オーストラリアの健康規制当局は、テレヘルスによる処方箋発行時に人工知能(AI)が使用され、患者と医師が直接会話せずに処方箋が発行される事例について、懸念を表明しています。オーストラリア健康実務者規制機関(Ahpra)の報告によると、2020年7月以降、テレヘルスの相談や処方に関連する550件の通報があり、そのうち30%は患者の適切な評価が行われなかったという苦情でした。Ahpraは、不適切なテレヘルス処方の実践を行った45件のケースを特定し、これらの実践者に対してテレヘルスを通じた処方や診察を行うことを制限する措置を取りました。
消費者健康フォーラムのオーストラリア代表、エリザベス・デヴェニー博士は、医師と患者の間での対話が特に新しい患者の場合に行われるべきだと述べ、政府に対し、このような実践に関する「重大な安全上の懸念」に対処するよう呼びかけました。デヴェニー博士は、オンラインでの非接触処方が通常の安全基準を満たしていないと指摘しました。
Ahpraとオーストラリア医師会のガイドラインは、2023年9月に施行され、「非同期のオンラインチェックボックス処方箋発行や、リアルタイムの患者-医師間の相談がない処方は良い医療慣行ではない」と述べています。しかし、ガイドラインはこの実践を明示的に禁止しているわけではありません。
政府は、健康システムにおけるAIの適切な使用について調査を行い、可能な規制を検討しています。
【ニュース解説】
オーストラリアで、テレヘルスを通じた医療処方において、人工知能(AI)の使用と、医師と患者間の直接的な会話が行われずに処方箋が発行される事例が増加していることに対し、健康規制当局が懸念を表明しています。このような処方方法は、患者の安全を脅かす可能性があるとして、オーストラリア健康実務者規制機関(Ahpra)や消費者健康フォーラムのオーストラリア代表から批判されています。
この問題の根底には、テレヘルスという便利な医療アクセス手段が、その本来の目的から逸脱し、患者と医師の間の実質的なコミュニケーションが欠如する形で利用されていることがあります。特に、新しい患者に対しては、その医療歴や現在服用している薬剤に関する十分な情報がないまま処方が行われることがあり、これが患者の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
Ahpraとオーストラリア医師会が2023年9月に施行したガイドラインでは、非同期のオンラインチェックボックス処方箋発行や、リアルタイムの患者-医師間の相談がない処方は良い医療慣行ではないとされています。しかし、このガイドラインは明示的にこれらの実践を禁止しているわけではなく、リアルタイムの医師-患者間の相談が安全な処方の鍵であると強調しています。
この問題に対する懸念は、テレヘルスが提供する利便性と、患者の安全を確保するための適切な医療慣行のバランスをどのように取るかという、より大きな議論につながります。AIやテクノロジーの進歩は医療アクセスを向上させる大きな可能性を秘めていますが、それらが患者の安全や医療の質を損なうことなく適切に利用されることが重要です。
政府が健康システムにおけるAIの適切な使用について調査し、可能な規制を検討していることは、この問題に対する解決策を見出すための一歩と言えます。将来的には、テクノロジーを活用しつつも、患者と医師の間の実質的なコミュニケーションを確保することが、安全で質の高い医療提供のために不可欠であるという認識が、さらに重要視されることになるでしょう。
from ‘What we’re seeing is not telehealth’: alarm over doctors using AI and prescribing without seeing patients.