Ark Investがイーサリアム(ETH)のスポットETF(上場投資信託)の計画から撤退したことが明らかになりました。この撤退は、暗号通貨ETFにおける低手数料を巡る激しい競争が原因であると専門家は分析しています。Ark Investは、2024年9月にスポットイーサリアムETFの設立許可を申請した最初の企業でしたが、その後、手数料戦争の激化により、計画から手を引くことを決定しました。
Ark InvestのCEO、Cathie Woodは、CoinDeskのConsensusカンファレンスで、同社が今年初めに立ち上げたスポットビットコインETFが、投資家に対して非常に低い手数料(0.21%)を請求しているため、利益を生んでいないと述べました。これは他のビットコインETF発行者が請求する手数料と同等であり、非暗号通貨ETFが通常請求する手数料よりもかなり低いものです。
ETF発行者は、ファンドの管理に対する報酬として投資家から手数料を徴収します。多くの投資家は、手数料がリターンを減少させるため、この手数料を最小限に抑えようとします。スポットビットコインETFの発行を目指す競争では、Grayscaleが競合他社よりもはるかに高い手数料(1.5%)を設定し、その結果、数十億ドルがファンドから引き出され、資産の面で早期にリードしていたファンドがBlackRockにその地位を譲ることになりました。
Ark Investは、低手数料を基に撤退を決定したと考えられています。特にイーサリアムETFに対する需要がビットコインETFほど高くないと予想される中で、両社にとって十分な手数料収入が見込めなかった可能性があります。Ark Investの撤退は、同社が業界で強固な地位を築いており、複数の他のイーサリアム関連ファンドを提供していることから、驚きの動きと受け止められています。
【ニュース解説】
Ark InvestがイーサリアムのスポットETF計画から撤退した背景には、暗号通貨ETF市場における手数料競争の激化があると見られています。ETFは、株式や債券、商品などのバスケットを追跡する投資信託であり、上場しているため、株式のように取引所で売買が可能です。スポットETFは、実際の資産(この場合はイーサリアム)を直接保有し、その価値を追跡する商品です。
ETF発行者は、ファンドの運用にかかるコストをカバーするために、投資家から手数料を徴収します。しかし、この手数料が投資リターンに直接影響を与えるため、投資家はできるだけ低い手数料の商品を好む傾向にあります。その結果、市場における競争は手数料を下げる方向に進み、特に暗号通貨ETFにおいては、その競争が非常に激しい状況になっています。
Ark InvestがスポットビットコインETFを立ち上げた際には、業界平均と同等の低い手数料を設定しましたが、それによって同社は利益を上げることができなかったとCathie Woodは述べています。このような状況の中で、イーサリアムETFにおいても同様の低手数料を設定することは、さらなる収益圧迫を意味する可能性があり、Ark Investはビジネス上の判断として撤退を決定したと考えられます。
この動きは、暗号通貨ETF市場における手数料戦争の影響を示しています。低手数料は投資家にとって魅力的ですが、発行者にとっては収益性を確保する上での課題となります。また、手数料が低いことで市場参入のハードルが高くなり、新規参入者が市場に参入することを躊躇させる可能性もあります。
長期的な視点では、手数料競争が激化することで、より効率的でコスト効果の高いETF市場が形成される可能性があります。しかし、一方で、過度な手数料競争はETF発行者の収益性を損ない、市場の健全な成長を妨げるリスクもはらんでいます。規制当局は、投資家保護と市場の安定性を確保するために、このような競争の動向を注視する必要があるでしょう。
Ark Investの撤退は、暗号通貨ETF市場の成熟度と競争の激しさを示す出来事として、業界における重要な指標となります。また、将来的には、手数料だけでなく、サービスの質やイノベーションによる差別化が、ETF発行者の成功の鍵となる可能性があります。
from Cathie Wood's Ether ETF Pullback Is Likely Due to Fee War.