SonyのPlayStation リード・システム・アーキテクトであるマーク・サーニーは、2026年3月22日にDigital Foundryのインタビューにおいて、機械学習ベースのフレームジェネレーションが開発中であり、「PlayStation プラットフォームでいずれ登場する」と述べた。フレームジェネレーションとは、レンダリングされたフレームの間にAIが新たなフレームを生成することで、体感フレームレートを向上させる技術であり、PCではすでにNvidia DLSSやAMD FSRとして普及している。
PS5 ProにはすでにAIアップスケーリング技術のPSSRが搭載されており、フレームジェネレーションは同コンソールへの搭載が最有力視される。ただしマーク・サーニーは2026年中の追加リリース予定はないと述べており、登場は2027年以降になる可能性がある。SonyとAMDは「Project Amethyst」において共同開発を進めている。
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AI frame generation is coming to the PS5 Pro – Digital Trends
【編集部解説】
今回の報道の核心は、PlayStationのリード・システム・アーキテクトであるマーク・サーニーが、Digital Foundryのインタビューで「AIフレームジェネレーション」の開発を公式に認めたという点です。ただし一点、注意が必要です。Digital Trendsの見出しは「PS5 Proにやってくる」と断言していますが、サーニーの実際の発言は「PlayStation platforms(プラットフォーム)でいずれ見られるはず」というものです。PS5 Proに限定した言及ではなく、PS6を含む将来のプラットフォーム全体への言及であり、この微妙な差は見落とせません。
そもそも「フレームジェネレーション」と「アップスケーリング」は、混同されがちですが別物です。アップスケーリング(PSSRやAMD FSRのアップスケーリング機能)は、低解像度の画像から高解像度の画像を再構築する技術です。一方のフレームジェネレーションは、実際にレンダリングされたフレームとフレームの間に、AIが「存在しなかったフレーム」を予測・生成して挿入する技術です。ゲームエンジンが実際に描画した映像ではないため、PC界隈では「フェイクフレーム」と呼ばれることもあります。
この技術の背景にある「Project Amethyst」は、SonyとAMDによる深いレベルでの共同開発プロジェクトです。PS5 Proに搭載されているPSSR 2.0(アップスケーリング)も、AMDのFSR Redstoneのアップスケーリング機能と同一のニューラルネットワークを基盤としており、AMDのジャック・フイン(AMD SVP兼GM)は「co-engineered technology(共同設計技術)」と表現しています。つまり、フレームジェネレーションもすでに「作っている最中」の技術であり、ゼロからではなくすでに共同開発が進行中です。
一方で、PS5 Proのハードウェア事情も把握しておく必要があります。PS5 Proに搭載されているGPU(開発コード名”Viola”)は、マーク・サーニーが「RDNA 2.x」と命名したハイブリッドアーキテクチャです。RDNA 2をコアとしつつRDNA 3の機能を部分的に統合した独自設計であり、ゲームの後方互換性を維持しながらパフォーマンスを向上させています。FSR Redstoneは現在PCではRDNA 4世代(Radeon RX 9000シリーズ)のみ正式対応ですが、PS5 Proは独自のAIアクセラレーターを活用することでFSR 4相当の機能を引き出しています。フレームジェネレーションについても同様のアプローチが取れるかどうかが、技術的な鍵になります。
また、次のステージとして「FSR Diamond」(FSR 5に相当するコードネーム)の存在も見えてきました。これはRDNA 5アーキテクチャを搭載する次世代コンソール(Sony: Project Amethyst、Microsoft: Project Helix)向けに開発中で、アップスケーリング・フレームジェネレーションに加え、「Ray Regeneration(レイ再生成)」「Neural Radiance Caching(ニューラル放射照度キャッシュ)」といったAI駆動のレンダリング機能をフルセットで備えると見られています。つまり、今回のフレームジェネレーションの話は、PS6に向けた技術ロードマップの一端が見えた瞬間とも言えます。
技術の恩恵としては、ゲームの見た目の滑らかさが向上し、開発者がグラフィック品質を維持しながらパフォーマンスを確保しやすくなる点が挙げられます。特に重いレイトレーシング表現を持つタイトルや、4K/60fps維持が難しいゲームでの活用が期待されます。
ただし、懸念点も看過できません。フレームジェネレーションは「入力レイテンシ」を増加させる側面があります。PCでの実例では、フレームジェネレーション有効時に数ミリ秒から十数ミリ秒程度の遅延増加が指摘されており、AMD側のソリューションはレイテンシ補正機能(Nvidia Reflexに相当)がまだ十分でないとの声もあります。アクションゲームやシューティングゲームなど、操作応答性が重要なジャンルでは、この遅延が体験品質に直結します。
さらにゲーム開発の現場への影響も懸念されています。本来、フレームジェネレーションは「すでに安定した高フレームレートを持つゲーム」で効果を発揮する技術です。しかし過去のPC市場では、最適化不足を補うためにフレームジェネレーションを使い、30fps台のゲームを60fps相当に見せるような悪用も見られました。コンソール向けに実装された場合、開発者がゲームの最適化努力を怠る「言い訳」に使われるリスクも、コミュニティの間では真剣に議論されています。
2026年中のリリースはないとサーニー自身が明言しており、本格的な登場は早くて2027年以降です。PS5 Proに先行して搭載されるのか、PS6のキラーフィーチャーとして温存されるのかは、まだ不透明です。ただ確かなのは、AIがコンソールグラフィックスの中枢に据えられる時代が、着実に近づいているということです。
【用語解説】
フレームジェネレーション(Frame Generation)
AIがレンダリングされたフレームとフレームの間に「存在しないフレーム」を予測・生成して挿入する技術。GPUがすべてのフレームをゼロから描画するのではなく、前後のフレームから動きを推論して中間フレームを生成する。体感フレームレートは向上するが、実際に描画されたフレームではないため、「フェイクフレーム」と呼ばれることもある。
入力レイテンシ(Input Latency)
プレイヤーがコントローラーを操作してから、その結果が画面に反映されるまでの遅延時間。フレームジェネレーションでは、AIがフレームを生成する処理が挟まるため、この遅延が増加する傾向がある。アクション系ゲームなど操作応答性が重要なジャンルでは、体験への影響が大きい。
機械学習(ML: Machine Learning)
大量のデータからパターンを学習し、予測や判断を行うAI技術の一分野。フレームジェネレーションやアップスケーリングでは、AIモデルが膨大な映像データから「次のフレームがどう見えるか」「低解像度の画像を高解像度に変換するとどうなるか」を学習する。
RDNA 2.x アーキテクチャ
PS5 ProのGPUに採用されたハイブリッドアーキテクチャの呼称で、マーク・サーニー自身が命名した。RDNA 2をコア技術としつつ、RDNA 3の一部機能(プリミティブ処理など)と将来のRDNA技術(レイトレーシング向け)を組み合わせた独自設計。PS5との後方互換性を維持しながら性能向上を実現している。
FSR Diamond
AMDが開発中の次世代FSR技術のコードネーム(FSR 5に相当)。次世代のRDNA 5アーキテクチャ専用で設計される見通しで、PS6(Project Amethyst)やXbox次世代機(Project Helix)向けに想定されている。
【参考リンク】
Digital Foundry(外部)
Eurogamer傘下のゲームテクノロジー専門メディア。今回のマーク・サーニーへのインタビューを実施した、業界屈指の信頼性を持つテクノロジー情報源。
PlayStation Blog(Sony Interactive Entertainment)(外部)
Sonyによる公式情報発信ブログ。PSSR 2.0の展開やProject Amethystに関するマーク・サーニーの公式コメントが掲載されている。
AMD FidelityFX Super Resolution(FSR)公式ページ(外部)
AMDが提供するアップスケーリング・フレームジェネレーション技術の公式解説ページ。FSR Redstoneの機能一覧や対応ハードウェアを確認できる。
AMD Jack Huynh 公式プロフィール(外部)
Project Amethystの共同開発の立役者、AMD SVP兼GMであるジャック・フインの公式プロフィールページ。
VideoCardz.com(外部)
GPU・グラフィックスカード専門のテクノロジーメディア。マーク・サーニーの発言内容とその技術的背景を詳しく報道している。
【参考動画】
Digital Foundry:PS5 Pro PSSR 2.0 アップグレード解析動画
Digital Foundryによる公式YouTube動画。PSSR 2.0を搭載したPS5 Proの画質改善を、FSR 4およびDLSS 4.5と比較しながら詳細に分析。フレームジェネレーションへの布石となる現在のAI技術の水準を視覚的に確認できる。
【参考記事】
PlayStation frame generation is coming, Mark Cerny tells Digital Foundry(外部)
マーク・サーニーの発言を一次情報に近い形で報道。「PlayStation platforms」という表現の曖昧さとFSR 4.1との技術的つながりを詳細に解説している。
PlayStation System Architect Confirms FSR Redstone Frame Generation Is Coming “at Some Point”(外部)
サーニーの発言をPSSR 2.0の公開と関連づけて整理。「2026年中リリースなし」の明確な表現とProject Amethystの位置づけを確認できる。
PS5 Pro PSSR 2.0 Complete Game List March 2026(外部)
PS5 Proの専用AIブロック300 TOPSの数値や、2026年3月16日のファームウェア(26.02-13.00.00)の詳細など具体的な数値情報を網羅している。
AMD’s FSR 4.1 for RDNA 4 is based on the same tech as Sony’s new PSSR for the PS5 Pro(外部)
ジャック・フインのコメントを含む詳細記事。Ray RegenerationやNeural Radiance Cachingなど次世代技術のロードマップを把握できる。
AMD FSR Diamond – Everything You Need To Know About The Next-Gen Tech For PCs & Consoles(外部)
FSR DiamondがRDNA 5専用になる見通しや、PS6・Xbox次世代機との関係を解説。長期的な技術ロードマップの把握に有用だ。
It Sounds Like PS6 Will Support a Form of FSR Frame Generation(外部)
60fpsから120fpsへの適用メリットと、30fpsベースへの悪用リスクをコミュニティの声を交えながら論じたPush Squareの分析記事。
PS5 Pro GPU explained by architect Mark Cerny: Hybrid GPU with multi-generational RDNA tech(外部)
サーニー自身がPS5 ProのGPUを「RDNA 2.x」と命名した経緯と、16.7 TFLOPs(基本PS5比67%増)の正確なスペックを解説している。
【編集部後記】
フレームジェネレーションという言葉、みなさんはどう受け止めましたか?
「AIが生成したフレームで滑らかさを演出する」という発想は、ゲーム体験をどこまで変えられるのか、あるいは変えるべきなのか——私たちも正直、まだ答えが出ていません。
技術の進化と体験の本質、みなさんはどちらを優先しますか?ぜひ、身近な人と話してみてください。

