Digital Trendsに掲載された記事では、筆者が日常的にGoogle ChromeとMicrosoft Edgeの両方のブラウザを併用している理由が説明されている。筆者によれば、現在市場に存在する多くのブラウザ(Vivaldi、Firefox、Chrome、Edge等)の中で、単一のブラウザだけでは自分のすべてのニーズを満たすことができないと感じているとのことである。
筆者は主にChromeを使用しており、その理由として信頼性の高さと日常業務を容易にする豊富な拡張機能ライブラリを挙げている。特にGoogleアカウントを使用したGmail、Drive、Docs、Calendarなどのサービスとの統合がスムーズであることも大きな要因である。しかし、Chromeはメモリ使用量が多く、特に多くのタブや拡張機能を同時に実行している場合にパフォーマンスが低下する欠点がある。
一方、Edgeは「Drop」機能によるiPadとPC間のテキスト転送、プロジェクトごとにタブをグループ化できる「Workspaces」機能、縦型タブ表示など、独自の便利な機能を提供している。筆者はこれらの機能を高く評価し、Edgeも日常的に使用している。ただし、右上のCopilotボタンの位置を変更できないことが欠点として挙げられている。
筆者は、完璧なブラウザはないと認めつつも、ChromeとEdgeを併用することで、それぞれの長所を活かし、短所を補完できると結論づけている。両方のブラウザの最良の機能を兼ね備えた新しいブラウザが登場するまでは、この二つのブラウザを使い続ける予定だとしている。
from:Why I can’t choose between Chrome and Edge, and why I won’t
【編集部解説】
ウェブブラウザは私たちのデジタルライフの中心となるツールであり、その選択は生産性やオンライン体験に大きな影響を与えます。今回の記事では、ChromeとEdgeの両方を併用するという実用的なアプローチが紹介されていますが、最新の情報を踏まえてさらに深く掘り下げてみましょう。
2025年現在、ChromeとEdgeはともにChromiumエンジンを採用しており、基本的なレンダリング性能や互換性については大きな差はありません。しかし、両者はユーザーインターフェースや独自機能において異なるアプローチを取っています。
特に注目すべきは記事でも言及されているEdgeの「Drop」機能です。これはデバイス間でファイルやテキストを簡単に共有できる機能で、OneDriveと連携して動作します。実際、この機能はAirDropのようなシームレスな体験をブラウザ内で実現しており、複数のデバイスを使い分ける現代のワークスタイルに非常に適しています。
リソース消費の面では、Edgeが明らかに優位性を持っています。PCWorldの2023年のテストによると、同じ6ページを読み込んだ場合、EdgeはRAM使用量が約665MBであるのに対し、Chromeは約1.4GBを消費したという結果が出ています。これはバッテリー寿命やマルチタスク時のパフォーマンスに直結する重要な差異です。
また、記事では触れられていませんでしたが、セキュリティ面ではEdgeがMicrosoftのSmartScreenシステムを活用しており、フィッシングやマルウェア対策においてChromeより優れているという評価もあります。ただし、Edgeのアップデート頻度は約6週間ごとであるのに対し、Chromeは数日ごとに更新されるため、脆弱性対応のスピードではChromeに軍配が上がります。
拡張機能については、EdgeがChromiumベースになったことでChrome Web Storeの拡張機能も利用できるようになりましたが、完全な互換性が保証されているわけではなく、この点ではChromeがまだ優位に立っています。
AIとの統合においては、EdgeはCopilot AIを、ChromeはBard AIを搭載しており、それぞれ異なるアプローチでユーザー体験の向上を図っています。Edgeのシステム全体にわたるAI統合はより多機能である一方、Chromeは検索と密接に連携したAI機能を提供しています。
記事の筆者が述べているように、両ブラウザを併用するアプローチは非常に実用的です。例えば、メモリ消費の少ないEdgeを日常的なブラウジングやファイル共有に使用し、特定の拡張機能が必要な作業や、Googleサービスとの連携が重要な場面ではChromeを使うという使い分けが考えられます。
テクノロジーの選択において「完璧なソリューション」を求めるのではなく、複数のツールの長所を組み合わせて最適な作業環境を構築するという柔軟な思考は、ブラウザ選びに限らず、様々なデジタルツールの活用方法にも応用できる考え方です。
今後、両ブラウザはAI機能のさらなる強化や、パフォーマンスの最適化を進めていくことが予想されます。ユーザーとしては、自分のワークフローに合わせて最適なツールを選び、必要に応じて複数のブラウザを使い分けることで、デジタル生活の質を向上させることができるでしょう。
【用語解説】
Chromium(クロミウム) : Googleがオープンソースとして開発・公開しているウェブブラウザのコードベース。Google Chrome、Microsoft Edge、Operaなど多くの現代ブラウザの基盤となっている。自動車に例えると、エンジンや基本シャーシを提供する共通プラットフォームのようなものである。
Drop機能 : Microsoft Edgeに搭載された機能で、同じMicrosoftアカウントでログインした複数のデバイス間でファイルやテキストを簡単に共有できる仕組み。LINEの「Keepメモ」のように、自分自身とのチャットのような形でファイルやメモを共有できる。OneDriveと連携しており、共有したファイルは「Microsoft Edge Drop Files」フォルダに保存される。
Workspaces(ワークスペース ): ブラウザのタブをプロジェクトや用途ごとにグループ化して管理できる機能。Edgeには標準搭載されているが、Chromeでは拡張機能を追加する必要がある。仕事用、プライベート用、プロジェクトごとなど、目的別にタブを整理することで、ブラウザの使い勝手を向上させる。
EdgeHTML : かつてMicrosoft Edgeが使用していた独自開発のレンダリングエンジン。2020年にEdgeがChromiumベースに移行する前まで使用されていた。
IEモード : Microsoft Edgeに搭載された機能で、Internet Explorer向けに開発された古いウェブサイトやアプリケーションを互換性を保ったまま表示できる機能。特に企業の内部システムなど、IEに依存したレガシーシステムを利用する際に重宝する。
【参考リンク】
Microsoft Edge公式サイト (外部) Microsoft Edgeの機能紹介や最新情報、ダウンロードリンクを提供している公式サイト。
Google Chrome公式サイト (外部) Google Chromeのダウンロードや機能紹介、アップデート情報などを提供している公式サイト。
Chromiumプロジェクト (外部) ChromiumのオープンソースプロジェクトのWebサイト。開発者向けの情報やソースコードへのアクセスを提供している。
【編集部後記:ChromiumベースとNon-Chromiumブラウザの比較】
現代のウェブブラウザは大きく分けて「Chromiumベース」と「Non-Chromium」の2つのカテゴリーに分類されます。それぞれ異なる特徴と強みを持っており、ユーザーのニーズに応じた選択肢を提供しています。
Chromiumベースのブラウザ
Chromiumは、Googleが開発したオープンソースのブラウザプロジェクトで、多くの人気ブラウザの基盤となっています1 2 。2008年にGoogleが発表して以来、世界中の数百のプロジェクトで使用されており、現在では約30のChromiumベースのブラウザが存在します。
主なChromiumベースのブラウザ
1. Google Chrome
特徴:直感的なインターフェース、堅牢な機能、高速なブラウジング体験
強み:Googleサービスとのシームレスな統合、デバイス間の同期機能、頻繁なセキュリティアップデート
弱点:メモリ使用量が多い、プライバシー面での懸念1
2. Microsoft Edge
特徴:2020年にChromiumベースに移行、Windowsとの優れた統合性
強み:メモリ効率が良く、Chrome拡張機能との互換性、ユーザーフレンドリーなインターフェース
弱点:Chromeと比較してセキュリティ機能が限定的、拡張機能のライブラリが小さい
3. Brave
特徴:プライバシー重視のブラウザ、デフォルトで広告をブロック
強み:トラッカーのブロック機能、暗号通貨との親和性、匿名ブックマーク機能
ユーザー層:プライバシー意識の高いユーザーや暗号通貨に関心のあるユーザー
4. Opera
特徴:内蔵VPN機能、独自の付加機能
強み:セキュリティ機能の強化、カスタマイズ性5
5. Vivaldi
特徴:高度なカスタマイズ性
強み:ほぼすべての側面をカスタマイズ可能
その他のChromiumベースブラウザ
Slimjet:高速、Blinkエンジンベース
Torch Browser:メディアダウンロード機能に特化
Epic Privacy Browser:プライバシー重視、トラッカーをブロック
Avast Secure Browser:セキュリティ重視、内蔵VPN
Non-Chromiumブラウザ
Non-Chromiumブラウザは、Chromiumプロジェクトに依存せず、独自のレンダリングエンジンを使用しています。これらのブラウザはプライバシー、セキュリティ、カスタマイズ性などを重視する選択肢を提供しています。
主なNon-Chromiumブラウザ
1. Safari(WebKitエンジン)
特徴:Appleが開発、WebKitレンダリングエンジンを使用
強み:高速なページ読み込み、ユーザーフレンドリーなインターフェース、優れたエネルギー効率
対応:Apple製デバイス(Mac、iOS)専用
注目点:2025年1月の調査ではブラウジング速度、グラフィックパフォーマンス、プライバシー保護で1位を獲得
2. Mozilla Firefox(Geckoエンジン)
特徴:独自のGeckoレンダリングエンジンを使用
強み:プライバシー重視、高度なカスタマイズ性、拡張機能のサポート
ユーザー層:約1億5600万人のユーザーを持つ人気ブラウザ
機能:トラッカーの自動ブロック、スクリーンショットツール、ブックマークマネージャー
3. LibreWolf
特徴:Firefoxのフォーク
強み:トラッキングとフィンガープリンティングに対する保護を強化、DuckDuckGoやSearxなどのプライバシー重視の検索プロバイダーを含む
4. Pale Moon(Goannaエンジン)
特徴:Firefoxのフォーク、Goannaレンダリングエンジンを使用
強み:カスタマイズ性、レガシーFirefoxアドオンとの互換性、クラシックなFirefoxの外観と操作感
5. Mullvad Browser
特徴:Mullvad VPNとTorプロジェクトの共同開発
強み:トラッキングとフィンガープリンティングの最小化、プライバシー重視
その他のNon-Chromiumブラウザ
Waterfox:64ビットFirefoxフォーク、Chrome、Firefox、Opera拡張機能と互換性あり
SeaMonkey:オールインワンインターネットスイート
GNOME Web(Epiphany):GNOMEデスクトップ用の軽量ブラウザ
Ladybird:LibWebエンジンを使用した新興ブラウザ
Lynx:テキストベースのブラウザ、アクセシビリティと低帯域幅環境に最適
ブラウザエンジンの比較
エンジン ステータス 開発元 ライセンス 採用ブラウザ WebKit アクティブ Apple GNU LGPL, BSD-style Safari、iOS上のすべてのブラウザ、GNOME Web、Konqueror Blink (Chromium) アクティブ Google GNU LGPL, BSD-style Chrome、Edge、Brave、Vivaldi、Opera など Gecko アクティブ Mozilla Mozilla Public Firefox、Thunderbird Goanna アクティブ M. C. Straver Mozilla Public Pale Moon、Basilisk、K-Meleon Trident メンテナンス Microsoft プロプライエタリ Internet Explorer EdgeHTML メンテナンス Microsoft プロプライエタリ 一部のUWPアプリ、Microsoft Edge Legacy Servo 開発中 Linux Foundation Mozilla Public 実験的ブラウザ LibWeb 開発中 Ladybird Browser Initiative 2-clause BSD Ladybird
選択の基準
ブラウザを選ぶ際の主な基準は以下の通りです:
互換性と性能 :Chromiumベースのブラウザは広範なウェブサイト互換性と頻繁な更新を提供
プライバシーとセキュリティ :Non-Chromiumブラウザの多くはユーザープライバシーを重視
カスタマイズ性 :FirefoxやPale Moonなどは高度なカスタマイズオプションを提供
リソース使用効率 :SafariやEdgeはメモリ使用量やバッテリー消費の面で効率的
特殊機能 :内蔵VPN、広告ブロック、メディアダウンロードなど特定の機能を重視するブラウザもある
2025年の標準準拠性ランキングでは、Chrome(460点)が1位、Edge(458点)が2位、Safari(439点)が3位、Firefox(438点)が4位となっていますが、総合評価ではSafariが1位、Chromeが2位という結果も出ています。
最終的に、完璧なブラウザは存在せず、ユーザーの個人的なニーズや優先事項に基づいて選択することが重要です。多くのユーザーは、状況に応じて複数のブラウザを使い分けることで、それぞれの強みを活かしています。