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Arup社ディープフェイク詐欺事件から学ぶ会計事務所のサイバーセキュリティ強化策

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Arup社ディープフェイク詐欺事件から学ぶ会計事務所のサイバーセキュリティ強化策 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年4月15日、Dark Readingは会計事務所におけるサイバーセキュリティの重要性に関する記事を掲載した。記事によると、確定申告期間中のストレス、テクノロジーの乱立、緩いコミュニケーションがサイバー犯罪者に付け込まれる要因となっている。

2024年1月、英国のエンジニアリング企業Arupの香港オフィスの従業員がディープフェイク技術を用いた偽のビデオ通話に騙され、犯罪者に2億香港ドル(約2,500万米ドル、約37億円)を奪われる事件が発生した。従業員は当初疑いを持ったものの、英国を拠点とするCFOや他の同僚を装った偽のビデオ会議に参加し、15回の送金を5つの香港の銀行口座に行った後、本社に確認して詐欺が発覚した。

Deep InstinctのCIOであり、以前Citiのグローバルインフラ防衛責任者を務めていたCarl Froggett氏は、この事件は特に会計チームにとって警鐘となるべきだと指摘している。会計専門家は機密性の高いデータを大量に扱うため、サイバー犯罪者の格好のターゲットになっているという。

米国の会計事務所Dark Horse CPAsのCTOであるChris Davis氏によれば、脆弱性はSaaS(Software-as-a-Service)の乱立から始まる。特に小規模な事務所や個人開業の会計士は、フェデレーテッドID管理や適切なアクセス制御などの基本的なIT基盤が不足していることが多い。

Davis氏は、VPN、フルディスク暗号化、モバイルデバイス管理、多要素認証の強制などの基本的な対策を推奨している。一方、Froggett氏は、セキュリティはエンドポイントだけでなく、文書の移動方法にも注意を払うべきだと指摘している。

サイバーセキュリティ対策の重要性は数字からも明らかである。Sophosのレポートによると、2024年には金融サービス業界の65%がランサムウェア攻撃の被害に遭っており、ランサムウェア攻撃からの回復コストは平均273万ドル(約4億円)に達している。

また、会計業界のサイバーセキュリティ対策の現状も懸念されている。調査によると、22%の会計事務所がバックアップのテストを一度も行っておらず、同じく22%が情報セキュリティポリシーやサイバーインシデント対応計画などの重要文書を持っていない。さらに、43%が従業員に定期的なサイバーセキュリティトレーニングを提供していない。

専門家は、セキュリティはトップダウンで優先事項とし、最小権限アクセスの原則を遵守すべきだと強調している。また、セキュリティ意識トレーニングは繁忙期直前のパニック対応ではなく、年間を通じた戦略の一部であるべきだとしている。

from:Accounting Firms Can’t Skimp on Cybersecurity

【編集部解説】

今回のニュースは、会計事務所におけるサイバーセキュリティの重要性を訴える内容となっていますが、背景にある事例や最新の脅威について、さらに詳しく解説していきましょう。

Arupディープフェイク詐欺事件の詳細

記事で触れられているArup社の事件は、2024年1月に香港で発生したものです。被害額は約2億香港ドル(約2,500万米ドル、約37億円)に上り、世界最大級のディープフェイク詐欺事件の一つとして記録されています。

この事件では、Arupの香港オフィスの財務チームのメンバーが、英国を拠点とするCFO(最高財務責任者)を装った人物から「機密取引」に関するメッセージを受け取りました。その後、デジタルで複製されたCFOや他の同僚を含む偽のビデオ会議に参加し、騙されて5つの香港の銀行口座に15回の送金を行いました。詐欺が発覚するまでに、すでに約2億香港ドル(約2,500万米ドル)が流出していたのです。

Arupのグローバル最高情報責任者であるRob Greig氏は、「世界中の多くの企業と同様に、当社の業務は請求書詐欺、フィッシング詐欺、WhatsApp音声なりすまし、ディープフェイクなどの定期的な攻撃の対象となっています。最近数ヶ月間で、これらの攻撃の数と洗練度が急激に上昇していることを目の当たりにしています」と述べています。

Arupは、「当社の財務安定性や事業運営には影響がなく、内部システムも侵害されていません」と発表していますが、事件は現在も調査中であるため詳細は明らかにされていません。

ディープフェイク詐欺の急増と企業への影響

ディープフェイク詐欺は単にArup社だけの問題ではありません。金融ソフトウェアプロバイダーのMediusが実施した調査によると、米国と英国の企業の半数以上が「ディープフェイク」技術を利用した金融詐欺の標的となっており、43%がそのような攻撃の被害に遭っています。

調査対象となった1,533人の米国と英国の財務専門家のうち、85%がこのような詐欺を組織の財務セキュリティに対する「存在的」脅威と見なしています。ディープフェイクは、AIによって操作された画像、動画、または音声記録であり、偽物でありながら説得力があるという特徴を持っています。

広告代理店のWPPも最近ディープフェイク詐欺の標的になりましたが、こちらは未遂に終わっています。また、暗号通貨取引所Binanceの幹部も2年前に詐欺師が作成した「ホログラム」によってプロジェクトチームへのアクセスを得ようとする試みがあったことを明らかにしています。

会計事務所が特に標的となる理由

会計事務所が特にサイバー攻撃の標的となりやすい理由はいくつかあります。

まず、会計事務所は顧客の機密性の高い財務データを大量に扱っています。これには個人情報や企業の財務状況など、犯罪者にとって非常に価値のある情報が含まれています。社会保障番号、税務申告書、給与データ、企業の財務情報など、会計事務所が保持する情報は、サイバー犯罪者がすぐに悪用したり、ブラックマーケットで高値で売却したりできるものです。

次に、確定申告期限などの繁忙期には、会計専門家はプレッシャーの中で業務を行うため、通常よりも注意力が散漫になりがちです。サイバー犯罪者はこの時期を狙って攻撃を仕掛けることが多く、特に「確定申告の期限直前や監査シーズンの繁忙期」に攻撃することで、被害者が身代金を支払う可能性を高めています。

さらに、記事で指摘されているように、多くの会計事務所では複数のSaaSアプリケーションを使用しており、それぞれが独自のセキュリティプロトコルを持っています。このテクノロジーの乱立が混乱を招き、セキュリティの脆弱性を生み出しています。

特に小規模な事務所や個人開業の会計士は、適切なIT基盤が不足していることが多く、フェデレーテッドID管理や適切なアクセス制御などの基本的なセキュリティ対策が十分に実施されていないケースが見られます。

AIの進化がもたらす新たな脅威

2025年には、AIの深層学習能力がハッカーにより複雑な攻撃を開発する機会を与えているため、会計事務所は警戒が必要です。

サイバーセキュリティ攻撃はより超個人化され、悪意のある攻撃者がソーシャルメディアアカウントを調査して、カスタマイズされたスピアフィッシングメールを作成できるようになっています。AIを搭載したボットが、会計事務所のブランド、ロゴ、メッセージングを盗用して、洗練された説得力のあるキャンペーンを顧客に対して展開することが可能になっているのです。

同様に、AIで生成されたディープフェイクは、悪意のある意図を持って、会計事務所の幹部を画像、ビデオ、音声録音を通じて説得力を持って偽装することができます。これには、誤解を招く情報の伝達や、顧客を標的にしたゆすりなどが含まれます。

生成AIによる詐欺損失は、大手会計事務所Deloitteの2023年5月の報告書によると、2027年までに米国で400億ドルに達する可能性があります。「ダークウェブ上には、20ドルから数千ドルの詐欺ソフトウェアを販売する完全なコテージ産業がすでに存在しています」と報告書は述べています。「この悪意のあるソフトウェアの民主化により、現在の多くの不正防止ツールの効果が低下しています」。

企業が取るべき対策

専門家は、ディープフェイクによる脅威の高まりを受けて、企業が以下の対策を講じるよう促しています:

1. 教育:組織内のすべての人がディープフェイクとは何か、それを見分ける方法、標的にされた場合に取るべき手順について基本的な理解を持つべきです。企業はこれに加えて、上級幹部やマネージャー、およびリスクの高い部門の従業員向けの専門的なトレーニングを検討すべきでしょう。

2. プロセス:企業は、従業員が不注意に詐欺師に支払いを行うリスクを最小限に抑えるために、例えば電信送金には少なくとも2人の承認を必要とするなど、チェック機能とバランス機能を整備する必要があります。また、ディープフェイク攻撃が成功した場合の対応方法も準備しておく必要があります。

3. テクノロジー:AIや機械学習などのツールは、多段階の検証プロセスと職務分離と組み合わせることで、企業が異常な取引を発見するのに役立ちます。

4. ゼロトラストフレームワークの採用:継続的な検証を確保し、機密システムやデータへのアクセスを制限するゼロトラスト原則を採用することが推奨されています。

5. エンドポイントセキュリティの強化:リモートワークやハイブリッドワークモデルが定着する中、エンドポイント(ワークステーションやモバイルデバイス)の保護が重要です。多要素認証(MFA)の実装や、すべてのデバイスの定期的なパッチ適用と更新が必要です。

6. 包括的なWISP(情報セキュリティプログラム)の維持:WISPは規制要件であるだけでなく、セキュリティ戦略を推進するものであるべきです。適切に作成されたWISPは、会社のセキュリティ対策を正確に反映し、全スタッフにセキュリティを意識した文化を醸成します。

今後の展望と私たちの対応

ディープフェイク技術の進化により、詐欺の検出はますます困難になっていますが、いくつかの方法で偽物を見分けることができます。例えば、ビデオ通話中に相手に頭を動かしてもらったり、異なる光源を使用してもらったりすることで、ディープフェイクを暴露できる可能性があります。少し気まずいやり取りになるかもしれませんが、多額の資金や機密データを失うリスクを考えれば、その努力は価値があるでしょう。

このような状況の中で、私たち一人ひとりがセキュリティ意識を高め、組織全体でサイバーセキュリティを優先事項として位置づけることが重要です。特に会計事務所は、顧客の機密データを守るために、最新のセキュリティ対策を導入し、従業員に定期的なトレーニングを提供する必要があります。

ディープフェイク技術は今後も進化し続けるでしょうが、それに対抗するためのセキュリティ技術も同様に発展していくことが期待されます。重要なのは、技術的な対策だけでなく、「信頼するが検証する」という姿勢を組織文化として根付かせることです。

最後に、サイバーセキュリティは単なるIT部門の問題ではなく、組織全体の責任であることを忘れてはなりません。トップダウンでセキュリティを優先事項とし、最小権限アクセスの原則を遵守することで、サイバー攻撃のリスクを大幅に軽減することができるでしょう。

【用語解説】

ディープフェイク(Deepfake)
AIを使って作成された偽の画像、音声、動画のこと。「ディープラーニング」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた言葉で、実在の人物の顔や声を別の映像や音声に合成する技術を指す。

SaaS(Software as a Service)
インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービス形態。ユーザーはソフトウェアをインストールせず、ウェブブラウザなどを通じて利用できる。

フェデレーテッドID管理
複数のシステムやサービス間でユーザー認証情報を共有する仕組み。一度のログインで複数のサービスにアクセスできるようにする技術。

シングルサインオン(SSO)
一度の認証で複数のシステムやアプリケーションにアクセスできる認証方式。

SCIM(System for Cross-domain Identity Management)
異なるドメイン間でユーザーIDを管理するためのシステム。複数のクラウドサービス間でユーザー情報を同期させる標準規格。

最小権限アクセスの原則
ユーザーに与えるアクセス権限を、業務に必要な最小限に制限する情報セキュリティの基本原則。

WISP(Written Information Security Program)
情報セキュリティプログラム。企業のセキュリティ対策を文書化したもので、規制要件を満たすだけでなく、セキュリティ戦略を推進するものとして機能する。

【参考リンク】

Arup(アラップ)公式サイト(外部)
国際的なエンジニアリング・コンサルティング企業Arupの日本語公式サイト。建築、土木、エネルギー関連の技術設計やコンサルティングサービスを紹介。

Deep Instinct(ディープインスティンクト)公式サイト(外部)
AIベースのディープラーニングを活用したサイバーセキュリティソリューションを提供する企業の公式サイト。ゼロデイ攻撃対策などの製品情報を掲載。

Dark Horse CPAs公式サイト(外部)
米国の会計事務所Dark Horse CPAsの公式サイト。小規模企業や個人向けの税務、会計、CFOサービスについての情報を提供。

【編集部後記】

皆さんの会社や事務所では、ディープフェイク詐欺への対策は整っていますか?「自分たちには関係ない」と思われがちですが、Arup社のような大企業でさえ2,500万ドル(約37億円)もの被害に遭っているのが現実です。普段何気なく使っているビデオ通話やメールのやり取りが、実は最も狙われやすい入口かもしれません。明日の業務で、同僚や取引先とのコミュニケーションを「信頼するが検証する」視点で見直してみてはいかがでしょうか。皆さんのセキュリティ体験や疑問があれば、ぜひSNSでシェアしてください。

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FortinetのSSL VPN・管理システムが連続標的、GreyNoise研究で6週間前兆パターン確認

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FortinetのSSL VPN・管理システムが連続標的、GreyNoise研究で6週間前兆パターン確認 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年8月3日、GreyNoiseはFortinet SSL VPNデバイスへのbrute-force(総当たり攻撃)トラフィックを780超のユニークIPアドレスから観測した。

過去24時間でも56件を確認し、米国、カナダ、ロシア、オランダ発で、標的は米国、香港、ブラジル、スペイン、日本だった。8月5日以前は単一のTCPシグネチャによるFortiOSプロファイルが対象で、以降は異なるシグネチャでFortiManagerを標的とした。

6月には米国Pilot Fiber Inc.管理の住宅ISPブロック内FortiGate機器に関連するクライアントシグネチャが確認された。こうした活動のスパイク後6週間以内に関連CVEが開示される傾向があるという。

From: 文献リンクFortinet SSL VPNs Hit by Global Brute-Force Wave Before Attackers Shift to FortiManager

【編集部解説】

本件は、Fortinetのエッジ系プロダクトを狙ったbrute-force(総当たり)活動が、短い期間でプロファイル横断的に変化した点に本質があります。

8月3日にFortiOS(SSL VPN)向けのトラフィックが顕著化し、8月5日以降はFortiManager(FGFM)プロファイルへと焦点が移ったことは、攻撃側のツールチェーンや運用基盤が柔軟にpivot(方向転換)可能であることを示しています。この「面から点へ、そして別の面へ」の切替は、単発の不審トラフィックではなく、攻撃指向性の強い連続した作戦行動として理解すべきです。

技術的には、GreyNoiseが用いるJA4+ベースのシグネチャやTCP/クライアント指紋の組合せ(meta signature(メタシグネチャ))が、波状的な2クラスタを識別し、ターゲットがFortiOSからFortiManagerへ移る様子を可視化しています。この観測により、同一もしくは共有基盤のツールが、エッジ向けの複数サービスに対して順次当たりを取りに行く「横持ち的スキャン/試行」を行っている可能性が高まります。

一見すると「パスワード当て」にすぎませんが、GreyNoiseのEarly Warning Signals(早期警告)研究では、こうしたスパイクの80%が6週間以内の新規CVE開示に先行する相関を示しており、特にVPNやファイアウォール、リモートアクセスなどエンタープライズのエッジ領域に限定的に観測されています。つまり、この種の活動は「ゼロデイの前哨(前振り)」や「攻撃者の在庫作成(inventorying)」として機能する局面があり、防御側にとっては事前に可動防御を高めるシグナルになり得ます。

FortiManagerへのシフトは特に重要な意味を持ちます。FortiManagerはポリシー配布や集中管理の要であり、資格情報や到達性の失陥は多拠点に連鎖するリスクを伴います。実際、Mandiantの過去調査では、FortiManager侵害により50超のデバイスから設定データが窃取された事例もあり、今回の標的変更は単なる攻撃手法の変化ではなく、攻撃者の戦略的高度化を示唆しています。

インフラ的観点では、6月の履歴に住宅系ISP(Pilot Fiber Inc.)ブロック内のFortiGateへ解決するクライアントシグネチャが見つかっており、residential proxy(住宅用プロキシ)か、在宅環境でのツール検証の可能性が示唆されています。この所見はアトリビューションを複雑化しますが、防御実務としては「レジデンシャル経路からの低ノイズ・分散的試行」を前提に、単純なASN/ホスティング除外だけに依存しない検知・遮断の工夫が必要であることを意味します。

実務上は、SSO/多要素認証の強制、管理プレーンの到達制限、API/管理チャネルのIP許可制、段階的レート制御、ログのJA4+シグネチャ相関監視、そして異常事前スパイク時の一時的ブロックリスト適用(GreyNoiseの動的リスト活用など)を組み合わせるべき局面です。規制・ガバナンス面では、「公開CVE後に動く」から「スパイク検知で先に動く」への転換がポイントであり、6週間のクリティカルウィンドウ(six-week critical window(6週間の重要期間))という定量的根拠は、経営・購買・運用における前広のリソース投入の合理化に寄与します。

【用語解説】

brute-force(総当たり攻撃)
認証情報を機械的に試行してログイン成功を目指す手法。

FortiOS
FortinetのFortiGateで動作するネットワーク/セキュリティ向けOS。

FortiManager(FGFM)
Fortinet機器群を集中管理する管理プレーン製品およびプロトコル(FGFM)。

TCPシグネチャ
通信のパケット特性から識別される固有パターンで、ツールや挙動の類似性を把握するために用いられる。

クライアントシグネチャ
接続元クライアントの挙動指紋で、TCPシグネチャと組み合わせてメタシグネチャとなる。

meta signature(メタシグネチャ)
TCPシグネチャとクライアントシグネチャを組み合わせた高精度な識別指標。

residential proxy(住宅用プロキシ)
住宅回線を経由して実IPを秘匿するプロキシ形態。

CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)
公知の脆弱性識別子で、ベンダー横断で共有される番号体系。

Early Warning Signals(早期警告シグナル)
GreyNoiseが提唱する、攻撃スパイクが新規CVE公開に先行する傾向に関する研究フレーム。

credential stuffing(クレデンシャルスタッフィング)
流出済み認証情報の使い回し試行攻撃。

JA4+
GreyNoiseが開発したネットワーク指紋技術で、TLS接続の詳細特徴を識別する手法。

【参考リンク】

Fortinet(外部)
FortiGateやFortiManagerなどのネットワーク/セキュリティ製品を提供する企業

FortiManager(外部)
Fortinet機器のポリシー配布や運用を集中管理するツール群

GreyNoise(外部)
インターネットの背景ノイズ/攻撃トラフィックを観測・タグ化し、脅威インテリジェンスを提供

GreyNoise Fortinet SSL VPNブルートフォース研究(外部)
2025年8月3日の780超IPスパイクやFortiManagerへのシフトを技術的に解説

GreyNoise Early Warning Signals研究(外部)
攻撃スパイクの80%が6週間以内のCVE公開に先行した傾向を示す研究

【参考記事】

Coordinated Brute Force Campaign Targets Fortinet SSL VPN(外部)
2025年8月3日の780超IP観測やFortiManagerシフトの一次情報を詳説

Early Warning Signals: When Attacker Activity Precedes New Vulnerabilities(外部)
216スパイクの80%が6週間以内のCVE公開に先行したとする定量結果を提示

Fortinet SSL VPNs targeted in renewed brute-force campaign(外部)
8月3日のスパイクとFortiManagerピボットを整理し、credential-stuffing攻撃の特徴も言及

GreyNoise Intelligence Releases New Research(外部)
80%の先行相関や6週間のクリティカルウィンドウをプレス発表として要約

【編集部後記】

今回の事案で印象的だったのは、攻撃者の「学習する姿勢」です。8月3日にSSL VPNを試し、8月5日以降はFortiManagerに焦点を移す——この柔軟性は、私たち防御側も見習うべき点かもしれません。

特に注目したいのは、住宅系IPからの攻撃の痕跡です。かつては「怪しいトラフィックは海外のホスティング業者から」という固定観念がありましたが、今や身近な回線経由での攻撃が現実となっています。皆さんの組織では、こうした「見た目は普通」のアクセスをどう見分けていますか。

GreyNoiseの「6週間前兆」研究は、サイバーセキュリティ業界に新たな時間軸をもたらしました。従来の「脆弱性が公開されてから対応」ではなく、「攻撃の兆候を察知して先手を打つ」アプローチは、まさに未来志向の防御戦略です。

読者の皆さんも、職場のログを眺める際に「これって何かの前兆かも?」という視点を持ってみてください。きっと新しい発見があるはずです。次回も、技術の最前線から皆さんに有益な情報をお届けします。

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Curly COMradesがNGEN COMハイジャックでMucorAgent展開、ジョージア・モルドバ狙うサイバースパイ活動が浮上

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Curly COMradesがNGEN COMハイジャックでMucorAgent展開、ジョージア・モルドバ狙うサイバースパイ活動が浮上 - innovaTopia - (イノベトピア)

未報告の脅威アクターCurly COMrades(カーリー・コムレイズ)が、ジョージアの司法・政府機関及びモルドバのエネルギー配電企業を標的にサイバースパイ活動を行っている。

Bitdefender(ビットディフェンダー)は2024年半ばから追跡し、NTDSデータベースやLSASSメモリから認証情報を窃取しようとしたと報告した。攻撃はcurl(カール)とCOM(コンポーネントオブジェクトモデル)ハイジャックを多用し、MucorAgent(ミューコルエージェント)バックドアがNgen(ネイティブイメージジェネレーター)のCLSIDを悪用して永続化を実現した。

Resocks(リソックス)、SSH、Stunnel(スタネル)、SOCKS5(ソックスファイブ)、CurlCat(カールキャット)、RuRat(ルーラット)、Mimikatz(ミミカッツ)などのツールが使用された。
※このCurly COMradesは2023年11月以降活動が確認されている。

From: 文献リンクNew ‘Curly COMrades’ APT Using NGEN COM Hijacking in Georgia, Moldova Attacks

【編集部解説】

本件のキモは、NGEN COMハイジャックという「Windowsの最適化プロセスを悪用した低ノイズの永続化」と、「curl.exe中心のC2・流出設計」によって、監視をすり抜けながら長期潜伏を成立させている点です。ジョージアの司法・政府機関、モルドバのエネルギー配電企業という選好は、オペレーションがロシアの地政学的利益と整合するとの評価を裏づけます。

NGEN(Native Image Generator)のタスクは通常無効に見える一方、アイドル時や新規アプリ導入時など不定期にOS側で有効化され実行されます。Curly COMradesはCLSIDハイジャックでこの挙動にぶら下がり、SYSTEM権限下でMucorAgentを再起動させる導線を確保しています。この「予測不能性」は検知回避に寄与する反面、攻撃側も補助トリガーを併設している可能性が高いという含みも示されます。

MucorAgentは三段構成の.NETバックドアで、AMSI回避を挟みつつ暗号化PowerShellを実行し、出力をPNGに偽装してcurl.exeで外送します。ペイロードをindex.pngやicon.pngとして特定パスに置く運用は、ファイルベース監視の盲点を突く「無害化」手法の典型です。さらに、正規だが侵害済みのウェブサイトを中継に使うことで、トラフィック信頼モデルを逆手に取っています。

初期侵入は未特定ながら、内部横展開ではResocks、SSH、Stunnel、カスタムSOCKS5、そしてCurlCatによるlibcurlベースの難読化通信が併用され、認証情報取得ではNTDS抽出やLSASSダンプ、Mimikatz、PowerShellのAD列挙などが確認されています。この「既存ツール+LOLBin(Living Off the Land)」志向は、ゼロデイよりもステルス性と柔軟性を重視する近年の国家系スパイ活動の潮流と一致します。

エンタープライズにとってのインパクトは三層です。第一に、EPP/EDRが苦手とする「正規プロセス連携+不定期タスク」を突く永続化の成立で、アラートボリュームを上げずに居座られます。第二に、アイデンティティ基盤直撃(NTDS・LSASS)により、ネットワーク全域の信頼がドミノ的に崩され得ます。第三に、正規サイト中継とPNG偽装はDLPやプロキシのポリシー回避余地を広げ、出口監視の閾値設計を再考させます。

一方で、防御側にも手立てはあります。NGEN関連CLSIDの改変監視とスケジュールタスクの異常生成検出、curl.exeのネットワーク挙動(特に画像拡張子とPOST/PUTの組合せ)のプロファイリング、公開済みフォルダ(例:Users\Public\Documents)でのステージング検知は、実装難度に対して効果が見込めます。加えて、ドメインコントローラー周辺のボリュームシャドウコピー操作とLSASSアクセスの厳格監査は、アイデンティティ侵害の初期兆候として重要です。

規制・ガバナンス面では、重要インフラおよび公共部門に対し、「正規プロセス濫用」を前提にした行動ベース検知の義務化、アイデンティティ・レジリエンス(Tiering、PAW、LSA保護、CredGuard等)のベンチマーク適合、正規サイト経由の中継対策としてのDNS/HTTPS可視化要件が論点になります。地政学的背景を踏まえると、域内サプライチェーンの監視共通フレーム策定も急務です。

最後に、この事案は「検知されにくい仕組み自体」を足場にする設計思想が主流化していることを示します。NGENのようなメンテナンス機構の悪用、画像ファイル偽装、正規サイト中継—いずれも”当たり前の正常”に寄り添うため、シグネチャ一発での検知は難しくなります。だからこそ、攻撃パイプライン全体の前提(どのプロセスが、いつ、何を、どこへ)をモデル化し、逸脱を検出する「正常性の定義のアップデート」が企業防御の本丸になります。

【用語解説】

APT(Advanced Persistent Threat)
政治・産業スパイを目的に長期潜伏と継続的侵入を行う攻撃者像の総称。

COM(Component Object Model)
Windowsでオブジェクトを再利用・連携する仕組みで、CLSIDという識別子で管理される。

CLSID(Class Identifier)
COMクラスを一意に識別するGUIDで、レジストリ改変によりハイジャック悪用され得る。

NGEN(Native Image Generator)
.NETの事前コンパイル機構で、OSのアイドル等で不定期にタスクが実行される。

NGEN COMハイジャック
NGEN関連CLSIDを差し替え、SYSTEM権限で任意コード実行や永続化を実現する手口。

MucorAgent
.NET製の3段階インプラントで、AES暗号化PowerShellを実行し結果を外送するバックドア。

LSASSダンプ
認証情報を含むLSASSプロセスのメモリを抽出し、資格情報を窃取する技術。

NTDS(NTDS.dit)
Active Directoryのユーザーハッシュ等を格納するデータベースで、ドメイン侵害の主要標的。

LOLBins(Living off the Land Binaries)
OSや正規ツール(例:curl)を悪用し痕跡を目立たなくする手法。

CurlCat
libcurlを用い、侵害済み正規サイトを経由してHTTPSでC2と双方向通信するツール。

侵害済み正規サイト中継
乗っ取られた一般サイトをトラフィック中継に使い、検知回避と秘匿化を図る戦術。

【参考リンク】

Curly COMrades: A New Threat Actor Targeting Geopolitical Hotbeds(外部)
BitdefenderがCurly COMradesとMucorAgent、NGEN COMハイジャックの手口を技術詳細とともに解説する公式記事

Stunnel(公式)(外部)
TLSトンネリングを提供するオープンソースのプロキシで、平文プロトコルの暗号化ラッピングに用いられる

Microsoft Docs: CLSID Key(公式)(外部)
WindowsのCOMにおけるCLSIDの役割とレジストリ構造を解説する公式ドキュメント

Microsoft Docs: ngen.exe(公式)(外部)
NGENの目的、動作タイミング、最適化の仕組みを説明する公式ドキュメント

【参考記事】

Curly COMrades cyberspies hit govt orgs with custom malware(外部)
BleepingComputerの解説記事。MucorAgentの3段構成、AMSI回避、PNG偽装外送の詳細を補足

Russian-Linked Curly COMrades Deploy MucorAgent Malware in Eastern Europe(外部)
Hackreadによる概説。NGENハイジャックの前例がない手法とロシアの地政学的文脈を補強

【編集部後記】

今回のCurly COMradesによるNGEN COMハイジャック攻撃を調査していて、最も印象的だったのは「正常と異常の境界線がいかに曖昧になっているか」という点でした。NGENという.NETの最適化プロセスを悪用する発想は、攻撃者が単なる脆弱性悪用から、システムの「当たり前の動作」そのものを武器にする時代に入ったことを物語っています。

特に興味深いのは、curl.exeという開発者なら誰もが使う正規ツールを、C2通信の中核に据えた点です。これは「怪しいツールを持ち込まず、その場にあるもので済ませる」というLiving Off the Landの思想が、もはや攻撃の常識になりつつあることを示しています。防御側としては、「何が悪意ある行動か」を再定義する必要に迫られているのが現状です。

皆さんの組織では、こうした「正規プロセスを悪用した攻撃」への備えはいかがでしょうか。従来のシグネチャベース検知だけでは限界がある中、どのような行動ベース監視や異常検知を導入されていますか?また、アイデンティティ基盤の保護について、現場ではどんな課題を感じておられるでしょうか。ぜひコメントで実体験や対策のアイデアを共有していただけると、読者同士で学び合えると思います。

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サイバー犯罪2大グループ「ShinyHunters」「Scattered Spider」連携、Salesforce経由恐喝攻撃の新展開

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サイバー犯罪2大グループ「ShinyHunters」「Scattered Spider」連携、Salesforce経由恐喝攻撃の新展開 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年8月12日、ReliaQuestはShinyHuntersとScattered Spiderが連携し、Salesforce顧客を標的としたデータ恐喝攻撃を実施していると報告した。

両者はvishing(音声フィッシング)やOkta偽装フィッシング、VPNによるデータ流出秘匿など類似の戦術を用いている。ShinyHuntersは2020年から活動し、BreachForumsの運営に関与、2025年6月に第4期を開始したが同月9日頃に閉鎖した。フランス当局は6月、関係者4人を逮捕した。

8月8日にはShinyHunters、Scattered Spider、LAPSUS$を名乗るTelegramチャンネルが出現し、RaaS「ShinySp1d3r」開発を主張したが3日後に消滅した。700超のフィッシング関連ドメイン分析で、7月以降金融企業を狙う登録が12%増加し、テクノロジー企業向けは5%減少した。

From: 文献リンクCybercrime Groups ShinyHunters, Scattered Spider Join Forces in Extortion Attacks on Businesses

【編集部解説】

今回のポイントは、従来「資格情報の窃取とデータベース流出」で知られたShinyHuntersが、Scattered Spiderの代名詞的手口を取り込み、SaaS基盤(Salesforce)を起点に恐喝へ接続する「戦術ポートフォリオ」を拡張したことです。属性の断定には慎重さが要りますが、戦術・インフラ・標的セクターの重なりが濃く、オペレーション面の連携または持続的な交流があると見るのが実務的です。

同時に、Googleが警鐘を鳴らしたUNC6040のvishing(ビッシング)→OAuth濫用→Salesforceデータ抽出→恐喝の一連の流れは、多数企業に波及可能な「SaaS時代の攻撃プリミティブ」を提示しました。攻撃者は正規UXと権限モデルの文脈に溶け込み、長命トークンや正規アプリのワークフローを悪用して可視性の死角を突きます。

この攻撃の難所は、マルウェアよりも「人間—業務—SaaS」の接点に潜む点です。voice phishing(音声フィッシング)でヘルプデスクを装い、SalesforceのConnected Appを承認させる、Okta偽装でSSO資格情報を収集する、Mullvad VPN等で流出経路を秘匿する、短命ドメインを高速回転させる——いずれも組織の運用現実に寄り添う設計です。検知は従来型のマルウェア前提モデルでは後手に回りやすいです。

影響範囲については、直近のドメイン観測から「金融サービス」へのシフトが示唆され、保険・銀行・決済のCRM/ケース管理が主戦場になる可能性があります。一方、テック企業向けの偽装は相対的に減少の傾向が示されましたが、標的選好は機会依存で流動的です。この変化は、流出データの再販・二次詐欺(高精度ターゲティング)・サプライチェーン横断の踏み台化に直結します。

規制・ガバナンス面では、SSO/MFA実装が万能でないことを前提に、OAuth権限・長命トークン・Connected Appの統制が監査の焦点になります。ログ保存は「アプリ行為とデータアクセス粒度」を押さえ、短命ドメインや住宅系プロキシ環境を前提にした「行動学的検知」への転換が実務的です。また、委託・共同利用のCRMデータ管理における「同意と目的外利用」「二次流通リスク」も再設計が要ります。

ポジティブな側面として、ReliaQuestや複数の脅威インテリジェンスがTTPの特定性を高め、インフラの指紋化と早期介入(短命ドメインの封じ込め、Okta偽装キットの検知)に実装知を提供し始めています。クラウド事業者とSaaSベンダーの協調による検知・通報・テイクダウンも、ドメイン回転速度に追随する形で成熟しつつあります。

一方のリスクは、脅威側の”クラウト化”です。Telegram上の「Scattered LAPSUS$ Hunters」は短命でしたが、RaaS志向(ShinySp1d3r)やブランディング増幅を狙う情報心理戦の色彩が濃く、初期侵入のB2B化(initial access broker)との役割分担が進む可能性があります。The Comという緩やかな上位集合体の下で、手口・インフラ・人材が「共有地化」するほど、個別グループの摘発が波及抑止に直結しにくくなります。

長期的には、「SaaSの業務同化度」が高い企業ほど、攻撃者にとってUX駆動の社会工学が効く構造が続きます。MFA疲労、ヘルプデスク模倣、正規アプリの再梱包という「人と業務」に寄り添う戦術は、防御側にも同じレイヤの介入(就業動線に沿うトレーニング、承認画面のUXハードニング、権限スコープの最小化、アプリ間連携の検査ゲート)を要求します。犯行主体の同定に過剰に拘泥するより、戦術連鎖を分断する「行動ベースの最小介入点」を設計することが、現実的な被害最小化に直結します。

最後に、事実関係への注記です。連携の断定は依然として「状況証拠の積み上げ」に留まる一方、対象セクターの重なり、BreachForums上の”Sp1d3rhunters”、ドメイン命名規則の一致、vishingとOkta偽装、Mullvadを介した流出——これらの符合は多源的に確認されています。誇張よりも、「戦術の可搬性と共有」を前提にSaaS統制を再設計することが、読者企業にとっての最短距離だと考えます。

【用語解説】

vishing(ビッシング)
voice phishing(音声フィッシング)の略で、電話や音声チャットを使ったソーシャルエンジニアリングの詐欺手口である。

social engineering(ソーシャルエンジニアリング)
人間の心理や業務手順を突く手口で、技術的脆弱性ではなく人の判断を悪用する攻撃である。

Okta偽装フィッシング
OktaのSSOログイン画面に似せた偽ページで認証情報を入力させる手口である。

VPN obfuscation(VPN難読化)
MullvadなどのVPN経由で流出経路を隠し、追跡や検知を困難にする手法である。

SSO(シングルサインオン)
1つの認証で複数サービスへアクセスできる仕組みで、偽装ログインページが狙われやすい。

ransomware-as-a-service(RaaS)
ランサムウェアの提供をサービス化し、アフィリエイトが攻撃を実行する犯罪ビジネスモデルである。

The Com(ザ・コム)
英語話者のサイバー犯罪者ネットワークの呼称で、SIMスワップや恐喝などの活動に関与するとされる。

SIM swapping(SIMスワッピング)
携帯キャリアで番号を攻撃者のSIMに移し替え、SMS認証などを乗っ取る手口である。

ドメインインフラの回転
短命のフィッシング用ドメインを多数登録・使い捨てして検知やブロックを回避する運用である。

extortion(恐喝)
盗んだデータの暴露や営業妨害を示唆し、身代金の支払いを迫る行為である。

【参考リンク】

ReliaQuest(公式)(外部)
脅威インテリジェンスと検知・対応を提供するセキュリティ企業で、本件の戦術分析レポートを公開している。

DataBreaches.net(特集)(外部)
ShinyHuntersの恐喝動向やGoogleへの要求言及など、当事者発言を含む取材記事を掲載している。

【参考記事】

ShinyHunters Targets Salesforce Amid Clues of Scattered Spider Collaboration(外部)
ShinyHuntersのSalesforce標的化と、Scattered Spiderとの戦術・インフラ重複を分析する。700超の2025年登録ドメインや7月以降の金融向け増加(+12%)とテック向け減少(-5%)を示し、連携可能性と今後の金融・テクノロジーサービスへの拡大を指摘する。

Researchers firm up ShinyHunters, Scattered Spider link(外部)
Salesforce Data Loaderなどの正規アプリ悪用、Okta偽装、Mullvad VPNの利用など、Scattered Spiderの”標章的”手口への移行を具体例で説明し、The Comとの関連を含めて連携説を補強する。

Financial Services Could Be Next in Line for ShinyHunters(外部)ドメイン分析に基づき、7月以降の金融企業向けドメイン登録が12%増加、テック向けが5%減少した点を強調し、銀行・保険・金融サービスへのリスク上昇を解説する。

Three notorious cybercrime gangs appear to be collaborating(外部)
Telegramチャンネル上の誇示的投稿、RaaS「ShinySp1d3r」主張、短期間でのチャンネル消失を報じ、ブランド増幅と混乱を狙う新段階の恐喝手法として位置づける。

ShinyHunters sent Google an extortion demand; Shiny comments on current activities(外部)
ShinyHuntersがGoogleに恐喝要求を送付したとする当事者の発言を記録し、時期的経緯や今後の攻撃示唆を含むチャット内容を紹介する。

Are Scattered Spider and ShinyHunters one group or two? And who did France arrest?(外部)
UNC6040/UNC6240とUNC3944の区別・重複、BreachForumsの@Sp1d3rhunters、支払い事例の示唆など、帰属の混線と連携の可能性を整理する調査記事である。

【編集部後記】

SalesforceやOktaといった、私たちが日常的に使うSaaSプラットフォームを狙った攻撃が、ここまで巧妙化している現実に驚かれたのではないでしょうか。ShinyHuntersとScattered Spiderという「別々の脅威」が戦術を共有し、連携の可能性まで示している今回の事例は、サイバーセキュリティの地殻変動を象徴しています。

特に注目すべきは、従来のマルウェア中心の攻撃から「人と業務フローの隙間」を突く手法への進化です。電話で巧妙にヘルプデスクを装うvishing、見慣れたOktaログイン画面の偽装、正規アプリを装った承認要求——これらはすべて「普通の業務」に溶け込む設計になっています。技術的な防御だけでは限界があることを、改めて痛感させられます。

金融業界への標的シフト(+12%)も看過できません。顧客の資産や個人情報を扱う金融機関が狙われれば、その影響は個人から企業、そして社会全体へと波及します。一方で、ReliaQuestのような脅威インテリジェンス企業が戦術パターンを可視化し、防御側の対応力向上に貢献していることは希望的な要素です。

私たち一人ひとりができることは、「疑う習慣」を身につけることかもしれません。突然の電話、見慣れない承認画面、普段と違うログイン要求——これらに遭遇したとき、立ち止まって考える時間を作ることが、組織全体を守る第一歩になります。テクノロジーは人を進化させますが、その前に人自身が進化する必要があるのかもしれません。

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