Vertical Aerospaceと丸紅、2026年大阪湾でeVTOL実証飛行へ──関西で電動エアタクシー路線開発を加速

Vertical Aerospaceと丸紅、2026年大阪湾でeVTOL実証飛行へ──関西で電動エアタクシー路線開発を加速

Vertical Aerospace(NYSE: EVTL)と丸紅は2月4日、シンガポール・エアショーで日本における電動エアタクシーサービスの商用化加速を発表した。両社は2026年に大阪湾エリアでパイロット操縦による実証飛行を計画している。

関西地域での路線開発では、地上交通と比較して最大80%の移動時間短縮を見込む。想定されるユースケースは、大阪から淡路島や小豆島への観光アクセス、泉佐野から大阪・神戸への空港シャトル、大阪・兵庫地区での緊急対応支援などである。

Valoは4人乗りのeVTOL機で、最高時速240km、最大160km飛行可能、運航時の排出はゼロとなる。丸紅は200機の条件付き事前発注のうち最初の25機の事前納入金を支払い済みである。JCABは2023年に型式承認プログラムへの申請を受理し、Vertical AerospaceはUK CAAによる2028年の型式認証を目標としている。

From: 文献リンクVertical Aerospace Advances Japan Commercialisation with Marubeni Via Electric Air Taxi Routes

【編集部解説】

このニュースは、電動垂直離着陸機(eVTOL)の商用化が、単なる技術デモンストレーションの段階から、実際の路線設計とビジネスモデル構築の段階へと移行しつつあることを示しています。Vertical Aerospaceは英国ブリストルに本社を置く企業で、既にAmerican AirlinesやJapan Airlinesなど約1500機の事前注文を獲得しており、eVTOL業界では注目される存在です。

日本、特に関西が主要市場として選ばれた背景には、いくつかの戦略的理由があります。まず、国土交通省航空局(JCAB)が2023年に型式承認プログラムへの申請を受理するなど、規制当局との協力体制が整っている点が挙げられます。また、2025年大阪万博では2900万人以上の来場者がValoのキャビン体験に触れる機会があり、社会的受容性の醸成という点でも前進しています。

関西地域が「主要路線」として評価される理由は、大阪湾を中心とした地理的特性にあります。淡路島や小豆島といった島嶼部へのアクセス、関西国際空港と都市部を結ぶファースト・ラストマイル輸送、そして万博や国際会議などの大規模イベント需要という、多様なユースケースが想定できる地域です。

技術的な観点から見ると、Valoの仕様は現実的な商用運航を前提としたものになっています。最大160kmという航続距離は、関西圏内の主要都市間移動をカバーするには十分であり、最高時速240kmは地上交通との明確な時間優位性を生み出します。特筆すべきは、運航時の排出ゼロという点で、これは都市部での騒音規制や環境規制をクリアする上で重要な要素となります。

一方で、商用化に向けた課題も存在します。最大の障壁は認証プロセスで、Vertical Aerospaceは2028年にUK Civil Aviation Authority(CAA)による型式認証取得を目指していますが、その後のJCABによる承認プロセスにも時間を要します。また、離着陸場所(バーティポート)の整備、充電インフラの構築、運航管理システムの確立といった、エコシステム全体の構築が必要です。

丸紅が200機のうち最初の25機の事前納入金を支払ったという事実は、単なる関心表明を超えた、具体的な投資判断がなされたことを意味します。総合商社としての丸紅は、航空機運航だけでなく、インフラ整備や関連ビジネスの展開まで見据えている可能性が高いでしょう。

潜在的なリスクとしては、技術的な安全性の実証、悪天候時の運航制限、初期の高コスト構造による料金設定の課題などが挙げられます。eVTOLは既存のヘリコプターと比較して静音性に優れるとされていますが、都市部での頻繁な運航が実現した場合の累積的な騒音影響については、実運用を通じた検証が必要になります。

長期的な視点では、このプロジェクトは日本の都市交通システムに構造的な変化をもたらす可能性を秘めています。地上の渋滞に制約されない三次元の移動手段が実用化されれば、都市計画や不動産価値、さらには人々の居住地選択にまで影響を及ぼすかもしれません。2026年の実証飛行は、そうした未来への重要な一歩となるでしょう。

【用語解説】

eVTOL(イーブイトール)
Electric Vertical Take-Off and Landingの略で、電動垂直離着陸機を指す。従来のヘリコプターと異なり、電動モーターとバッテリーで駆動し、垂直に離着陸できる航空機。運航時の排出ガスがゼロで、騒音も小さいことから、都市部での次世代エアモビリティとして期待されている。

AAM(Advanced Air Mobility)
先進的な航空モビリティを指す概念で、eVTOLなどの新型航空機を活用した都市部や地域間の輸送システム。従来の航空輸送とは異なり、より短距離で頻繁な運航を想定し、地上交通の補完や代替を目指す。

JCAB(国土交通省航空局)
Japan Civil Aviation Bureauの略。日本における航空機の安全性や運航基準を管理する規制当局。新型航空機の型式承認プロセスを担当し、eVTOLの商用化に向けた認証の鍵を握る組織である。

バーティポート
eVTOLが離着陸するための施設。ヘリポートと類似しているが、より小規模で都市部に設置可能な設計が想定されている。充電設備や乗客待合スペースなどを備える。

型式認証
航空機が安全基準を満たしていることを規制当局が証明する制度。新型航空機が商用運航を開始する前に必須のプロセスで、設計、製造、試験飛行などを通じて安全性が厳格に審査される。

【参考リンク】

Vertical Aerospace 公式サイト(外部)
英国ブリストルに本社を置く電動航空機開発企業。eVTOL機「Valo」を開発中。

丸紅株式会社 公式サイト(外部)
日本の大手総合商社。航空・モビリティ部門でAAMエコシステム開発を主導。

国土交通省航空局(JCAB)(外部)
日本の航空行政を担当。航空機の安全基準策定と型式承認を管理する。

【参考記事】

Vertical Aerospace lays blueprint for air taxi routes in tech-savvy Japan(外部)
航空専門メディアAeroTimeによる報道。関西地域の具体的な路線について詳述。

Vertical advances air taxi plans with Japan routes and Singapore EMS trials(外部)
航空宇宙専門メディアによる分析。アジア戦略全体を理解できる記事。

Vertical Aerospace Advances Japan Commercialisation with Marubeni(外部)
Yahoo Financeに掲載。2025年大阪万博の来場者数など背景情報が充実。

 

 

【編集部後記】

2026年の大阪湾での実証飛行は、私たちが「空飛ぶクルマ」と呼んできた未来を、いよいよ現実のものとして体験できる機会になるかもしれません。関西にお住まいの方は、実際に目にする可能性もあるでしょう。もし実用化されたら、みなさんはどんな場面でeVTOLを使ってみたいですか。通勤や観光、それとも緊急時の移動手段として。三次元の移動が日常になったとき、私たちの暮らしや都市のあり方はどう変わっていくのか。一緒に考えていけたら嬉しいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です