AIのゴルフアプリでIBMとThe Mastersがパートナーシップ
IBMとThe Mastersがパートナーシップを結び、AIパワードのMastersデジタル体験とモバイルアプリを開発しました。このプロジェクトでは、IBMのwatsonxプラットフォームを活用してデータの収集、整理、AIモデルの開発、展開、管理が行われています。新たな機能として、Hole InsightsやAIによるナレーションの拡充が導入されました。
The Mastersでは、IBMのwatsonx.dataを使用してトーナメントに関連するデータを整理し、ライブデータと組み合わせています。このプラットフォームは、機械学習アプリケーションを用いてボールの位置の予測データを作成しています。
また、IBMのwatsonx.aiを使用して、ゴルフボールの着地位置を予測するAIモデルやテキスト生成のための生成AIモデルが開発されています。これらのモデルはWatson Machine Learningに展開され、watsonx.governanceを用いて出力の品質評価やモデルの監視、管理が行われています。展開されたモデルの品質やリスクに関するアラート設定も行い、必要に応じて修正が加えられています。
【編集者追記】IBMのwatsonnxが気になったので調査しました。
watsonxは、IBMが開発した次世代のAIおよびデータプラットフォームです。主な特徴は以下の通りです。
- watsonx.ai、watsonx.data、watsonx.governanceの3つのコンポーネントで構成されています。
- watsonx.aiは、データサイエンティストがMLモデルを構築、トレーニング、デプロイするための統合スタジオです。IBMのGraniteシリーズなど幅広い大規模言語モデル(LLM)をサポートしています。
- watsonx.dataは、クラウドやオンプレミスに保存されたデータへのシームレスなアクセスを提供し、AIワークロードのスケーリングを支援するプラットフォームです。
- watsonx.governanceは、AIライフサイクルガバナンスの実装を支援し、AIバイアスの低減やコンプライアンス維持に役立つプラットフォームです。
- ファインチューニング機能により、事前学習済みモデルを新しいデータでトレーニングできます。
- IBMのパートナー企業やクライアントのニーズに合わせてカスタマイズ可能で、機密データでトレーニングできます。
- ESPN、Wind Tre、グラミー賞などですでに活用されています。
- 2024年2月、IBMはAnacondaと提携し、オープンソースのPythonパッケージをwatsonxに組み込みました。
watsonxは、企業のAI活用を加速するために設計された包括的なプラットフォームであり、生成AI、機械学習、ガバナンスなどの機能を統合的に提供しているのが特徴です。
【編集者のつぶやき】
ゴルフファンで、且つAIファンの皆さん、こんにちは!
IBMとマスターズのコラボレーションによる、AIを活用した新しいアプリに期待しています!リアルタイムのデータ分析やAIによる予測、ナレーションの拡充など、まるでコース上にいるかのような臨場感あふれる観戦が可能になるそうです。トーナメントの舞台裏まで見られるようになるかもしれません。AIがもたらす革新的な技術で、ゴルフの楽しみ方が大きく変わるかもしれませんね。
女子プロ版が特に楽しみ。
ニュース解説
ゴルフの伝統ある大会であるマスターズ・トーナメントは、IBMとの25年以上にわたるパートナーシップを通じて、最先端の技術を取り入れています。IBMは、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブがデータを収集、分析、配布し、ファンが試合により近づけるように活用するのを支援してきました。これにより、現地で観戦するファンだけでなく、自宅で観戦するファンも、世界最高峰のゴルフトーナメントの興奮をより深く味わうことができるようになりました。
IBMのwatsonxプラットフォームは、AIライフサイクル全体を管理するために使用されています。このプラットフォームには、watsonx.dataというデータストアが含まれており、オープンなレイクハウスアーキテクチャに基づいて構築されています。これにより、マスターズは、オープンフォーマットと既存のデータベースやツールとの統合を通じて、データが存在する場所での分析とAIのスケーリングが可能になります。
watsonx.dataは、リレーショナルデータベース、オブジェクトストレージ、ドキュメントデータベースなど、様々なデータソースから情報を取得し、ライブフィードからもデータを引き出します。これにより、スコアリング、ボール追跡、ピン位置、プレイヤーのペアリング、スケジューリングなどの情報を取得し、ビデオにコメントを追加してクリップに埋め込むことができます。
watsonx.aiは、伝統的な機械学習モデルだけでなく、生成AIを使用してAIアプリケーションをより迅速に、少ないデータで構築することを可能にします。マスターズでは、ゴルフボールの着地位置を予測するために290のAIモデルが使用されています。また、AIによるナレーションのためには、生成AIモデルが使用されており、watsonx.governanceを通じて出力の品質を評価し、ヘイトスピーチや不適切な内容を排除するためのガードレールが設けられています。
このような技術の導入により、マスターズ・トーナメントは、ファンに対してよりリアルタイムで、より詳細な情報を提供することができるようになりました。例えば、Hole Insights機能では、各プレイヤーの各ホールでのすべてのショットに関する統計と予測が提供され、AIによるナレーションは20,000以上のハイライトクリップに拡張され、スペイン語を含む複数の言語で提供されています。
この技術の導入によるポジティブな側面は、ファンがより深くゴルフの世界に没入できること、そして選手のパフォーマンスやトーナメントの進行をリアルタイムで追跡できることです。一方で、潜在的なリスクとしては、個人情報の保護やデータのセキュリティが挙げられます。また、AIによる自動化が進むことで、人間の解説者の役割が変化する可能性もあります。
規制に与える影響としては、AIの使用に関する透明性や倫理的な基準が求められるようになるかもしれません。将来的には、このようなAI技術が他のスポーツやイベントにも応用され、ファン体験の向上に貢献する可能性があります。長期的な視点では、AIとデータ分析の進化が、スポーツの観戦だけでなく、選手のトレーニングや戦略立案にも大きな影響を与えることが予想されます。
from How the Masters uses watsonx to manage its AI lifecycle.