Meta Platforms Inc.は、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiといった競合に対抗するため、最新の大規模言語モデル「Llama 4」を基盤とする新しい独立型(スタンドアロン)の対話型AIアプリケーション「Meta AI」を発表した 。このアプリは、従来の「Meta View」アプリ(Ray-Ban Metaスマートグラスのコンパニオンアプリ)を統合する形で、2025年4月29日にiOS、Android、およびウェブ(meta.ai)向けにリリースされた 。
Meta AIは、テキストおよび音声による対話機能に加え、アプリ内で直接画像を生成・編集する機能も統合している 。さらに、Metaの強みであるソーシャルグラフを活用し、連携されたFacebookやInstagramアカウントの情報(プロフィール、いいね、エンゲージメントなど)に基づいて、よりパーソナライズされた応答を提供することを目指している(この機能は当初、米国とカナダで提供)。
・「Discoverフィード」:AIをソーシャルな体験へ Meta AIの最もユニークな特徴の一つが「Discoverフィード」です 。これは、ユーザーが任意で共有したAIとの対話(プロンプトと結果)を、他のユーザーが閲覧し、「いいね」やコメント、共有、さらには「リミックス」して自分のアイデアとして試すことができるソーシャル機能です。従来のAIチャットボットが基本的に個人的なツールであったのに対し、MetaはAIの利用体験そのものをソーシャル化しようとしています。これにより、AIの活用方法がコミュニティを通じて発見・共有され、新たな使い方が生まれる可能性があります。これは、単なる技術力だけでなく、ネットワーク効果をAI利用に適用しようとする試みであり、Metaのソーシャルメディア企業としてのDNAが色濃く反映された戦略です。AIの「使い方」自体がコンテンツとなり、共有されることで、AIの普及と進化が加速するかもしれません。
・究極のパーソナライズか、プライバシーの悪夢か Meta AIは、連携されたFacebookやInstagramアカウントのプロフィール情報、いいね、エンゲージメント履歴などを活用し、「あなたを理解する」パーソナルAIを目指しています 。ユーザーが明示的に「これを覚えておいて」と指示できる記憶機能も搭載されています 。これにより、例えば「私の過去の旅行の投稿とハイキングへの興味に基づいて、週末の旅行先を提案して」といった、極めて個人的な文脈に基づいた応答が可能になるかもしれません。
Meta AIの登場は、AIアシスタント市場における新たな競争軸を生み出すものです。技術的な性能競争に加え、「ソーシャル性」や「深いパーソナライズ」といった要素が、今後のAIの進化と普及において重要な役割を果たす可能性を示唆しています。ユーザーがこれらの新機能をどのように受け入れ、活用していくのか、そしてMetaがプライバシーへの懸念にどう応えていくのか、今後の展開から目が離せません。このアプリが、AIを単なるツールから、私たちの創造性を刺激し、日々の生活に寄り添う真のパートナーへと進化させる一歩となるのか、非常に興味深いところです。
【用語解説】
対話型AIアプリ (Conversational AI App): ユーザーが自然言語で質問や指示を入力すると、AIがテキストや画像などで応答するアプリケーション。ChatGPTなどの例があり、情報検索、文章作成、アイデア出しなど、多岐にわたる用途で活用されている 。
Discover Feed: Meta AIアプリに搭載されたユニークなソーシャル機能。ユーザーが任意で自身のプロンプトやAIの応答(テキスト、画像など)を共有できる。他のユーザーはこれを閲覧し、「いいね」、コメント、共有、さらには「リミックス」して自身のAI対話に活用することが可能。AIの活用方法に関するコミュニティ学習や発見を促進する 。
Full-Duplex Voice (フルデュプレックス音声): Meta AIアプリでデモ提供されている先進的な実験的音声対話技術。従来のターン制(交互に話す)音声アシスタントとは異なり、ユーザーとAIが同時に話したり聞いたりできるため、割り込みや重複発話を含む、より自然な会話の流れを実現する。現在、リアルタイムのウェブ情報アクセス不可などの制限があり、一部地域でのみ利用可能 。