株式会社マイナビは2026年1月13日、「AI・テクノロジー導入におけるアルバイト採用状況調査(2026年版)」の結果を発表した。直近1年以内にアルバイト採用業務に携わった20~69歳の会社員1,500名を対象に、2025年12月5日から12月10日にかけてインターネット調査を実施した。調査によると、AIやロボットなどのテクノロジーを導入している企業の割合は50.9%で、テクノロジー導入により45.2%の企業がアルバイト新規採用数を抑制したと回答した。
2025年にアルバイト人材の不足を感じた企業は57.5%と2年連続で減少した。業種別のテクノロジー導入率は販売・接客(コンビニ・スーパー)が82.5%で最も高く、販売・接客(パチンコ・カラオケ・ネットカフェ)が77.8%、製造ライン・加工(メーカー)が65.6%と続いた。2025年のアルバイト採用目標人数は平均34.5人、採用人数は平均22.3人で、目標達成率は64.6%となった。
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「AI・テクノロジー導入におけるアルバイト採用状況調査(2026年版)」を発表
【編集部解説】
今回マイナビが発表した調査結果は、日本の労働市場における歴史的な転換点を示すデータといえます。AIやロボットなどのテクノロジー導入が、単なる効率化のツールではなく、採用戦略そのものを変容させる「実装段階」に入ったことを明確に示しています。
注目すべきは、テクノロジー導入企業の50.9%という数字です。すでに二社に一社がAIやロボットを業務に組み込んでおり、そのうち45.2%が実際にアルバイト採用数を抑制しています。これは理論上の可能性ではなく、現実に起きている変化です。
特に興味深いのは業種による導入率の差です。コンビニ・スーパーでの82.5%、パチンコ・カラオケ・ネットカフェでの77.8%という高い導入率は、定型業務が多い現場でテクノロジーによる代替が急速に進んでいることを物語っています。一方で、建築・土木や製造ラインといった物理的な作業を伴う業種でも、ロボットや自動化機器による省人化が58.5~59.2%の採用抑制につながっています。
ここで重要なのは、この調査が示す「業務の二極化」です。AIチャットボットによる問い合わせ対応、ロボットによる物品運搬、在庫管理システムといった定型業務は確実にテクノロジーに置き換わりつつあります。つまり、人間の労働は「テクノロジーで代替できる定型業務」と「人間にしかできない非定型業務」に分断されていく過程にあるのです。
一見すると矛盾するように見えるデータもあります。採用難易度は47.0%の企業が「厳しかった」と回答する一方で、人材不足感は57.5%と2年連続で減少しています。この現象は、テクノロジーによる業務代替が人手不足の「体感」を緩和していることを示唆しています。必要な人数は減ったが、採用市場での競争は依然として激しい――これが2025年の日本の労働市場の実像です。
ただし、例外的に深刻化している業種があります。介護業界です。前年比6.5ポイント増の70.0%が人材不足を感じており、「2025年問題」の影響が既に顕在化しています。団塊世代が後期高齢者となり、介護需要が急増する中、この業種では人間による対人サービスの需要が減ることはありません。むしろ、テクノロジーによる業務効率化が追いついていない現状が浮き彫りになっています。
この調査結果が示す未来は、決して単純な「人間対AI」の構図ではありません。マイナビの調査担当者が指摘するように、私たちは「機械に代替できるもの」と「人にしかできないもの」を見極め、自らのスキルを再定義していく時代に突入しています。
技術史的に見れば、産業革命以降、あらゆる技術革新は雇用の破壊と創造を同時にもたらしてきました。今回のAI革命も例外ではありません。ただし、過去の技術革新と決定的に異なるのは、今回は知的労働、つまり「頭を使う仕事」が対象になっている点です。
OECD諸国の労働者の約4分の1が既に生成AI技術の影響を受けているという2025年3月の報告は、この変化がグローバルな現象であることを示しています。日本だけでなく、先進国全体で同じ潮流が起きているのです。
では、私たち個人はどう対応すべきでしょうか。この調査が示唆するのは、スキルの「持続的なアップデート」です。定型業務をこなすだけのスキルセットでは、テクノロジーに代替される可能性が高まります。一方で、創造性、問題解決能力、対人スキル、判断力といった、AIが苦手とする能力を磨くことで、テクノロジーと「補完関係」を築くことができます。
企業側の視点では、この調査結果は採用戦略の抜本的な見直しを迫っています。単に「人が足りない」から採用するのではなく、「どの業務を人間が担い、どの業務をテクノロジーに任せるか」という業務設計から始める必要があります。2026年の採用見通しで「増やす予定」が2年連続で減少している背景には、こうした戦略的な判断があると考えられます。
最後に、この変化がもたらす社会的な影響について考える必要があります。テクノロジーによる効率化は企業の生産性を高める一方で、雇用の質と量に影響を与えます。特に、非正規雇用が多いアルバイト市場では、その影響が顕著に現れる可能性があります。政策立案者は、技術革新の恩恵を社会全体で共有するための仕組みづくり、教育システムの改革、セーフティネットの整備といった課題に取り組む必要があるでしょう。
2026年1月のこの調査結果は、単なる統計データではありません。人類史における労働の意味が根本から問い直される時代の、貴重な記録なのです。
【用語解説】
2025年問題
1947~1949年生まれの団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に達することで生じる社会的課題の総称。医療・介護需要の急増、社会保障費の膨張、労働力人口の減少などが懸念されている。2025年には後期高齢者が約2,105万人に達すると推計される。
団塊世代
第一次ベビーブーム期(1947~1949年)に生まれた世代。日本の人口構成で最も人数が多い世代であり、この世代の高齢化が社会保障制度に大きな影響を与えるとされる。
定型業務/非定型業務
定型業務とは、手順やルールが明確で反復的な作業のこと。非定型業務とは、状況に応じた判断や創造性が求められる作業のこと。AIやロボットは定型業務の代替に適しているが、非定型業務は人間の強みが発揮される領域とされる。
生成AI
テキスト、画像、音声などのコンテンツを生成できる人工知能技術。従来のAIが特定のタスクに特化していたのに対し、生成AIは幅広い知的労働に適用可能で、労働市場に大きな影響を与えると予測されている。
OECD(経済協力開発機構)
先進国を中心とした38カ国が加盟する国際機関。経済成長、貿易、開発援助などに関する政策協調を行う。労働市場や技術革新に関する調査・分析も実施している。
ウェイトバック集計
調査対象の属性(業種、企業規模など)が実際の母集団の構成比と異なる場合、統計的に補正して母集団を代表する結果を得るための集計手法。今回の調査では各業種100名ずつになるよう調整されている。
【参考リンク】
株式会社マイナビ(外部)
人材サービス大手。新卒・中途採用支援、アルバイト求人などを提供し、採用市場の動向分析を実施。
マイナビキャリアリサーチLab – AI・テクノロジー導入におけるアルバイト採用状況調査(外部)
本記事の元調査の詳細レポート。詳細データ、図表、担当者コメントを掲載。
OECD(外部)
生成AIが労働市場に与える影響を地域別に分析。2025年3月報告書を発表。
厚生労働省(外部)
2026年度に必要な介護職員数を約240万人と推計。介護人材確保の政策を推進。
【参考記事】
生成AIがもたらす労働市場の二極化(外部)
第一生命経済研究所のレポート。AIによる「代替される職」と「協働する職」への二極化を分析。
生成AIが労働市場に与える影響を分析、地域間格差拡大の可能性も(OECD:2025年3月)(外部)
OECD諸国の労働者の約4分の1が生成AI技術の影響を受けているとの分析。
AIやIoTなどの技術革新は雇用にどのような影響を与えるのか(アメリカ:2019年2月)(外部)
MIT教授の研究を引用。AIによる自動化は代替と補完の双方があると指摘。
【編集部後記】
この調査結果を見て、皆さんはご自身の仕事を思い浮かべたでしょうか。「機械に代替できるもの」と「人にしかできないもの」――この線引きは、思っているよりも曖昧で、刻々と変化しています。
私たちinnovaTopiaは、テクノロジーの進化を追いかける中で、いつも同じ問いに立ち返ります。技術は人間の可能性を広げるのか、それとも狭めるのか。答えは、私たち自身がどう向き合うかで決まるのかもしれません。
皆さんは、AIと「競争」しますか、それとも「協働」しますか。ぜひSNSで教えてください。

