米国司法省(DOJ)は、Tornado Cashの開発者であるRoman Stormが提出した刑事訴追の却下を求める動議に対して反論しました。DOJは、Tornado Cashが資金送金業務を行っていたと主張し、その証拠が訴追を支持すると述べています。この反論は、StormがTornado Cashの運営に関して提出した事実の解釈に対するもので、DOJはこれらが初期段階の動議に適した議論ではなく、陪審による判断が必要な事実であると指摘しています。
DOJはStormともう一人の開発者Roman Semenovを、資金洗浄を共謀し、無許可の資金送金業者として運営し、Tornado Cashを作成・運営することで制裁法に違反したとして訴追しています。Tornado Cashは、取引を匿名化するために設計された暗号ミキシングサービスで、北朝鮮のLazarus Groupを含む犯罪組織が資金洗浄に利用していたと米国当局は主張しています。
Stormの弁護士は3月末に起訴の却下を求める動議を提出し、Tornado Cashは預託型のミキシングサービスではなく、「金融機関」の定義に当てはまらないと主張しました。また、Stormはサービスをコントロールすることができず、Lazarusグループなどの利用を阻止することはできなかったとしています。
DOJは、Tornado Cashが2019年にミキサーとして発表され、ウェブサイト、ユーザーインターフェース、スマートコントラクトの組み合わせ、および「リレーヤー」のネットワークを含むサービスであるとして、防御側のTornado Cashの特徴付けに異議を唱えました。また、DOJは、Stormと共同創設者が少なくともDOJがその起訴文書で参照している期間(2019年から2022年8月)において、ミキサーをコントロールしていたと主張しています。
Stormは今年9月に裁判にかけられる予定で、Semenovは現在逃亡中です。
【ニュース解説】
米国司法省(DOJ)は、暗号通貨ミキシングサービス「Tornado Cash」の開発者であるRoman Stormに対する刑事訴追の却下を求める動議に反対する新たな提出書類を公開しました。DOJは、Tornado Cashが資金送金業務を行っていたと主張し、その証拠が訴追を支持すると述べています。これに対し、Storm側はTornado Cashが「金融機関」の定義に当てはまらず、Storm自身がサービスをコントロールすることができなかったと主張していますが、DOJはこれらの主張に異議を唱えています。
Tornado Cashは、ユーザーの取引を匿名化することを目的としたサービスで、スマートコントラクトやリレーヤーのネットワークを利用しています。しかし、米国当局は、このサービスが北朝鮮のLazarus Groupを含む犯罪組織による資金洗浄に利用されていたと主張しており、Stormともう一人の開発者Roman Semenovを資金洗浄、無許可の資金送金業者の運営、制裁法違反の共謀で訴追しています。
このニュースは、暗号通貨の匿名性と法的規制の間の緊張関係を浮き彫りにしています。暗号通貨の匿名性はプライバシー保護の観点から重要視される一方で、違法行為の防止という観点からは規制が求められることがあります。このようなサービスがどのように規制されるべきか、また開発者がどの程度の責任を負うべきかについての議論が、今後も続くことが予想されます。
また、この事件は、暗号通貨業界における技術開発者の法的責任に関する重要な先例を設定する可能性があります。開発者が作成した技術が違法行為に利用された場合、その開発者がどのような責任を負うかについての法的な解釈が問われています。これにより、技術開発者は自身のプロジェクトが法的なリスクをどのように管理するかを慎重に考慮する必要があるかもしれません。
さらに、この訴訟は、暗号通貨業界における規制の進展にも影響を与える可能性があります。規制当局は、暗号通貨の匿名性を高める技術が犯罪に悪用されることを防ぐために、より厳格な規制を導入するかもしれません。これは、技術革新と法的枠組みのバランスを取る上での重要な課題となります。
最終的に、この事件は、暗号通貨の将来におけるプライバシーとセキュリティのバランス、開発者の責任、そして規制の形成において、長期的な影響を持つ可能性があります。
from DOJ Disputes Roman Storm's Characterization of Tornado Cash Operations in New Filing.