2026年2月初旬、Googleは米国の英語圏ユーザーを対象にDiscover特化型コアアップデートの展開を開始した。NewzDash CEOのジョン・シェハタが2月20日に公開した分析では、アップデート前(1月25日〜31日)と後(2月8日〜14日)の米国トップ1000ドメインおよび米国・カリフォルニア・ニューヨークのトップ1000記事データを比較している。結果、国際ドメインのスコア加重シェアは8.52%から7.04%に低下し、米国シェアは88.86%から89.94%に上昇した。カリフォルニアではトップ100内のローカル記事が10から16に増加し、州レベルの地域パーソナライゼーションが確認された。カテゴリー別では米国でニュースが15.94%から19.16%に上昇し、アート&エンターテインメントは24.40%から17.90%に低下した。X.comの米国トップ100内アイテム数は3から13に増加した。テンプレート型クリックベイトの抑制も方向性として確認された。
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Google Discover Feb 2026 Core Update Scorecard: Data Shows What Actually Changed
【編集部解説】
今回のアップデートを理解するうえで最も重要な前提があります。GoogleがDiscover「だけ」を対象としたコアアップデートを実施するのは、これが史上初めてのことです。従来のコアアップデートは検索結果全体に影響を及ぼすものでしたが、今回はDiscoverのコンテンツ推薦システムのみに的を絞っています。Googleが一つのプロダクトのためだけに独立したコアアップデートを行ったという事実そのものが、Discoverの戦略的重要性の高まりを物語っています。
その背景には、ニュースパブリッシャーにとってのトラフィック構造の激変があります。NewzDashが400以上のニュースパブリッシャーを対象に行った分析によると、Googleからニュースサイトへのトラフィックに占めるDiscoverのシェアは、2023年の37.03%から2025年第4四半期には67.51%へとほぼ倍増しました。一方、従来のWeb検索のシェアは同期間に51.10%から27.42%へ急落しています。AI Overviewsの拡大によって検索結果ページでユーザーの疑問が完結する「ゼロクリック検索」が増えたことが、この逆転を加速させました。
こうした状況下で、Discoverのスコアリングを変えるということは、多くのパブリッシャーの生命線を直接握り直すことに等しいといえます。
記事中で注目すべきデータの一つは、X.com(旧Twitter)のDiscover内での急成長です。米国トップ100記事におけるXの投稿数がアップデート前の3件から13件へ急増し、Discover可視性も38%上昇しました。Googleが権威あるアカウントのポストを「タイムリーなオリジナルコンテンツ」として評価し始めている可能性を示唆するものですが、これはパブリッシャーにとって諸刃の剣となりえます。ユーザーがDiscover経由でXの投稿に到達し、そこからさらにパブリッシャーのサイトに遷移するという2段階の導線が生まれるため、直接流入と比較してクリックスルー率が低下するリスクがあるからです。
もう一つの重要な論点は、トピックの幅が広がる一方でパブリッシャーの多様性が低下しているという矛盾です。米国ではトップ1000記事のユニークドメイン数が172から158に減少しました。これは「より多くのトピックを、より少ない信頼されたパブリッシャーから配信する」というGoogleの方向性を示しており、中小規模のメディアにとっては参入障壁の上昇を意味する可能性があります。
ただし、ローカルパブリッシャーにとってはむしろ追い風となっています。カリフォルニアとニューヨークのフィードにおける州レベルのパーソナライゼーションが明確に確認され、地域に根ざした報道を行うメディアにとっては、構造的な配信優位性が生まれたことになります。
このアップデートは現在、米国の英語圏ユーザーに限定されていますが、Googleは今後数か月以内に全ての国と言語に展開すると明言しています。日本のパブリッシャーにとっても、決して対岸の火事ではありません。展開が始まれば、日本国内でも同様にローカル関連性の重視、クリックベイト型コンテンツの抑制、トピック専門性に基づく評価が適用される可能性が高いと考えられます。
さらに俯瞰すると、Press Gazetteが指摘している構造的な懸念も見過ごせません。パブリッシャーがDiscoverへの依存度を高めるほど、Googleはコンテンツへのアクセスや著作権交渉において一層強い交渉力を持つことになります。フランスではすでに、Googleが著作権義務への対応としてDiscover経由のトラフィックを交渉材料に使い、無償のライセンス契約を推し進めた事例が報告されています。アルゴリズムの改善がユーザー体験を向上させるのは事実ですが、その裏側では、プラットフォームとパブリッシャーの間の力学が一層非対称になりつつある点にも目を向ける必要があるでしょう。
【用語解説】
Google Discover(グーグル ディスカバー)
Googleのモバイルアプリやandroidのホーム画面に表示されるパーソナライズされたコンテンツフィードである。ユーザーが検索クエリを入力しなくても、興味・関心、閲覧履歴、位置情報などに基づいてコンテンツが自動的に表示される。従来の検索とは異なる推薦型の配信チャネルである。
コアアップデート
Googleが検索やDiscoverなどのシステム全体に対して行う広範なアルゴリズム変更のことである。特定のサイトをペナルティ対象とするものではなく、コンテンツの品質・関連性・有用性の評価基準を再調整するものである。
Discover可視性スコア(Discover Visibility Score)
NewzDashが独自に算出する、Google Discover内でのコンテンツ露出度の相対的指標である。各時間枠で最上位のアイテムを100ポイントとし、他のアイテムはそれに対する相対値で表される。
好奇心ギャップ(Curiosity Gap)
ヘッドラインで意図的に情報を伏せ、「続きが気になる」という心理を利用してクリックを誘導する手法である。クリックベイトの代表的なパターンの一つとされる。
スコア加重シェア(Score-Weighted Share)
単純な記事数の割合ではなく、各記事の可視性スコアを加味して算出された占有率である。高スコアの少数記事が全体の数値に大きく影響し得る。
ゼロクリック検索
ユーザーが検索結果ページ上で回答を得て、どのサイトにもクリックせずに検索を終了する現象である。AI OverviewsなどGoogleの機能拡充に伴い増加しており、パブリッシャーへのトラフィック減少の主要因とされる。
E-E-A-T
Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字をとったGoogleのコンテンツ品質評価指標である。今回のアップデートでは特にトピックごとの専門性評価が重視されている。
【参考リンク】
Google Search Central Blog — February 2026 Discover Core Update(外部)
Googleによる2026年2月Discoverコアアップデートの公式発表ページ。目的と対象範囲を記載。
Google Search Status Dashboard — February 2026 Discover Update(外部)
ロールアウト開始日時(2026年2月5日 太平洋時間9:00)が記録されたインシデント情報ページ。
NewzDash — Real-Time News SEO Dashboard(外部)
ジョン・シェハタ創業のニュースSEO分析プラットフォーム。今回の分析記事の発行元。
NewzDash DiscoverPulse — Google Discover Monitoring(外部)
40か国以上で毎日10万件以上の記事を分析するGoogle Discoverリアルタイム監視ツール。
Chartbeat — Real-Time Analytics for Digital Media(外部)
世界約2,000のニュースサイトのトラフィックを分析するアナリティクスプラットフォーム。
【参考動画】
該当なし
※ 記事著者ジョン・シェハタによるSEO Week 2025での講演トランスクリプトが以下で公開されている。動画ではないが、Google Discoverの仕組みと最適化手法に関する詳細な解説として参考になる。
Unlocking Google Discover Code: Analyzing 200+ Million Articles | John Shehata | SEO Week 2025
【参考記事】
Global publisher Google traffic dropped by a third in 2025 — Press Gazette(外部)
Google検索トラフィックが前年比約3分の1減少、Discoverリファラルも21%減と報告した分析記事。
Google Discover now makes up two-thirds of search traffic — Press Gazette(外部)
Googleトラフィックの68%がDiscover経由と報告。著作権交渉への構造的影響も指摘している。
Google Search Traffic Drops 25 Points To News Publishers — Search Engine Roundtable(外部)
Discoverシェアが37.03%から67.51%に上昇、Web検索は51.10%から27.42%に急落と報告。
Google Discover Update: Early Data Shows Fewer Domains In US — Search Engine Journal(外部)
米国ユニークドメイン数172→158の減少やX.com急増などNewzDash分析の要点を報道。
February 2026 Google Discover Core Update Rolling Out — Search Engine Roundtable(外部)
Google史上初のDiscover専用コアアップデートの速報。パブリッシャーの反応も紹介している。
Google releases February 2026 Discover core update — Search Engine Land(外部)
Google公式発表に基づく速報。全言語・全地域への拡大予定とローカル優先の影響を報道。
【編集部後記】
Google Discoverが検索を上回るトラフィック源になりつつある今、コンテンツとの出会い方そのものが変わろうとしています。「検索する前に届く情報」が主流になったとき、私たちの情報環境はどう変わるのでしょうか。今回のアップデートは米国が先行していますが、日本への展開も明言されています。みなさんのDiscoverフィードにも、近いうちに変化が訪れるかもしれません。その変化を一緒に観察していけたらと思います。

