プロアクティブAI企業のFourierは2026年1月7日、ラスベガスで開催されたCESに初出展し、ヒューマノイドロボット「GR-3」を米国で初めて公開した。GR-3は同社初のフルサイズ「ケアボット」で、2025年8月に発表された。身長約165cm、55の自由度を持ち、視覚、音声、触覚を統合したFull-Perception Multimodal Interaction Systemを搭載する。
会場では来場者との会話、タッチベースのインタラクション、ダンスセッション、ライブチェスマッチなどを実演した。Fourierはまた、同じデザイン言語に基づく人形サイズのコンパニオンロボットコンセプトも発表した。このモデルは着せ替えやパーソナライズが可能で、現在開発中である。
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Fourier Makes CES Debut With GR-3, a Next-Generation Care-Focused Humanoid Robot
【編集部解説】
Fourierは2015年に上海で創業されたロボティクス企業で、当初はリハビリテーションロボットやエクソスケルトン(外骨格)に特化していました。40カ国以上の2,000以上の医療機関にリハビリ機器を提供してきた実績があり、その技術基盤がヒューマノイドロボット開発に活かされています。
同社は2019年からヒューマノイドロボット開発を開始し、2023年にGR-1(中国初の量産型ヒューマノイドロボット)、2024年にGR-2を発表。GR-3は2025年8月に北京で発表された第3世代モデルです。価格は20万元以上(約27,500ドル)とされ、主に医療機関や企業向けのB2B市場をターゲットとしています。
CES 2026では、ヒューマノイドロボット出展企業38社のうち21社が中国企業であり、過半数を占める状況となりました。Unitree Robotics、AgiBot、Galbot、EngineAIなど多数の中国企業が参加し、中国のヒューマノイドロボット産業の躍進を印象づけています。過去5年間で中国は7,705件のヒューマノイド関連特許を出願しており、米国の1,561件を大きく上回っています。
GR-3が「ケアボット」として位置づけられている背景には、世界的な高齢化と介護人材不足という社会課題があります。日本では2025年までに約38万人の介護労働者が不足すると予測され、日本の経済産業省は2035年までに国内の介護ロボット市場が38億ドル規模に成長すると見込んでいます。
ただし、日本での介護ロボット導入の実態は、期待と現実の間にギャップがあります。ロボットの維持管理やトラブルシューティングが介護者の作業を増やすケースや、施設内での移動が煩雑で使用を断念するケースも報告されています。また、日本の早稲田大学が開発中のAIRECのような高度な介護ロボットは、2030年の実用化を目指しており、価格も約67,000ドルと見込まれています。
GR-3の特徴は、物理的な介護タスクだけでなく、感情的なつながりを重視した設計にあります。視覚、聴覚、触覚を統合したマルチモーダルインタラクションシステムにより、声の方向を特定して視線を合わせたり、タッチを検知して反応したりできます。また、高速な反射制御と大規模言語モデルによる推論を組み合わせたハイブリッド意思決定アーキテクチャを採用しており、単純な動作から複雑な会話まで対応可能です。
今回発表された人形サイズのコンパニオンロボットコンセプトは、デスクトップ型として家庭への導入障壁を下げる戦略と見られます。Fourierは段階的に市場を開拓し、最終的には家庭内での日常的な存在を目指していると考えられます。
ヒューマノイドロボットの実用化には、技術的な進化だけでなく、人間社会への受容性、コスト、安全性、倫理的配慮など多面的な課題があります。Fourierの「ケア」に焦点を当てたアプローチは、ロボットと人間の共生という長期的な視野に立った戦略であり、CES 2026での初披露は、その方向性を世界に示す重要なステップとなりました。
【用語解説】
CES(Consumer Electronics Show)
毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市。コンシューマー向けエレクトロニクス製品や最新技術が発表され、業界のトレンドを占う場として注目される。1967年から開催されている。
ヒューマノイドロボット
人間の姿や動作を模倣するように設計されたロボット。二足歩行、手の器用な動作、視覚・聴覚などの感覚機能を持ち、人間の生活空間で活動できることを目指す。人間とのインタラクションに適した形態を持つ。
自由度(Degrees of Freedom)
ロボットが動ける関節の数を示す指標。自由度が高いほど、より複雑で柔軟な動きが可能になる。GR-3の55自由度は、人間の動作に近い滑らかな動きを実現するための設計。
マルチモーダルインタラクションシステム
視覚、聴覚、触覚など複数の感覚情報を統合して処理するシステム。人間とのより自然なコミュニケーションを可能にし、状況に応じた適切な反応を実現する。
大規模言語モデル(Large Language Model)
膨大なテキストデータで学習したAIモデルで、自然な会話や文脈理解が可能。ChatGPTなどに使われる技術で、ロボットに高度な対話能力や推論能力を付与する。
エクソスケルトン(外骨格)
人体の外側に装着する機械装置で、身体機能を補助または増強する。リハビリテーションや重労働の支援に使用され、Fourierの原点となった技術領域。
ケアボット
介護や支援を目的としたロボット。物理的な介助だけでなく、感情的なつながりや会話など、人間的な側面を重視した設計が特徴。
B2B市場(Business to Business)
企業間取引市場のこと。GR-3は個人消費者向けではなく、医療機関や企業などの組織を主な顧客とする。
【参考リンク】
Fourier公式サイト(外部)
上海拠点のロボティクス企業。GRxシリーズのヒューマノイドロボットとリハビリテーション機器を開発している。
CES公式サイト(外部)
世界最大級のテクノロジー見本市。毎年1月にラスベガスで開催され、最新技術が集結する。
Fourier GR-3製品ページ(外部)
GR-3の詳細情報を掲載。技術仕様やFull-Perception Multimodal Interaction Systemを紹介。
PR Newswire(外部)
世界的なプレスリリース配信サービス。企業の最新ニュースや製品情報を配信している。
【参考記事】
China’s humanoid robot firms make up half of exhibitors at CES 2026(外部)
CES 2026での中国企業の躍進を報じる。出展統計や特許出願数など具体的データを掲載。
Robots in elderly care: Lessons from Japan’s aging population(外部)
日本の介護ロボット市場分析。2035年の市場規模予測や介護人材不足の数値を報告。
Fourier Launches First Humanoid Care Robot, Advancing Emotional AI in Robotics(外部)
GR-3の価格情報とB2B戦略を詳述。創業者Alex Guのインタビューも掲載。
Japan tests AIREC robot to roll patients, easing caregiving challenges(外部)
早稲田大学開発のAIRECロボットについて、価格や実用化時期などを報告。
Inside Japan’s long experiment in automating elder care(外部)
日本の介護ロボット導入の実態調査。実用化における課題を批判的に分析。
Fourier’s humanoid robot brings ‘warm tech companionship’ to CES 2026(外部)
CES 2026でのFourierデビューを報告。GR-3の詳細スペックとコンセプトを紹介。
【編集部後記】
ヒューマノイドロボットが「ケア」を担う未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。GR-3のような技術が実用化されたとき、私たちの日常はどう変わるのでしょうか。
介護の現場で人手不足が深刻化する一方、ロボットが本当に人間の温もりを代替できるのか、という疑問も残ります。みなさんは、ロボットに「感情的なケア」を求めますか?それとも、やはり人間にしかできない領域があると感じますか?
CES 2026で中国企業が過半数を占めたという事実も、グローバルな技術競争の新たな局面を示しています。日本をはじめとする高齢化社会において、この技術がどのように受け入れられ、活用されていくのか、一緒に見守っていきたいと思います。
