2026年2月上旬、ビットコインが約6万ドルまで急落した際、DeribitのDVOLとVolmexのBVIVはともに90%まで急騰した。同水準は、2024年8月にビットコインが約5万ドルで底値を形成した局面、および2022年11月のFTX崩壊時にビットコインが2万ドルを下回った局面と一致する。ビットコインは2024年初頭の米国におけるスポットBTC ETF導入以降、ウォール街との連動性を高めており、DVOLとBVIVはVIXと同様の逆張り指標として機能しつつある。
VIXは2026年3月9日に35%と1年ぶりの高値に達したが、2025年4月の60%超には届いていない。ビットコインは2025年10月に126,000ドルを超える高値をつけた後、下落トレンドに入った。
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Bitcoin Volatility Signals a Bottom as TradFi Reels in Uncertainty
【編集部解説】
今回の記事が問いかけているのは、シンプルかつ本質的な問いです。「ビットコインはすでに底を打ったのか?」——その答えを、伝統的金融市場(TradFi)で長年使われてきた「恐怖指数」の枠組みで読み解こうとしています。
まず、記事の核心にある指標を整理します。DVOLはDeribitが算出するビットコインの30日インプライド・ボラティリティ指数、BVIVはVolmexが提供する同種の指数です。どちらもオプション市場の価格から「今後1か月でどれほど価格が動くか」をリアルタイムで測るもので、株式市場のVIX(恐怖指数)に相当します。VIXと同様、これらの指数は平時には低く安定し、パニック時に急騰するという性質を持ちます。
この「急騰=底値圏のサイン」というロジックは、複数の過去事例で実証されています。2022年11月のFTX崩壊時にはインプライド・ボラティリティが90%に達し、価格は2万ドルを下回る底値を形成。2024年8月の円キャリートレード巻き戻し時にも同じパターンが現れ、ビットコインは約5万ドルで反転しました。そして2026年2月上旬、価格が約6万ドルへ急落した際にもDVOL・BVIVは90%超まで急騰しており、参考記事によれば最大で96%超に達したとの報告もあります。いずれの局面でも「極度の恐怖=底値圏」という構図が繰り返されてきました。
次に、このニュースが伝統的金融市場との関係において持つ意味を考えます。VIXが1年ぶりの高値である35%に達したのは3月9日、つまりビットコインのボラティリティが爆発してから約1か月後のことです。これは「暗号資産市場がTradFiに先行してリスクを織り込んでいた」ことを示唆しており、24時間365日取引されるビットコインが、週末も祝日も休まない「リアルタイムの恐怖バロメーター」として機能していることの裏付けでもあります。
一方で、本記事が一つの指標を軸に底打ち論を展開している点には注意が必要です。同じくCoinDeskが3月23日に報じた別記事では、MACDヒストグラムが再びマイナスに転じており、過去のパターンから見ると追加の下落リスクも残っていると警告しています。また、S&P 500とビットコインの相関係数が正の値に転じたという観測もあり、これは歴史的に大幅な下落に先行してきたシグナルとして知られています。強気論と弱気論の双方が並立している局面であることは、念頭に置いておくべきでしょう。
もうひとつ押さえたいのが、ETFによる市場構造の変化です。2024年初頭のスポットBTC ETF導入以来、ビットコインは機関投資家の資金と直接つながりました。これにより過去のサイクルとは異なる「底の深さ」が形成されている可能性があります。米国スポットBTC ETF全体のAUMは約950億ドル規模に達しており、たとえ短期的なアウトフローがあっても、強制売りではなく「一時的な様子見」にとどまっているという見方が主流です。
長期的な視点で見ると、この記事が持つ最も重要なメッセージは「ビットコインがTradFiのツールセットで語られる資産になった」という事実そのものです。VIXに対応するDVOLやBVIVが機関投資家の意思決定に組み込まれ始めているという変化は、ビットコインの金融インフラとしての成熟を示しています。インプライド・ボラティリティを「恐怖指数」として読み解く逆張り戦略が有効であるならば、ビットコインはもはや投機資産ではなく、TradFiの枠組みで管理・運用される資産クラスとして定着しつつあるといえるでしょう。
【用語解説】
インプライド・ボラティリティ(IV)
オプション市場の価格から逆算される「将来の価格変動の予測値」。実際の過去の動きではなく、市場参加者が「今後どれほど動くか」を織り込んだ期待値である。数値が高いほど市場の不確実性や恐怖心理が強いことを示す。
VIX(ボラティリティ・インデックス)
シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出する、S&P 500の30日間インプライド・ボラティリティ指数。「ウォール街の恐怖指数」とも呼ばれ、20以下は安定、30以上はパニック水準とされる。長期平均は約19〜20%。
TradFi(トラッドファイ)
Traditional Finance(伝統的金融)の略称。銀行、証券会社、取引所など既存の金融インフラ全般を指す。DeFi(分散型金融)との対比で使われることが多い。
逆張り指標(コントラリアン・シグナル)
市場の多数派が極端に悲観的になったとき、それを「買いのサイン」として逆方向にポジションを取る発想に基づく指標。VIXやDVOL、BVIVが急騰した局面は「パニックのピーク=底値圏」として機能することが歴史的に観察されている。
MACDヒストグラム
Moving Average Convergence Divergenceの略。短期と長期の移動平均線の乖離をビジュアル化したモメンタム指標。ヒストグラムがマイナス圏に入ると弱気モメンタムの強まりを示す。
円キャリートレード
低金利の円を借りて高利回り資産(米ドル建て資産など)に投資する手法。金利差が縮小する局面で急速に巻き戻しが起き、リスク資産全般の急落を引き起こすことがある。2024年8月に大規模な巻き戻しが発生した。
スポットBTC ETF
ビットコインを現物(スポット)で保有することを裏付けとした上場投資信託(ETF)。2024年1月に米国で承認・上場が始まり、機関投資家が既存の証券口座からビットコインに投資できる道を開いた。
【参考リンク】
Deribit(外部)
世界最大級のビットコイン・イーサリアムオプション取引所。DVOLはDeribitが算出するビットコインの30日インプライド・ボラティリティ指数。
Volmex Finance(外部)
暗号資産のインプライド・ボラティリティ指数を専門に提供するプラットフォーム。BVIVはビットコインの30日期待ボラティリティ指数として機関投資家に広く活用されている。
CoinDesk(外部)
本記事の出典元。老舗暗号資産メディアで、価格データ・マーケット分析・規制動向など幅広いコンテンツを英語で提供。機関投資家にも広く読まれている。
【参考記事】
Bitcoin: Analysts Say the Bottom Is In and Here Is What They Are Watching Next(外部)
BernsteinがBTCの底打ちを宣言し年末目標$150,000を維持。DVOL・BVIVの90%超急騰と週次RSIの過売れシグナルを根拠に、構造的な崩壊ではなくセンチメントのリセットと結論づけている。
Bitcoin Rose 3.7% While Gold Dropped and the S&P Hit a 2026 Low(外部)
VIXが35.30まで急騰した局面でBTCが逆に上昇した「デカップリング」を分析。BVIVが2月初旬に88.54まで急騰後58.02へ低下したデータを提示している。
$8.72B Bitcoin and Ethereum Options Expiry: Pain Trade Looms?(外部)
2月末の大規模オプション満期を詳報。DVOLが53でIVパーセンタイル87.7、プット・コール比率0.76、最大ペインポイント75,000ドルなど具体的な数値で市場構造を解説している。
Bitcoin in 2026: A Mixed Outlook That Favors Shorter-Term Trades(外部)
MVRV Zスコアが1.2まで低下、ETF累計流入が約600億ドルに達する一方、長期保有者比率が低下し約200万BTCの供給圧力が生じていることを指摘した2026年展望レポート。
【編集部後記】
「恐怖が極まったとき、それは買いのサインかもしれない」——ウォール街では長年語られてきたこの逆張りの哲学が、いまビットコイン市場にも根づきはじめています。
DVOLやBVIVといった指標が機関投資家の判断材料として浸透するにつれ、暗号資産市場はどう変わっていくのでしょうか。みなさんの視点をぜひ聞かせてください。

