TON(The Open Network)は木曜日、Catchain 2.0コンセンサスアップグレードをリリースした。
これによりブロック生成時間は従来の約10秒から400ミリ秒に短縮され、決済トランザクションは約1秒で完了し、取引はリアルタイムで決済される。アップデートにより年間インフレ率は約0.6%から3.6%へ6倍に増加する見込みだ。Catchainコンセンサスアルゴリズムは2020年に最初に提案されたもので、TONは世界10億人以上のユーザーを抱えるTelegramと統合されている。発表時点でTONは2.3%高の1.28ドルで取引され、取引量は1億3,010万ドル(35%以上増)、時価総額は31億7,000万ドルだった。
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TON blockchain claims sub-second finality with Catchain 2.0 upgrade
【編集部解説】
今回のCatchain 2.0アップグレードが持つ意味は、単純な「速度向上」を超えています。
ブロックチェーンには長らく「遅い」という宿命がありました。分散型ネットワークが全ノードで合意を取るBFT(Byzantine Fault Tolerance)型のコンセンサスには、構造的な時間が必要だったからです。BitcoinやEthereumが「数秒〜数分」という世界で、私たちはそれを「仕方のないもの」として受け入れてきました。
TONがCatchain 2.0で実現した「400ミリ秒のブロック生成・約1秒の決済」は、その前提を根本から覆すものです。私たちが日常的に使うメッセージアプリのレスポンスタイムと同じ領域に入ってきた、ということでもあります。
特筆すべきは、この技術革新が「10億人のインフラ」であるTelegramと直結している点です。TONは学術的な実験ではなく、すでに日常のコミュニケーションの場で稼働している決済インフラです。サブ秒ファイナリティが「使えるもの」になった今、それは世界中の普通のユーザーへ届く技術になりました。
また、パベル・ドゥーロフが「7ステップのロードマップ(MTONGA)の第1段階」と位置付けたことも見逃せません。次のステップはトランザクション手数料の6分の1削減とされており、TONは速度・コストの両輪で既存の決済インフラへの挑戦を本格化させようとしています。
一方で、年間インフレ率が約0.6%から3.6%へ6倍に増加するという経済的変化は、中長期的に注視が必要です。バリデーターへの報酬増加はネットワークの安全性強化に寄与しますが、Toncoinの価値保存機能への影響は今後の市場動向が示していくでしょう。
ブロックチェーンが「遅い技術」から「速い技術」へと転換するこの瞬間は、単一チェーンの話にとどまりません。Web3全体のユーザー体験が問い直される、ひとつのターニングポイントとして記憶されるかもしれません。
【用語解説】
レイヤー1ブロックチェーン(Layer-1 Blockchain)
ブロックチェーンの基盤となるプロトコル層そのもの。BitcoinやEthereumのように、独自のネットワーク・コンセンサスルール・通貨を持ち、他のチェーンに依存せず単独で動作するブロックチェーンを指す。
BFT(Byzantine Fault Tolerance/ビザンチン耐障害性)
分散型ネットワークにおいて、一部の参加者(ノード)が不正・故障・応答なしの状態であっても、残りのノードが正しく合意に達できる性質のこと。ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズム設計の根幹をなす概念であり、TONのCatchainもBFT型の設計に基づいている。
コンセンサスアルゴリズム
ブロックチェーンネットワークにおいて、複数のノード(参加者)がトランザクションの正当性やブロックの追加順序に合意するための規則・仕組みのこと。ネットワーク全体の信頼性と速度を左右する根幹技術である。
Catchain 2.0
TONが2020年に提案したオリジナルのコンセンサスアルゴリズム「Catchain」を大幅に改良したバージョン。ブロック生成間隔を400ミリ秒に短縮し、ストリーミングAPIによるリアルタイム更新を実現する新たなコンセンサス機構である。
ファイナリティ(Finality)
ブロックチェーン上のトランザクションが「確定・取り消し不可能」となるまでにかかる時間のこと。ファイナリティが短いほど、決済や取引の即時性が高まる。
バリデーター(Validator)
ブロックチェーンネットワーク上でトランザクションを検証し、新しいブロックを承認・追加する役割を担う参加者(ノード)。その報酬として、ネットワークのネイティブトークンを受け取る仕組みになっている。
ステーキング(Staking)
保有する暗号資産をネットワークに預け入れ(ロックし)、バリデーターとしてネットワークの運営に参加することで報酬を得る仕組み。ステーキング参加者が増えるほど、ネットワークのセキュリティが向上する。
TPS(Transactions Per Second)
1秒あたりに処理できるトランザクション数。ブロックチェーンの処理能力・スループットを示す代表的な指標である。数値が高いほど、多くの取引を高速に処理できることを意味する。
MTONGAロードマップ
パベル・ドゥーロフが掲げたTON改善のための7段階のロードマップ。「Make TON Great Again」の頭文字を取ったもので、今回のCatchain 2.0アップグレードはその第1段階にあたる。次の段階としてトランザクション手数料の6分の1削減が予告されている。
【参考リンク】
TON(The Open Network)公式サイト(外部)
Telegramと統合されたレイヤー1ブロックチェーンの公式サイト。技術ドキュメントやロードマップ、開発者向けリソースを網羅している。
Telegram公式サイト(外部)
世界10億人以上が利用するメッセージングアプリの公式サイト。TONと連携した暗号資産ウォレットやミニアプリの情報を提供している。
CoinMarketCap(Toncoinページ)(外部)
暗号資産の価格・時価総額・取引量などの市場データを提供するプラットフォーム。TONの価格動向をリアルタイムで確認できる。
【参考記事】
TON Is Now Up to 6x Faster: Sub-Second Finality Is Live(外部)
Catchain 2.0によるブロック生成400ms短縮・インフレ率3.6%への上昇など、技術と経済的変化の全容を詳述した公式発表。
Telegram’s Pavel Durov touts TON’s upgraded ‘one second’ transaction speed | The Block(外部)
パベル・ドゥーロフが7ステップのMTONGAロードマップの第1段階と位置付け、次ステップの手数料6分の1削減を予告した記事。
Toncoin Price Under Pressure Despite Biggest Upgrade in Years | BanklessTimes(外部)
ブロック生成時間が約2.5秒から400msへの短縮と明記。技術的飛躍にもかかわらず価格影響が限定的だったと分析している。
TON Rolls Out Sub-Second Transactions on Mainnet Upgrade | CryptoTimes(外部)
QUICプロトコル実装など技術詳細を解説。時価総額31億7000万ドル・総供給量51億5000万TONなどの市場データも収録。
TON Mainnet Moves to Sub-Second Finality Following Catchain 2.0 Deployment | Crypto Economy(外部)
バリデーター通信の改良点を技術的に詳述。マイクロトランザクションやTelegram内ゲームなど想定ユースケースを紹介する。
Pavel Durov says TON upgrade delivers near-instant transaction speed | Blockonomi(外部)
パベル・ドゥーロフの発言を中心に整理した記事。7ステップロードマップの位置付けと次ステップの手数料削減計画を詳しく伝えている。
【編集部後記】
「ブロックチェーンの決済が遅い」という印象を、まだお持ちではないでしょうか。今回のTONのアップグレードは、その常識を静かに書き換えようとしています。10秒が1秒に。その差は、私たちがメッセージを送る感覚とほとんど変わりません。10億人が使うTelegramの中で、お金がメッセージのように動く世界は、もう目の前に来ているのかもしれません。
