(外部)
エネルギー・環境分野の技術革新プロジェクト情報を提供する公的サイト。
【参考記事】
JFEエンジ、家庭ごみからプラスチック原料を製造 千葉市で実証(外部)
家庭ごみを原料としたケミカルリサイクル技術。本技術のビジネスモデルと将来性の解説。
飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?(外部)
経済産業省まとめのSAF導入政策・基礎情報掲載ページ。
循環経済への移行の取り組み(外部)
JFEグループ全体の資源循環型社会への貢献。製鉄プロセスで培った技術を応用した、プラスチックリサイクルの取り組みの紹介。
【編集部後記】
この分野の技術革新や社会実装が進むことで、廃棄物やリサイクルの問題が私たち自身の未来と生活に深く関わっていることが一層明確になります。資源循環やカーボンニュートラルにどんな関心や課題をお持ちですか?「自分の仕事や地域でも役立ちそう」と感じた方は、ぜひご意見をお聞かせください。一緒に次世代の社会像を考えていきましょう。

