VR/ARニュース
Pimax Crystal Super:3840×3840解像度とモジュール式でVR体験を革新
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7か月 agoon
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清水巧
VR市場の逆風が続く今だからこそ、Pimaxの革新に注目すべきだ。テザード型VRが50%減の大打撃を受ける中、同社の「レティナレベル」超高解像度と交換可能な光学エンジンは、PCVR市場の年平均28.2%成長を牽引する注目技術として業界の視線を集めている。
VR業界のイノベーターであるPimax社は、2025年1月に米国ラスベガスで開催されたCES 2025において、新型VRヘッドセット「Pimax Crystal Super」および「Pimax Crystal Light」、そしてワイヤレスPCVRモジュール「Pimax 60G Airlink」を発表した。
Pimax Crystal Super
Crystal Superは、「レティナ(網膜)レベル」を謳う超高解像度VRヘッドセットである。主な特徴は以下の通り。
- 解像度: 片目3840×3840ピクセル。
- ピクセル密度 (PPD): QLED 57PPDモデルと、QLED 50PPDモデルが存在する。
- 視野角 (FOV): QLED 57PPDモデルで水平120度、QLED 50PPDモデルで水平135度。
- ディスプレイ: QLED+ミニLED(ローカルディミング対応)。将来的にはマイクロOLEDオプションも提供予定。
- 光学エンジン交換システム: 世界初となる、ディスプレイとレンズを含む光学エンジンをユーザーが交換可能なシステムを採用。
- アイトラッキング: 搭載(自動IPD調整、ダイナミックフォービエイテッドレンダリング対応)。
- トラッキング: インサイドアウトトラッキング。オプションでLighthouseフェイスプレートに対応。
- 接続: PCVR専用(バッテリー非搭載)。
- 価格: QLED 57PPDモデルの総額は1,684.39ドルから。ベース価格799ドルに、24ヶ月の「Pimax Prime」サブスクリプション(月額40.99ドル)または一括払い885.39ドルが加わる。
Pimax Crystal Light
Crystal Lightは、Pimax Crystalの主要スペックを継承しつつ、一部機能を省略することで価格を抑えたPCVR特化モデルである。
- 解像度: 片目2880×2880ピクセル。
- リフレッシュレート: 最大120Hz。
- レンズ: ガラス非球面レンズ。
- 特徴: バッテリー、XR2プロセッサ、アイトラッキング、ダイナミックフォービエイテッドレンダリング機能を非搭載とすることで軽量化と低価格化を実現。固定フォービエイテッドレンダリングはサポート。
- 価格: 699米ドルから。
Pimax 60G Airlink
60G Airlinkは、WiGig技術を利用して高忠実度なワイヤレスPCVR体験を提供するモジュールである。
- 対応機種: Pimax CrystalおよびCrystal Simヘッドセット専用。Crystal SuperおよびCrystal Lightには非対応。
- 解像度・リフレッシュレート: 片目2880×2880ピクセルを90Hzでサポート。
- 特徴: 低遅延、最小限の圧縮で高品質なワイヤレス伝送を目指す。
- 価格: 299米ドル。
Pimax社は、これらの新製品投入により、ハイエンドからミドルレンジまでのPCVR市場における選択肢を拡大し、ユーザーに多様なVR体験を提供することを目指している。
from:
Pimax Reveals Two New High-End VR Headsets | VRlowdown
【編集部解説】
Pimax社がCES 2025で発表した新製品群は、VR体験の質を押し上げようとする同社の野心的な姿勢を示すものです。特にフラッグシップモデル「Pimax Crystal Super」は、その名の通り「レティナ(網膜)レベル」と称される圧倒的な映像体験の提供を目指しています。
Crystal Super:究極の画質とカスタマイズ性
Crystal Superの注目すべき点は、片目3840×3840ピクセルという驚異的な解像度と、最大57PPD(ピクセル毎度)という非常に高いピクセル密度です。これにより、VR空間内の微細なディテールまで鮮明に表示され、文字の可読性も飛躍的に向上するため、フライトシミュレーターやデザイン業務など、高い視認性が求められる用途での活躍が期待されます。視野角もQLED 57PPDモデルで水平120度、50PPDモデルでは水平135度と広く、没入感を高めます。
さらに革新的なのが、世界初となる「交換可能な光学エンジンシステム」の採用です。ユーザーは、QLEDパネルと将来的にはマイクロOLEDパネルを、レンズごと容易に交換できます。QLEDは高輝度(ピーク輝度280ニト)と広色域、マイクロOLEDは高コントラストと深い黒表現が特徴であり、用途や好みに合わせて最適なディスプレイを選択できるという、これまでにない柔軟性が魅力です。レンズには歪みを抑えたガラス非球面レンズが採用されています。
アイトラッキング機能も搭載し、自動IPD調整やダイナミックフォービエイテッドレンダリングに対応しており、快適性とパフォーマンスの両立を図っています。MR(複合現実)機能も将来的にオプションのフェイスプレートで対応予定です。
価格体系はユニークで、ベース価格799ドルに加えて「Pimax Prime」というサブスクリプション型の支払い(月額または一括)が設定されています。これにより初期費用を抑えつつ、高性能ヘッドセットを手に入れることができます。ただし、最高の体験を得るためには、NVIDIA GeForce RTX 20シリーズ以上、推奨はRTX 4090やRTX 5090クラスの高性能なPCが求められる点に注意が必要です。
Crystal Superは、以前のCrystalモデルと比較して軽量化も図られていますが、それでも一定の重量感はあるでしょう。装着感については改善が試みられていますが、長時間の使用における快適性は個人差が出やすい部分です。また、初期のデモ機では自動IPD調整の不具合や色の過飽和、オーディオ品質に関する指摘もありましたが、Pimaxはこれらの改善に取り組んでいます。コントローラーのトラッキング精度は、競合製品と比較して改善の余地があるとの声も聞かれます。輝度ムラや色収差の程度も、個々の製品やユーザーの感度によって評価が分かれる可能性があります。
Crystal Light:高性能PCVRへの入り口を広げる
「Pimax Crystal Light」は、Crystal Superほどの最高スペックは求めないものの、高品質なPCVR体験をより手頃な価格で実現したいユーザー向けのモデルです。解像度は片目2880×2880ピクセルと依然として高精細で、多くのPCVRゲームやアプリケーションで十分な没入感を得られます。アイトラッキングやスタンドアロン機能を省略することでコストを抑え、軽量化も実現しています。
60G Airlink:ケーブルからの解放、ただしCrystal専用
「Pimax 60G Airlink」は、WiGig技術(60GHz帯無線通信)を利用し、Pimax Crystal(オリジナルモデル)をワイヤレス化するモジュールです。片目2880×2880ピクセルの解像度を90Hzで、低遅延かつ圧縮を最小限に抑えて伝送することを目指しており、ケーブルの煩わしさから解放された自由なVR体験を可能にします。重要な点として、このAirlinkモジュールはPimax CrystalおよびCrystal Simヘッドセット専用であり、Crystal SuperやCrystal Lightには対応していません。これは、SuperとLightがバッテリーを内蔵していないためです。
Pimax製品とVR市場の展望
Pimax社は、これまでも野心的なスペックの製品を市場に投入してきましたが、過去には発表から実際の出荷までに時間がかかったり、初期品質に課題が見られたりしたこともありました。しかし、同社は継続的に製品改善とサポート体制の強化に努めており、最近の資金調達成功もその一助となるでしょう。
Crystal Superのような超ハイエンド製品の登場は、VR技術の限界を押し広げる一方で、アイトラッキングなどが収集する個人データのプライバシー保護といった課題も提起します。ユーザーは技術の進歩を享受するとともに、こうした側面にも注意を払う必要があります。また、米中間の貿易摩擦による関税が最終的な製品価格に影響を与える可能性も考慮に入れるべきでしょう。
Pimaxの最新ラインナップは、PCVR市場においてさらなる高画質化と多様な選択肢を求める動きを加速させることになりそうです。特にCrystal Superのモジュール設計は、将来的な技術進化にも柔軟に対応できる可能性を秘めており、VRハードウェアの一つの方向性を示すものと言えるかもしれません。
【編集部追記】
Pimaxについては改めて、どんな企業なのか紹介したいと思います。
Pimax Innovation Inc.は、2015年11月に設立された、VRハードウェア製品に特化した中国の技術企業です。本社は上海にあり、日本ではAppleやMetaほど知名度が高くありませんが、VR業界では「技術革新のトップランナー」として重要な地位を占めています。
創業者兼CEOのRobin Weng(翁志斌)氏は、VRハードウェアエンジニアリングの専門家で、BYD(2007-2012年)でチーフエンジニア、GTK(2012-2014年)でR&Dディレクターを務めた経験を持ちます。90年代後半にオンラインゲームコミュニティに没頭した経験から、バーチャル世界の可能性に魅了され、現実と仮想の境界を曖昧にすることを目標にPimaxを設立しました。「人間の自然な視覚に限りなく近づけること」「高性能MRによる仮想と現実の融合」を将来ビジョンとして掲げています。
ユーザー共創のアプローチ
他社とは異なり、製品開発の早期段階からロードショーや展示会でユーザーからの直接フィードバックを収集し、オンラインコミュニティやベータテストを通じて継続的に改善を行う「ユーザーとの共創」を企業理念としています。
「世界初」へのチャレンジ精神
2016年、Pimax 4Kで世界初の商用4K解像度VRヘッドセットを発売。CES 2016でアジア最優秀VR製品賞を受賞しました。その後も:
・世界初の8K解像度VRヘッドセット
・世界初の200度視野角VRヘッドセット
・世界初のガラスレンズ採用VRヘッドセット
など、常に業界の技術的限界に挑戦し続けています。
ハイエンドPCVR市場に特化し、圧倒的なスペック追求
解像度:Vision 8K Xは世界初の消費者向けデュアルネイティブ4K VRヘッドセット
視野角:200度という超広視野角を実現
互換性:SteamVRとOculusソフトウェアの両方に対応
プロフェッショナルユーザー(シミュレーション、設計業務)とVRエンスージアストに焦点を当て、フライトシミュレーターやレーシングシミュレーターの愛好家に特に人気があります。
特許・知的財産
15件の特許、6件の商標、9件のソフトウェア著作権を保有し、10年以上のVR・AR技術研究の蓄積があります。
Pimaxは、大手が敬遠する「技術的に困難だが革新的」な領域に果敢に挑戦し続ける、VR業界の技術革新リーダーです。日本での知名度は低いものの、VRの技術的可能性を追求する姿勢は、業界全体の発展に大きく貢献している重要な企業と言えるでしょう。
【用語解説】
QLED (Quantum Dot Light Emitting Diode):
量子ドット技術を利用したディスプレイ。バックライトの光を受け量子ドットが特定の色を高純度で発光し、広色域・高輝度を実現する。主に液晶ディスプレイに利用される。
Micro-OLED (Micro Organic Light Emitting Diode):
シリコン基板上に形成される超小型・超高精細な有機ELディスプレイ。高ピクセル密度、高コントラスト、高速応答性、低消費電力が特徴。AR/VRデバイスに適する。
FOV (Field of View):
視野角。VRヘッドセットではユーザーが見渡せる映像範囲の広さ。広いほど没入感が増す。Pimax Crystal SuperではQLED 57PPDモデルで水平120度、QLED 50PPDモデルで水平135度。
PPD (Pixels Per Degree):
視野角1度あたりのピクセル数。高いほど映像がきめ細かくなる。Pimax Crystal Superは最大57PPDを謳う。
IPD (Interpupillary Distance):
瞳孔間距離。左右の瞳の中心間の距離。VRではクリアな立体視のため調整が重要。Crystal Superは自動調整に対応。
ダイナミックフォービエイテッドレンダリング (Dynamic Foveated Rendering):
アイトラッキングでユーザーの視線中心を高解像度、周辺を低解像度で描画し、GPU負荷を軽減する技術。
固定フォービエイテッドレンダリング (Fixed Foveated Rendering):
画面中心を常に高解像度、周辺を低解像度で描画する技術。アイトラッキング不要。
インサイドアウトトラッキング (Inside-out Tracking):
ヘッドセット本体のカメラ等で自己位置やコントローラーを追跡する技術。外部センサー不要。
Lighthouseトラッキング (Lighthouse Tracking):
Valve社開発の外部ベースステーションを用いる高精度VRトラッキングシステム。Crystal Superはオプションで対応。
WiGig (Wireless Gigabit):
60GHz帯の電波を利用する高速無線通信規格(IEEE 802.11ad)。大容量データ伝送に適し、低遅延VRに利用される。
XR2チップ (Qualcomm Snapdragon XR2 Platform):
クアルコム製のXRデバイス向けハイエンドプロセッサ。Pimax Crystal(オリジナル)に搭載。Crystal Super/Lightには非搭載。
パンケーキレンズ (Pancake Lens):
複数のレンズ素子と偏光技術で薄型化を実現したレンズ。VRヘッドセットの小型軽量化に貢献。
非球面レンズ (Aspheric Lens):
少なくとも一面が球面でないレンズ。球面収差等を効果的に補正しシャープな像質を実現。Crystal Superに採用。
ミニLED (Mini-LED):
微細なLEDチップを高密度にバックライトとして使用する技術。ローカルディミングと組み合わせ高コントラストを実現。Crystal SuperのQLEDモデルに採用。
ローカルディミング (Local Dimming):
バックライトを複数ゾーンに分割し輝度を個別に制御、コントラストを高める技術。
CES (Consumer Electronics Show):
毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市。
VAT (Value Added Tax):
付加価値税。商品の販売やサービス提供の各段階で課される間接税。
MR (Mixed Reality):
複合現実。現実空間と仮想空間を融合させ、相互に影響し合う情報を提示する技術。Crystal Superは将来的にMRフェイスプレートで対応予定。
レティナディスプレイ (Retina Display):
Apple社が定義した高精細ディスプレイの呼称。人間の網膜では個々のピクセルを識別できないほど高密度であることを意味する。Pimax Crystal Superも「レティナレベル」を謳う。
【参考リンク】
Pimax公式サイト(外部)
VRヘッドセットメーカーPimaxの公式サイト。製品情報、ニュース、サポート、グローバルストアへのリンクなどを提供している。(日本語サイトは こちら )
Pimax Crystal Super 製品情報(外部)
PimaxのフラッグシップVRヘッドセット『Crystal Super』の製品ページ。スペック、特徴、価格体系(Pimax Prime含む)などが詳細に記載されている。
Pimax 60G Airlink 製品情報(外部)
Pimax Crystal(オリジナル)をワイヤレス化する『60G Airlink』モジュールの製品ページ。対応機種、スペック、価格、出荷予定などが確認できる。
Pimax Crystal Light 製品情報(外部)
『Pimax Crystal』の主要スペックを継承しつつ価格を抑えたPCVRヘッドセット『Crystal Light』の製品ページ。(実際のURLを確認する必要あり)
【参考動画】
【参考記事】
Pimax Crystal Super VR Headset Retina Clarity & Modular Design | Geeky Gadgets
Sync FAQ: Crystal Super, Light, 60G Airlink, Prime, and 12K Trade-in | Pimax Official Blog
Pimax Announces Crystal Super and Crystal Light, 60G Airlink | FS Elite
【編集部後記】
医療や軍事、運転シミュレーターやゲームなど……、VRは様々な場面で活躍しており高いポテンシャルと注目を秘めております。VRがもたらす映像や操作感がリアルであればリアルであるほどその世界に没入しやすく、運転の事故や防災訓練、予行練習などが安全かつ高い質で行うことが可能です。そういった点から最先端の技術がVRに集められています。筆者は本記事を執筆している間に既視感がありました。それは携帯電話やパソコンの進化と似ている点です。携帯電話ガラパゴスからスマートフォンへ。パソコンはより情報処理やツールの発展により多様な活用法を獲得したり……など操作感やシルエットが変わり現代に浸透していきました。VRも後々は形や新たな用途が見つかっていくのではないかと、未来の技術力に期待を高められる。そんな気持ちにさせる製品発表でした。
VR/ARニュース
Niantic Spatial SDK v3.15、Meta Quest 3にベータサポートで対応 — 屋外VPSとライブメッシング機能を追加
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5か月 agoon
2025年8月12日By
乗杉 海
Niantic Spatial SDK v3.15がMeta Quest 3およびQuest 3Sに対応した。このSDKは開発者にセンチメートル精度の屋外VPS(Visual Positioning System)、長距離ライブシーンメッシング、セマンティックセグメンテーションの機能を提供する。
これらの機能は、Metaが今年初めからサードパーティのHorizon OSアプリにパススルーカメラへのアクセスを許可したことで実現した。Nianticは約10年間開発してきたコンピュータービジョンモデルを活用している。
このリリースは、Pokémon GOで知られるNianticの買収発表から約5か月後に行われた。Niantic GamesビジネスはサウジアラビアのScopelyに売却され、空間技術部門はNiantic Spatialとして独立した。NianticのVPSマップは100万か所以上をカバーし、Pokémon GOやScaniverseのプレイヤーからのスキャンデータを使用して構築されている。
VPS APIは月間最初の25,000回のコールが無料で、それ以降は1コールあたり約0.01ドルである。オンデバイスコンピュータービジョン機能は月間アクティブユーザー(MAU)あたり月額約0.10ドルの料金が必要だ。従来のMeta Depth APIが約4メートルまでしか対応しないのに対し、Niantic Spatial SDKは長距離メッシングをサポートしている。
From:
Niantic Spatial SDK Brings Outdoor VPS & Long-Distance Live Meshing To Quest 3
【編集部解説】
今回のNiantic Spatial SDKのQuest 3対応について、技術的な意義と業界への影響を詳しく解説いたします。
まず技術的な革新性について確認しましょう。従来のGPSは理想的条件下でも1メートル程度の精度しか持ちませんが、Nianticが提供するVPS(Visual Positioning System)は、コンピュータビジョンを活用してセンチメートルレベル精度での位置特定を実現します。これは単なる精度向上ではなく、屋外でのAR/MR体験を根本的に変える可能性を秘めています。
重要なのは、現在Quest 3への対応がベータサポート段階にあることです。Niantic Spatial公式ブログでは「beta support for Meta Quest 3」と明記されており、正式リリースに向けた検証が続けられています。
MetaがHorizon OSアプリに対してPassthrough Camera API(パススルーカメラAPI)を開放したことも重要な背景です。この決定により、Nianticは約10年間蓄積してきたコンピュータービジョンモデルをQuest 3プラットフォームで活用できるようになりました。これは技術的な垣根を越えた協力関係の好例といえるでしょう。
Live Meshing(ライブメッシング)機能についても重要な進歩が見られます。従来のMeta Depth APIは約4メートルの範囲に制限されていましたが、Niantic Spatial SDKは近距離・長距離両方のメッシングに対応し、大規模な屋外環境での利用を可能にしています。これにより、従来の室内中心だったMR体験が屋外へと拡張される道筋が見えてきました。
企業分割の経緯についても重要な文脈があります。2025年3月12日にNianticとScopelyが買収合意を発表し、同年5月29日に35億ドルでの買収が完了しました。追加の現金3.5億ドルを含む総額38.5億ドルの取引です。この分離は単なる企業再編ではなく、Nianticがspatial intelligence(空間知能)分野に特化する戦略的転換を示しています。
料金体系については詳細な検証が必要です。Niantic公式サイトによると、SDK使用料は月間アクティブユーザー(MAU)500人まで無料で、それ以降は段階的な料金体系となっています。VPSについては複数のプラットフォームで異なる条件が設定されており、8th Wall経由では月間10,000コールが無料とされています。これらの価格設定は開発者にとって比較的アクセスしやすい水準といえるでしょう。
この技術が開く可能性は多岐にわたります。教育分野では歴史的建造物の現場での3D再現、製造業では工場設備の保守作業でのリアルタイムガイダンス、建設業では建築物の3D設計図の現場重畳表示などが考えられます。特に、100万か所以上をカバーするVPSマップにより、観光地や公共施設での位置ベースAR体験の精度が飛躍的に向上するでしょう。
一方、潜在的なリスクも考慮が必要です。高精度位置情報システムはプライバシーの観点で新たな課題を生み出す可能性があります。また、屋外でのMR体験が普及すれば、歩行中の安全性確保や公共空間での利用マナーなど、社会的なルール作りも必要になるかもしれません。
長期的視点では、この技術は空間コンピューティングの民主化を促進する可能性があります。従来は大企業や研究機関に限られていた高精度空間認識技術が、より多くの開発者に開放されることで、革新的なアプリケーションが生まれる土壌が整いつつあります。
この発表は、単なる技術アップデートではなく、AR/MR業界全体の方向性を示す重要な節目といえるでしょう。Nianticのspatial intelligence(空間知能)への特化と、Metaのプラットフォーム開放が組み合わさることで、次世代の空間コンピューティング体験の基盤が整いつつあります。
【用語解説】
VPS(Visual Positioning System)
視覚測位システム。カメラ映像から独特の視覚パターンを識別し、既存の高精度3D地図と比較することで位置を特定するシステムだ。従来のGPSが1メートル程度の精度であるのに対し、センチメートルレベル精度での位置特定が可能である。
ライブメッシング(Live Meshing)
リアルタイムで3Dシーンメッシュを生成する技術だ。従来の事前スキャンが不要で、カメラ映像から動的に3D空間情報を構築する。近距離・長距離両方のメッシングに対応している。
セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)
画像内のオブジェクトや表面をリアルタイムで識別・分類する技術である。地面、空、水、建物、家具などの環境要素を自動認識し、仮想コンテンツとの自然な相互作用を可能にする。
Passthrough Camera API(パススルーカメラAPI)
VRヘッドセットの前面に搭載されたカメラにサードパーティアプリからアクセスできる機能だ。現実世界の映像をヘッドセット内に表示し、MR(複合現実)体験の基盤となる技術である。
Horizon OS
MetaのVR/MRプラットフォーム向けオペレーティングシステムである。Quest 3およびQuest 3Sで動作し、サードパーティアプリの実行環境を提供する。
【参考リンク】
Niantic Spatial(公式サイト)(外部)空間コンピューティング技術の開発を手がけるNiantic Spatialの公式サイト。SDK情報や開発者向けリソース、料金体系の詳細を提供している。
Meta Quest 3(公式サイト)(外部)Metaの次世代MRヘッドセットQuest 3の公式サイト。製品情報や価格(512GB版:81,400円)などを掲載している。
Scaniverse(公式サイト)(外部)Nianticが提供する無料3Dスキャンアプリの公式サイト。iOS・Android対応でガウス・スプラッティング技術を活用した高品質3Dスキャンが可能だ。
Meta Quest 3S(公式サイト)(外部)Meta Quest 3の廉価版モデルの公式サイト。Quest 3と同様のMR機能を搭載しながら、より手頃な価格で提供されている。
Scopely(公式サイト)(外部)Savvy Games Groupの子会社で、2025年5月29日にNianticのゲーム事業部門を35億ドルで買収完了した米国の大手モバイルゲーム会社である。
【参考記事】
Niantic Spatial SDK Brings Immersive Reality to Meta Quest 3(外部)Niantic Spatial公式ブログによる詳細発表。Quest 3への「beta support」について説明し、近距離・長距離両方のライブメッシング機能の実際の映像を含む技術的実装を解説している。
Scopely completes acquisition of Niantic’s games business(外部)Savvy Games Groupによる公式発表。2025年5月29日の買収完了と35億ドルの取引金額について詳細を報告している。
Pricing Calculator for Developers Building with Niantic Spatial(外部)Niantic Spatial公式の料金計算ページ。SDKの無料枠(500 MAU)と段階的料金体系について詳細を提供している。
Release Notes v3.15(外部)Niantic Spatial SDK v3.15の公式リリースノート。Quest 3サポートのハイライトと技術的詳細、既知の問題について記載されている。
Scopely officially announces acquisition of Niantic’s gaming division(外部)LinkedInでの詳細分析記事。35億ドルの基本取引額と追加3.5億ドルの現金配布を含む総額38.5億ドルの取引について解説している。
Niantic Studio Pricing(外部)8th Wall経由でのVPS利用について、月間10,000コール無料の詳細情報を提供している。
【編集部後記】
今回のNiantic Spatial SDKの発表は、AR/MR技術が単なる室内体験から屋外での実用的なツールへと進化する転換点かもしれません。現在はベータサポート段階ですが、センチメートルレベルの位置精度を活用したアプリケーションを、皆さんはどのような分野で体験してみたいでしょうか。また、空間コンピューティングがより身近になったとき、私たちの働き方や生活様式はどう変化すると思われますか。
皆さんこんにちは!innovaTopiaのライター乗杉です!今回はXREAL社から発売された新作ARグラスXREAL One Proをお借りしましたので、XREAL Oneとの違いやどういうところが「Pro」なのか、みなさんに紹介していこうと思います!
XREAL One Proとは?
XREAL One ProはXREAL Oneに次ぐ、7月24日にXREAL社から発売された最新ARグラスです。新開発の光学モジュール「X prism」を搭載しており、視野角がOneの50度から57度に広がり、サイズも44%カットされた、最上位モデルにふさわしい進化を遂げています。詳しくは発表会の模様をお届けした記事があるので、気になる方はそちらをご覧ください!
XREAL Oneとの違いってどんなもの?
innovaTopiaではこれまでXREAL Oneの記事を多数投稿してまいりました。そのような中で今回発売されたXREAL One Pro、ズバリ一番気になるのはやはり「Oneとの違い」です。今回は実際にOneとOne Pro、見た目の違いも紹介していこうと思います。

比べてみて真っ先に目が行ったのが、フレーム上部とレンズの違いです。Oneの方では私が眼鏡をかけているのもありますが、つけながらOneをかけると、どうしてもぶつかってしまい、眼鏡の破損が怖かったのですが、One Proは新光学モジュールのおかげで側面から見たとき三角形になっていた部分が改善、平らになったことで眼鏡を付けていても非常につけやすくなりました。
これは眼鏡ユーザーの自分からするととても大きな違いに感じられました。


もちろん眼鏡ユーザーへのアプローチも依然として変わらず行っています。XREAL One向けにレンズを取り扱っているJUN GINZAはOne Proでも引き続きレンズの販売を行っています。しかし眼鏡のままつけられるのならそれでも十分と感じるユーザーも多いでしょう。そんな人でも今回のOne Proであれば満足できる方もいるはずです。


視野角に関しては正直普段使いではあまり違いを感じませんでした。というのも、そもそも視野角50度が思ったより広く、歩きながら使うなどではなく、モニター代わりに使うような形だと50度でも十分なためです。もちろん57度であるメリットも存在するので、使うユーザーによってどちらがいいかは選べるのは良い点です。
映像や音声に関してもXREAL Oneで十分高いスペックを誇っているので、こちらもOneで満足できるユーザーも多いと思います。XREAL社も「用途によって使い分けて欲しい」と言っている通り、使用目的によってどちらを買うか決められるのは非常に嬉しいポイントです。ただ先ほども言ったように、眼鏡ユーザーはそのまま使うならOne Proが非常におすすめできます。
XREALOneでは眼鏡との併用を行うと、眼鏡本体に対する物理的な負担が非常に大きかったです。しかし、One Proでは眼鏡と併用しても本体に対する負担が非常に少なく、眼鏡をかけながらでも長時間の使用が可能です。対応するレンズがあるとはいえ、やはりこの点は魅力です。
また、先日発売されたXREALEyeにもしっかり対応しています。XREALOneに撮影機能と6Dofを付与するデバイスです。
One Proのスペックでの6Dof対応は非常に魅力的です。One proは光学チップがX prismになったことで、輝度が700nitsに増しました。XREALOneでも非常に快適な仮想空間ディスプレイ環境を体験することができましたが、輝度が増したことで、One Proでは視認性が大きく増しました。
ディスプレイ外部から、内部の映像が見えにくくなったことによりプライバシー性が増しました。カフェや、出張での移動中の電車内で使うなら周囲からの視線を防ぐのにピッタリでしょう。
業務シーンでXREALOneを用いるならばOneProの方に軍配があがるでしょう。

OneProを用いてのゲームプレイや動画視聴も通常のXREALOneよりかなり快適な体験をすることができました。やはり眼鏡を普段から使っていますので、眼鏡にフィットしているOneProは顔に痛みも感じにくく、長時間の着用でも気にせず使っていくことができそうです。

また、音響部分も見逃せません。XREAL Oneに続き今回も、Boseによるチューニングが行われていますが、One Proの方が若干の音質向上がなされていると聞いていたので、実際に耳を澄まして動画を再生してみました。
実際、X Prismによる画面の見やすさの向上、視野角が広がったことにより、よりワイドに見ることができるようになった部分も合わさり、まるでライブのような臨場感を体験することができました。
Oneの時から思っていましたが、イヤホンのように耳をふさぐわけではなく、つるの部分から音が出るのは個人的には臨場感が増してすごく好感が持てます。収音性も高く、さすがに大音量にすると周りにも音が漏れてしまいますが、ある程度の音量であればそこまで音漏れも気になりませんので、外であってもイヤホンを付けずに楽しむことができるのもポイントが高いです。もちろんイヤホンをスマホなどに差せば、スピーカーから音を出さないようにもできますので、ユーザーごとに使い分けができるのも良い点です。
ここで、着用感について重要な要素を一つ付け加えておきたいと思います。それはIPD(瞳孔間距離)への対応です。
IPDとは左右の瞳孔の中心間の距離のことで、一般的に成人男性で約64mm、女性で約62mm程度とされています。ARグラスにとってIPDは非常に重要な要素で、個人のIPDに合わない場合、画面がぼやけて見えたり、疲労感が増したりする原因となります。OneProでは2つのサイズが用意されており、幅広いユーザーが違和感なく使えるようになっています。

もしXREALOneを持っていないなら、がっつりゲームをしたり、動画の視聴目的でXREALOneProから買うのも十分にありな選択だなと思えます。もちろん84980円という値段は気軽に手を出しにくい値段ではあります。
しかし、購入したことに対するコストパフォーマンスは間違いなく良いだろうと断言できます。筆者がXREALOneを愛用していますが、XREALOneでもその良さを充分に堪能しています。
XREALOneProならもっと多くの魅力を堪能できるでしょう。
今XRグラスの購入に迷っている方には、XREALOneProは間違いなくおすすめできる製品です。

VR/ARニュース
サンリオ「Virtual Festival 2025 Summer Edition」9月開催決定、マツケン×トシちゃん×きらりコラボ再上演
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5か月 agoon
2025年8月8日By
乗杉 海
サンリオがメタバースで面白いことを始めています。今度の「Sanrio Virtual Festival 2025 Summer Edition」は、ちょっと驚きの内容なんです。なんと松平健さんと田原俊彦さんがVRChat空間でハローキティたちと共演するというのです。想像してみてください、暴れん坊将軍とトシちゃんが、デジタル空間でサンリオキャラクターと一緒にステージに立つんですよ。
サンリオが2月にイベントを開催してから、たった半年で再び開催できるのも、デジタル空間ならではの機動力。物理的な会場の制約がない分、こんなスピード感で楽しいイベントを繰り返し開催できるわけです。これって、私たちがデジタルとリアルが混ざり合った新しい世界で遊ぶ未来の入り口かもしれませんね。
サンリオは8月6日、「Sanrio Virtual Festival 2025 Summer Edition」の開催を発表した。2025年9月19日から9月28日まで10日間開催される。主催はサンリオとサンリオエンターテイメントで、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」上で開催される。2025年2月9日から3月9日に開催された「Sanrio Virtual Festival 2025」のアーティストパフォーマンスの再上演を中心とした内容で、松平健と田原俊彦、月島きらりのコラボステージが9月21日と27日に予定されている。
チケット料金は、スタンダードパスが¥4,400、前回購入者向けのアンコールパスが¥1,100、Android/Quest版が¥550である。
無料コンテンツとして、サンリオピューロランドを再現した「PURO ENTRANCE」、アバターファッションが楽しめる「PURO FASHION GARDEN」、ポチャッコのミニゲーム「ぱくぱく大作戦」などが用意されている。バーチャルパレード「RYUGU – Generated Paradise」も復活し、VRChatコミュニティとの日替わりコラボイベントも開催される。6名の公式アンバサダーによるツアーも実施予定である。イベントはVR機器なしでもWindows PCのデスクトップモードで参加可能である。
From:
Sanrio Virtual Festival 2025 Summer Edition 公式発表
【編集部解説】
メタバース技術の社会実装における転換点
今回のサマーエディション発表は、メタバース技術が実証段階から本格的な事業展開段階へ移行していることを示す重要な事例です。わずか半年での再開催という短いサイクルは、デジタルコンテンツの持つスケーラビリティ(拡張性)の威力を物語っています。
従来の物理的なイベントでは、会場確保から運営スタッフの配置まで、多大なリソースが必要でした。しかし、VRChat上のバーチャル空間では、一度構築したデジタルアセット(3Dモデルやワールド)を繰り返し活用することで、コスト効率的なイベント運営が可能になります。
エンターテインメント業界のパラダイムシフト
注目すべきは、松平健さんや田原俊彦さんといった昭和・平成を代表するベテランエンターテイナーがVR空間に初参戦することです。これは単なる技術的な挑戦ではなく、デジタルネイティブ世代と従来のファン層をつなぐ橋渡しとしての戦略的意味があります。
VRの特徴は、地理的制約を超えて世界中のユーザーが同一空間に集まれる点です。これにより、従来は東京のサンリオピューロランドに物理的に足を運ぶことが困難だった海外ファンや、身体的制約のあるユーザーも等しくエンターテインメント体験を享受できるようになります。
アクセシビリティの革新
技術的アクセシビリティの観点から見ると、VR機器なしでもWindows PCのデスクトップモードで参加可能という設計思想は非常に重要です。高価なVRヘッドセットを前提とせず、より多くのユーザーに門戸を開いている点は、メタバース技術の大衆化において画期的な取り組みと言えます。
また、Android/Quest版チケット(¥550)という低価格帯の設定は、モバイルファースト戦略の現れでもあります。スマートフォンという身近なデバイスでもメタバース体験を提供することで、技術的ハードルを大幅に下げています。
コミュニティ駆動型エコシステムの形成
VRChatコミュニティとの日替わりコラボイベントは、単なるコンテンツ消費から参加型文化創造への転換を示しています。これはユーザー生成コンテンツの概念をエンターテインメント業界に本格導入した事例として注目されます。
従来のマスメディア型エンターテインメントでは、企業が一方的にコンテンツを提供し、ユーザーは受動的な消費者でした。しかし、メタバース環境では、ユーザー自身がコンテンツの共創者となり、イベント体験そのものを豊かにする役割を担います。
長期的な産業への影響
この取り組みは、従来のエンターテインメント業界にとって重要な実験的意味を持ちます。成功すれば、他の大手エンターテインメント企業も同様のメタバース戦略を採用する可能性が高く、業界全体のデジタルトランスフォーメーションが加速するでしょう。
物理的な制約から解放されることで、世界各地のタレントやクリエイターが同一のバーチャル空間でコラボレーションできる環境が整います。これは、創作活動の国際化と多様化を促進する可能性があります。
【用語解説】
VRChat
ソーシャルVRプラットフォームで、3Dアバターを使用してバーチャル空間でユーザー同士が交流できるサービスである。PC、Quest、Android等の多様な端末に対応し、VR機器なしでもデスクトップモードで参加可能である。
バーチャルパレード
VR空間内で行われるデジタルキャラクターによるパレードイベントで、従来のテーマパークとは異なる3次元空間を活かした演出が特徴である。
VRChatコミュニティ
VRChatプラットフォーム上で活動するユーザーグループや創作者集団の総称で、独自のイベントやワールド制作を行っている。
【参考リンク】
Sanrio Virtual Festival 2025 Summer Edition 公式サイト(外部)VRChatで開催される世界最大級のバーチャルフェスティバルの公式サイト。チケット購入や参加方法を掲載
Sanrio Virtual Festival 2025 Summer Edition チケット販売サイト(外部)チケット購入専用サイト。スタンダードパス、アンコールパス等の詳細な料金体系を確認可能
サンリオ公式サイト(外部)サンリオの公式ポータルサイト。ハローキティなどのキャラクター情報や企業情報を提供
VRChat公式サイト(外部)ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」の公式サイト。アカウント作成や基本的な使用方法を案内
【参考動画】
【参考記事】
『Sanrio Virtual Festival 2025 Summer Edition』の開催決定速報(外部)バーチャルライフマガジンによる詳細レポート。前回イベントとの比較や変更点を網羅
【編集部後記】
サンリオのメタバース戦略は、エンターテインメント業界のデジタルシフトを象徴する事例として注目されますが、皆さんの業界ではどのような変化が起きているでしょうか。特に、従来の物理的制約を超えた新たな顧客接点の創造について、ご自身のビジネスに応用できる要素はありませんか。VRChatという既存プラットフォームを活用する戦略と、自社プラットフォーム構築のメリット・デメリットについても、皆さんと一緒に考えていければと思います。
