2024年10月10日、英国の日刊紙ガーディアンは、子どもの写真をオンラインで共有する際のプライバシー保護に関する記事を掲載した。記事では、親が子どもの写真をソーシャルメディアに投稿する「シェアレンティング」の問題点と、子どものプライバシーを守るための方法について解説している。
記事では、子どもの写真を共有する際の注意点として以下を挙げている:
- 写真に位置情報が含まれていないか確認する
- プライバシー設定を適切に行う
- 子どもの同意を得る
- 恥ずかしい写真や個人情報を含む写真は投稿しない
- 写真をダウンロードできないようにする
また、子どもの写真を共有する代替案として、家族や友人とのみ共有できるプライベートな写真共有アプリの使用を提案している。例として、Tinybeans、FamilyAlbum、23snapsなどが挙げられている。
記事は、子どものデジタルフットプリントを最小限に抑えることの重要性を強調し、親が子どものプライバシーを守る責任があると結論づけている。
from Opt out: how to protect your baby’s photos on the internet
【編集部解説】
今回は「シェアレンティング(sharenting)」という現象について解説します。
シェアレンティングとは、親が子どもの写真や情報をソーシャルメディアで共有する行為を指します。スマートフォンやSNSの普及により、子どもの成長を記録し共有することが容易になった一方で、様々な問題が浮き彫りになってきています。
まず、子どものプライバシーの問題があります。親が善意で投稿したつもりでも、子どもの同意なしに個人情報が公開されることになります。将来、子ども自身が望まない情報が残り続ける可能性があるのです。
次に、セキュリティの問題があります。写真に含まれる位置情報や学校名などから、悪意ある第三者に子どもの居場所が特定される危険性があります。また、なりすましや個人情報の悪用にもつながる可能性があります。
一方で、シェアレンティングには家族や友人とのつながりを深める、思い出を記録するといったポジティブな側面もあります。完全に禁止するのではなく、リスクを理解した上で適切に行うことが重要です。
今後、子どものプライバシー保護に関する法整備が進む可能性もあります。既に※1フランスや※2ドイツでは、子どもの画像に関する権利が法的に認められています。
私たちは、テクノロジーの進化とともに新たな課題に直面しています。シェアレンティングの問題は、デジタル時代における子どもの権利や親の責任について、社会全体で考える良いきっかけになるでしょう。
皆さんも、子どもの写真を投稿する前に、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。子どもの未来を守るために、私たち大人にできることがたくさんあるはずです。
【参考情報】
用語解説
1. シェアレンティング(Sharenting):
「共有(share)」と「子育て(parenting)」を組み合わせた造語です。親がSNSで子どもの写真や情報を共有する行為を指します。日本語では「子育て情報共有」とも呼ばれます。
2. デジタルフットプリント:
オンライン上に残る個人の活動や情報の痕跡のことです。足跡に例えられ、インターネット上での行動履歴や投稿内容などが含まれます。
3. Ofcom:
英国の通信規制機関です。日本の総務省に似た役割を果たしています。
参考リンク
- Tinybeans(外部)
プライバシーを重視し、家族や親しい人とだけ子どもの写真を共有できるサービスです。
- FamilyAlbum(外部)
子どもの写真を安全に共有できるプラットフォームを提供しています。
- 23snaps(外部)
プライベートな写真共有と家族とのコミュニケーションを促進するサービスです。
補足
※1 フランスでの子どもの肖像権保護に関する法律をまとめた記事
France’s New Law Bans Parents From Sharing Photos of Their Children on Social Media(外部)
※2 ドイツでの児童の性的虐待を防止するための法案に関する記事
Germany to reduce minimum prison sentence for spreading child sexual abuse images (外部)