TRM Labsの最新レポートによると、2023年における暗号資産エコシステム内の不正資金は前年比9%減少しましたが、犯罪者によって取り扱われた暗号資産は約350億ドルに達しました。このレポートは「The Illicit Crypto Economy」と題され、2023年の主要なトレンドを分析しています。
レポートによると、詐欺や詐欺行為が2023年の暗号資産犯罪のほぼ3分の1を占めています。また、規制の圧力が高まる中で、ハッキングや制裁対象となる資金の流れが減少したことが指摘されています。特に、北朝鮮に関連するハッカーによる盗難額は2022年と比較して30%減少しました。
一方で、ダークネット市場での違法薬物の販売は、2022年の13億ドルから2023年には16億ドルへと増加しました。フェンタニルおよびその前駆体の販売量は2022年と比較して150%減少しましたが、ベンダーの売上は前年比で97%以上増加し、1600万ドルから3300万ドルに上昇しました。
TRONブロックチェーン上で発生した不正な暗号資産のボリュームは、2023年に全体の45%を占め、2022年の41%から増加しました。不正な取引の大部分はステーブルコインのテザー(USDT)で行われ、193億ドルに達しました。これにはイーサリアムが24%、ビットコインが18%を占めています。
テロ資金調達に関しては、テザーを受け取ったTRONのユニークアドレス数が2023年に125%増加しました。TRONの代表者は、この報告に対するコメントを即座には提供していません。
【ニュース解説】
暗号資産エコシステムにおける不正資金の流れが減少傾向にあるという報告が、ブロックチェーン分析会社TRM Labsから発表されました。2023年には前年比で9%の減少が見られたものの、犯罪者によって取り扱われた暗号資産の総額は約350億ドルに上るという事実が明らかになりました。このデータは、暗号資産が犯罪に利用されるリスクが依然として存在することを示しています。
このレポートは、詐欺や詐欺行為が暗号資産犯罪の大きな割合を占めていることを指摘しており、規制当局の圧力によってハッキングや制裁対象となる資金の流れが減少したことが影響していると考えられます。北朝鮮に関連するハッカーによる盗難額が減少したことも、この傾向を裏付けています。
しかし、ダークネット市場での違法薬物の販売は増加しており、特にフェンタニルやその前駆体の販売量は減少したものの、ベンダーの売上は大幅に増加しています。これは、違法薬物の需要が高まっていることを示唆しており、暗号資産がその取引に使われている可能性があります。
TRONブロックチェーン上での不正な取引の増加は特に注目に値します。不正な取引のほぼ半分がTRON上で行われており、ステーブルコインのテザーが最も多く使われていることが分かります。これは、特定のブロックチェーンや暗号資産が不正利用の温床になり得ることを示しており、規制や監視の強化が必要であることを示唆しています。
テロ資金調達におけるTRONアドレスの増加も懸念される点です。テザーを受け取るアドレスが大幅に増加していることは、テロ組織が暗号資産を資金源として利用している可能性があることを意味しています。
このような状況は、暗号資産の規制や監視体制の強化を求める声を高めることになるでしょう。また、暗号資産業界におけるコンプライアンスの重要性が増しており、取引所やウォレットサービスは不正行為の検出と防止に向けた技術的な対策を強化する必要があります。長期的には、このような対策が暗号資産の健全な成長と広範な採用に寄与することが期待されますが、短期的には規制の厳格化による市場への影響も考慮する必要があります。
from Illicit Funds in Crypto Ecosystem Shrank 9% Last Year, Yet Criminals Still Handled Nearly $35B: TRM Labs.