ソースネクスト株式会社は2026年4月28日、Corel Corporationが開発したグラフィック・デザインソフト「CorelDRAW® Graphics Suite 2026」(82,500円・税込、ダウンロード版)を自社サイトで発売した。
本製品にはAIによる画像生成、画像リミックス、背景削除、写真マスキングの4つのAI機能が搭載されている。画像リミックスにはAIモデル「Nano Banana」を採用する。AI機能の利用には一部クレジットが必要で、製品には2,000クレジット(最大1,000枚の画像生成に相当)が付属する。Adobe Illustratorの.ai形式ファイルとの互換性を持つ。
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プロも愛用する統合デザインソフトの最新版「CorelDRAW Graphics Suite 2026」
【編集部解説】
今回のニュースは、ソースネクスト株式会社が2026年4月28日に日本国内向けに「CorelDRAW® Graphics Suite 2026」を発売したというものです。グローバルでの正式発表はCorel Corporation本社(カナダ・オタワ)が2026年3月3日に行っており、日本での販売開始はそこから約2ヶ月後のタイミングとなります。ゴールデンウィーク直前という時期は、買い切りソフトウェアの販売戦略として意図的な選択でしょう。
今バージョンを語る上で欠かせないのが、Corelが掲げた「Artist Intelligence(アーティスト・インテリジェンス)」というコンセプトです。AIをツールとして人間の創造性を”補助”するという立場を明確に打ち出しており、「AIに創らせる」ではなく「AIと共に創る」という設計思想が根底にあります。AI全盛の今日、クリエイターがAIへの主導権を失うことへの不安が高まる中、Corelはあえてこの言葉を前面に出してきました。これはAdobe Fireflyなど競合との差別化において、重要なメッセージです。
注目すべきはAIモデルの構成です。画像生成には「Flux Schnell」「Stable Diffusion 3.5」「Nano Banana」の3つから選択でき、画像リミックスにはNano Bananaが専用で使われます。このNano Bananaについて、ドイツの著名ITメディア・heise onlineの報告によれば、Google Geminiをベースとしたモデルとされています。ただしCorel公式はその技術的背景を明示していないため、引き続き情報を追う必要があります。いずれにせよCorelがサードパーティ製AIモデルを統合している点は確かであり、自社独自のAIではありません。
クレジット制度についても補足が必要です。プレスリリースには「2,000クレジットで最大1,000枚の画像を作成可能」とありますが、実際の消費クレジット数はモデルによって異なります。heise onlineの報告ではFlux Schnellは1枚あたり2クレジット、Nano Bananaは16クレジットと、使うモデルによって大きく差が出ます。「最大1,000枚」はあくまで最も軽量なモデルを使った場合の上限であることを念頭に置いておきましょう。
また、グローバルではサブスクリプション(年額$269 USD)と買い切り($549 USD)の2つのライセンスが用意されており、サブスクリプション契約者は2,000クレジットを毎月受け取れます。一方、今回のソースネクスト版は買い切り(82,500円・税込)のみの提供で、クレジットは2,000が一度限りの付与です。AIを頻繁に使うユーザーには、クレジットの追加購入が必要になる場面も出てくるでしょう。
クリエイティブソフト市場における本製品のポジションも興味深いところです。長年にわたってAdobe Illustratorが市場を支配してきた中、CorelDRAWは.ai形式との互換性を維持しながら「Adobeの代替」として一定の需要を持ち続けてきました。今回のバージョンでAI機能を大幅に強化したことで、コスト意識の高い中小企業やフリーランスクリエイターにとっての選択肢としてさらに存在感を増す可能性があります。
潜在的なリスクについても触れておきます。AI生成コンテンツの著作権帰属は各国で整備が進んでいる最中であり、商業用途での利用には各モデルプロバイダーの利用規約への同意が別途必要となります。Corelは利用開始前に確認を求める仕組みを設けていますが、ユーザーが内容を十分に把握しないまま商業利用するリスクは残ります。
長期的な視点では、デスクトップデザインソフトへのAI統合は今後加速の一途をたどるはずです。今回のCorelの動きは、クラウドネイティブではなくオンプレミス(ローカル環境)を基盤としながらも生成AIを取り込む方向性を示した一例として、業界全体のトレンドを読む上でも注目に値します。
【用語解説】
ベクターデータ(ベクターイラストレーション)
画像を「点・線・数式」で表現するデータ形式。拡大・縮小しても画質が劣化しないため、ロゴや看板制作など印刷物に広く使われる。対してJPEGなどのラスター(ビットマップ)データは拡大すると画質が粗くなる。
.ai形式
Adobe Illustratorの独自ファイル形式。ベクターデータを保存する際に使われる業界標準的なフォーマット。CorelDRAW 2026はこの形式を直接開いて編集・保存できる互換性を持つ。
AIクレジット(クレジット制)
生成AI機能を使うたびに消費される”使用量の単位”。消費量はAIモデルによって異なり、heise onlineの報告ではFlux Schnellは1枚あたり2クレジット、Nano Bananaは16クレジットを消費するとされる。プレスリリースにある「2,000クレジットで最大1,000枚」という表記はFlux Schnell使用時の上限値であり、モデルによって実際の生成可能枚数は大きく変わる。
Artist Intelligence(アーティスト・インテリジェンス)
Corelがバージョン2026で掲げたコンセプト。「AI=Artificial Intelligence(人工知能)」ではなく「AI=Artist Intelligence(アーティストの知性)」と読み替え、人間の創造性をAIが”補助する”立場を明確にした設計思想。AIが主役ではなく、デザイナーの判断を尊重する点を強調している。
Flux Schnell
Black Forest Labsが開発したオープンソース系の画像生成AIモデル。高速な生成が特徴で、1枚あたりのクレジット消費が少ない。CorelDRAW 2026では画像生成モデルの選択肢の一つとして採用されている。
Stable Diffusion 3.5
Stability AIが開発した画像生成AIモデル。オープンソースとして広く普及しており、クオリティと汎用性のバランスに優れる。CorelDRAW 2026でも選択可能なモデルの一つ。
永続ライセンス(買い切り)
一度購入すれば追加費用なく使い続けられるソフトウェアのライセンス形態。Adobeをはじめ多くのソフトウェアがサブスクリプション(月額・年額課金)へ移行する中、CorelDRAW 2026は引き続きこの選択肢を提供している。ただしAIクレジットはサブスクリプション契約者が毎月2,000クレジットを受け取れるのに対し、買い切り版は2,000クレジットの一度限りの付与となる。
【参考リンク】
CorelDRAW 日本語公式サイト(外部)
製品情報・機能紹介・無料トライアル(15日間)の申し込みが可能。グローバル版の最新情報も随時更新されている。
Corel Corporation 公式サイト(外部)
CorelDRAW®、PaintShop Pro®、Parallels®、WinZip®などを擁するソフトウェア企業。カナダ・オタワを本拠地とする。
ソースネクスト株式会社(外部)
CorelDRAW Graphics Suite 2026の日本国内における販売・サポートを担当。東京都千代田区に本社を置き、多数の海外ソフトウェアの日本語版を展開している。
Black Forest Labs(Fluxモデル開発元)(外部)
CorelDRAW 2026に採用された画像生成モデル「Flux Schnell」の開発元。高品質かつ高速な画像生成モデルとして注目を集めるAIスタートアップ。
Stability AI(Stable Diffusion開発元)(外部)
CorelDRAW 2026に採用された「Stable Diffusion 3.5」の開発元。オープンソースの画像生成AIを広く普及させた企業として知られる。
【参考記事】
Introducing AI-Powered Creativity in CorelDRAW Graphics Suite 2026(GlobeNewswire)(外部)
Corel Corporation公式プレスリリース(2026年3月3日)。買い切り価格$549 USD・年間サブスクリプション$269 USD・クレジット制度の詳細が明記された一次情報源。
AI Image Generators for CorelDraw Graphics Suite 2026(heise online)(外部)
ドイツの著名ITメディアによるレビュー。Nano BananaのGoogle Geminiベース説・モデル別クレジット消費量(Nano Banana:16、Flux Schnell:2)を報告した技術的詳細記事。
CorelDRAW Graphics Suite 2026: AI Tools and Key New Features(softprom)(外部)
「Artist Intelligence」コンセプトの詳細・Apple Silicon対応強化・競合比較など、技術的観点から網羅的に解説した記事。
CorelDRAW Graphics Suite 2026 Launches With AI Image Generation(Impressions Magazine)(外部)
印刷・サインビジネス専門誌による業界目線のレポート。Nano Bananaリミックス機能の実務的な活用シーンを評価した記事。
What’s new in CorelDRAW Graphics Suite 2026(CorelDRAW公式ブログ)(外部)
Corel公式による新機能の詳細解説。サブスクリプション限定特典と買い切り版の違い・クレジット制度の正確な仕様を確認した一次ソース。
【編集部後記】
「Adobeしか選択肢がない」と思い込んでいた時代は、もう終わりを迎えつつあるのかもしれません。
CorelDRAWのような買い切り型のツールにAIが本格統合されていく流れは、私たちクリエイターの働き方や選択肢をどう変えていくのでしょうか。皆さんは今、どんなデザインツールと向き合っていますか?