mRNAを利用したがん治療は、免疫系をがん細胞に対して訓練することで実現する可能性があるが、技術的な課題が存在する。MITのスピンアウト企業であるStrand Therapeuticsは、治療性のタンパク質を発現するように設計された新しいクラスのmRNA分子を開発している。
Strand Therapeuticsは、”プログラマブルな薬”と呼ばれるmRNA分子の能力を向上させ、細胞に入った場所で効果的な反応を生成する技術を進化させている。同社は4月に最初の臨床試験を開始予定であり、自己複製型のmRNA分子が腫瘍から免疫信号を発現し、免疫系が腫瘍細胞を攻撃する能力を評価する。この技術は固形腫瘍の治療法の改善にも検討されている。
さらに、StrandはmRNAのプログラミング言語を開発し、特定の組織でタンパク質を発現させることができるようにしている。自己複製などの技術を用いて持続的なタンパク質発現と免疫応答を実現しており、この技術は固形腫瘍だけでなく血液がんの治療にも応用される予定である。将来的にはさまざまな疾患の治療に利用される可能性がある。
【ニュース解説】
mRNA技術は、新型コロナウイルスのワクチン開発で大きな注目を集めましたが、その応用範囲はそれだけに留まりません。特にがん治療の分野では、mRNAを利用して免疫系をがん細胞に対して訓練し、攻撃させる可能性が探求されています。しかし、免疫系をがん細胞だけに焦点を当てさせること、そして治療効果を持続させることは、技術的な課題として残されていました。
この課題に対して、マサチューセッツ工科大学（MIT）のスピンアウト企業であるStrand Therapeuticsが、革新的な解決策を提案しています。同社が開発した新しいクラスのmRNA分子は、体内で遭遇する細胞の種類を感知し、病気の細胞内でのみ治療性タンパク質を発現するよう設計されています。これにより、治療効果を狙った細胞に限定し、健康な細胞への影響を最小限に抑えることが可能になります。
Strand Therapeuticsは、この技術を用いて、自己複製型のmRNA分子が腫瘍から免疫信号を発現し、免疫系が腫瘍細胞を直接攻撃する能力を評価する臨床試験を開始する予定です。このアプローチは、固形腫瘍だけでなく、血液がんの治療にも応用される見込みです。
この技術のポジティブな側面は、より効果的で安全ながん治療法の開発につながる可能性があることです。特に、従来の治療法では効果が限定的だった難治性のがんに対して、新たな治療選択肢を提供することが期待されます。一方で、潜在的なリスクとしては、新しい技術の安全性や長期的な効果に関する不確実性が挙げられます。また、このような高度な治療法の開発と実用化には、厳格な規制基準をクリアする必要があり、そのプロセスは時間とコストがかかる可能性があります。
将来的には、この技術がさまざまな疾患の治療に応用される可能性があります。例えば、自己免疫疾患や特定の種類の肝疾患、腎疾患など、細胞タイプ特異的な治療が必要な病気に対して、効果的な治療法となるかもしれません。このように、mRNA技術の進化は、医療の未来を大きく変える可能性を秘めています。
from Unlocking mRNA’s cancer-fighting potential.
