Uniswap LabsがAI Agent Skillsを発表、68億ドル規模のDEXを自律型エージェントに開放

Uniswap LabsがAI Agent Skillsを発表、68億ドル規模のDEXを自律型エージェントに開放

Uniswap Labsは2026年2月21日、開発者プラットフォームのベータ版と、AIエージェント向けツール群「AI Agent Skills」を公開した。ETHDenverハッカソンに合わせた発表で、Wu Blockchainが報じた。

Skillsは7種類あり、Swap Integration、Swap Planner、Liquidity Planner、CCA Configurator、CCA Deployer、v4 Security Foundations、viem Integrationで構成される。これにより自律型ソフトウェアエージェントが、トークンスワップの実行、流動性ポジションの管理、Continuous Clearing Auctionsの設定・デプロイ、Uniswap v4フックとの連携を人間の操作なしに行える。

インストールは単一のCLIコマンドで完了し、Claude Code Marketplaceからも利用可能である。2026年2月時点でUniswapの総預かり資産は複数チェーンにわたり約68億ドル、取引量ベースで最大の分散型取引所である。Phemexによると、発表後にUNIトークンは6.11%上昇した。

From: 文献リンクUniswap Labs Ships AI Agent Skills So Bots Can Swap, Manage Liquidity, and Run Auctions Without Human Input

【編集部解説】

今回の発表の本質は、DeFi最大のプロトコルが「AIエージェントをファーストクラスのユーザーとして迎え入れた」という点にあります。これまでDeFiの操作主体は人間を前提に設計されてきましたが、Uniswap Labsは自律型ソフトウェアが直接プロトコルと対話するための標準化されたインターフェースを、オープンソースで提供し始めました。なお、Uniswap Labs自身の公式発表は2月20日であり、Wu Blockchainによる報道が翌21日に行われています。

この動きを理解するには、Uniswap v3が2021年に導入した「集中流動性」の仕組みを振り返る必要があります。従来のAMM(自動マーケットメーカー)では、流動性は全価格帯に均等に分散されていました。v3では、LPが自分の資金を特定の価格レンジに集中させることで資本効率を大幅に高められるようになった一方、市場がそのレンジを外れるとポジションは手数料を稼げなくなります。つまり、常にレンジを監視し調整する「アクティブ運用」が不可欠になりました。

この構造は、24時間365日の監視体制と高度な定量分析を持つプロのマーケットメーカーに圧倒的な優位性をもたらしました。個人のLP参加者の多くは、最適なレンジ設定やリバランスのタイミングを逃し、期待した利回りを得られないケースが少なくありません。AI Agent Skillsは、まさにこの格差を技術的に埋めようとするものです。

さらに注目すべきは、今回のリリースが単発の機能追加ではなく、プロトコルスタック全体を対象としている点です。スワップ実行、流動性管理、オークション、v4フック開発、EVMレベルのインタラクションまでカバーしており、Uniswapを「DEX」から「AIがアクセス可能なDeFiインフラレイヤー」へと再定義する意図が読み取れます。

タイミングも重要です。今回の発表はETHDenverハッカソンに合わせたものですが、その10日前の2026年2月11日には、BlackRockのトークン化米国債ファンド「BUIDL」がSecuritizeとの提携を通じてUniswapX上で取引可能になるという発表がありました。BlackRockはUNIトークンへの戦略的投資も行っています。機関投資家がDeFiインフラに直接参入し、同時にAIエージェントがそのインフラ上で自律的に動作する——この2つの流れが同じプロトコル上で同時に進行していることは、DeFiの成熟を象徴しています。

ポジティブな側面としては、開発者プラットフォームのベータ版により、ウォレットやアプリケーションがUniswapの機能を容易に統合できるようになったことが挙げられます。これまで数週間を要していた統合作業が数分で完了できるようになり、DeFiのエコシステム拡大を加速させる可能性があります。

一方で、潜在的なリスクも無視できません。AIエージェントは人間よりはるかに速い速度で意思決定と実行を行うため、設定ミスやバグが発生した場合の損失もマシンスピードで拡大します。v4 Security Foundations Skillはフック開発に特化したセキュリティガイダンスを提供していますが、エージェント駆動の取引判断そのものに対する安全機構は、現時点では開発者自身の責任に委ねられています。

規制面では、AIが自律的に金融取引を行う場合の法的責任の所在が、既存の枠組みでは十分に定義されていません。特にCCAを通じたトークンローンチにAIエージェントが参加するケースでは、証券規制との整合性が今後の論点になり得ます。

長期的に見れば、今回の発表はDeFiの利用者像を根本的に変える布石と捉えることができます。プロトコルの主要ユーザーが人間からソフトウェアエージェントへと移行する時代において、「エージェントフレンドリーなインフラ」を最初に提供したプロトコルが、次の競争優位を獲得する可能性があります。

【用語解説】

DEX(分散型取引所)
中央管理者を介さず、スマートコントラクトによってトークンの売買を仲介する取引所の総称。ユーザーは自身のウォレットから直接取引できる。

TVL(Total Value Locked/総預かり資産)
DeFiプロトコルのスマートコントラクトに預け入れられている資産の総額を示す指標。プロトコルの規模や信頼度を測る目安として広く用いられる。

集中流動性(Concentrated Liquidity)
Uniswap v3で導入された仕組み。流動性提供者(LP)が自分の資金を特定の価格レンジに集中させることで、資本効率を高める設計。レンジ外に価格が動くと手数料収入が停止するため、アクティブな管理が求められる。

LP(Liquidity Provider/流動性提供者)
DEXの流動性プールにトークンのペアを預け入れ、取引手数料の一部を報酬として得る参加者のこと。

インパーマネントロス(Impermanent Loss)
流動性プールに預けた資産の価格が変動した際、単にウォレットで保有していた場合と比較して生じる評価損。価格が元に戻れば解消されるため「一時的」と呼ばれるが、実際には恒久的な損失となるケースも多い。

AMM(Automated Market Maker/自動マーケットメーカー)
オーダーブックを使わず、数式(例:x×y=k)に基づいてトークン価格を自動算出する仕組み。Uniswapの中核的なメカニズムである。

CCA(Continuous Clearing Auctions/継続的クリアリングオークション)
Uniswapが導入した、より公正なトークン配布を目的としたオークション方式。トークンローンチ時の価格発見と配布を連続的に処理する。今回のSkillsではconfiguratorとdeployerがCCA関連機能を担う。

フック(Hooks)
Uniswap v4で導入された拡張機構。外部スマートコントラクトを流動性プールに接続し、スワップや流動性操作の前後にカスタムロジックを実行できる。動的手数料やリミットオーダーなど多様な機能の実装が可能になる。

viem / wagmi
Ethereumブロックチェーンとの対話に使われるTypeScript向けライブラリ群。viemはEVMとの低レベルなインタラクション、wagmiはReactベースのウォレット接続を担う。

EVM(Ethereum Virtual Machine)
Ethereumネットワーク上でスマートコントラクトを実行する仮想マシン。Ethereumおよび多くのEVM互換チェーンの基盤技術である。

UniswapX
Uniswap Labsが開発したオフチェーン注文ルーティングシステム。流動性を集約し、オンチェーンで取引を決済する仕組み。BlackRockのBUIDLファンドの取引にも使用されている。

【参考リンク】

Uniswap Labs(公式サイト)(外部)
最大手DEX Uniswap Protocolの開発を主導。Web App、Wallet、Trading APIなどを提供している。

Uniswap AI GitHubリポジトリ(外部)
今回発表されたAI Agent Skillsのオープンソースリポジトリ。ソースコードとドキュメントが公開されている。

Uniswap Developer Platform(外部)
今回ベータ公開された開発者プラットフォーム。APIキー生成やスワップ・流動性機能の統合が可能である。

Uniswap v4 公式ドキュメント(外部)
v4のアーキテクチャ、フック、シングルトンコントラクト、フラッシュアカウンティングなどの技術仕様を解説。

ETHDenver(外部)
世界最大規模のEthereumコミュニティイベント。2026年は2月17〜21日にコロラド州デンバーで開催された。

DefiLlama(Uniswap)(外部)
DeFiプロトコルのTVL・手数料・取引量を横断的に集計するデータアグリゲーター。バージョン別TVLを確認可能。

BlackRock BUIDL統合(Uniswap Blog)(外部)
2026年2月11日発表。BlackRockのトークン化米国債ファンドBUIDLのUniswapX統合に関する公式ブログ記事。

Securitize(外部)
実世界資産(RWA)のトークン化を専門とするプラットフォーム。BlackRock BUIDLの発行・コンプライアンス層を担う。

【参考記事】

BlackRock takes first DeFi step, lists BUIDL on Uniswap as UNI jumps 25%(外部)
BlackRockがBUIDL(TVL約22億ドル)をUniswapX上で取引可能に。UNI25%上昇。Securitizeが規制対応を担当。

BlackRock, Securitize tap DeFi giant Uniswap for direct onchain BUIDL trading(外部)
BUIDL(約24億ドルAUM)のオンチェーン取引をUniswapXで開始。BlackRockがUNIトークンへ戦略的投資を実施。

Decentralized Finance Market Statistics 2026(CoinLaw)(外部)
2026年初頭のDeFi市場TVLを130〜140 billion dollarと推定。Uniswap約68億ドルなど主要プロトコルを比較。

Uniswap Launches Seven AI Agent Skills for Onchain Trading(CoinFomania)(外部)
7つのSkillsの技術概要と開発者コミュニティの初期反応を報道。エージェント非依存設計である点を強調している。

Uniswap Labs Releases Seven Skills for AI Agents(CryptoAdventure)(外部)
Skillsの設計思想を分析。自律型ボットではなく構造化されたビルディングブロックとして位置づけられると指摘。

BlackRock offers DeFi trading for the first time(Fortune)(外部)
BUIDLファンド(市場価値約18億ドル)のUniswap上場経緯を報道。創業者と1年半の交渉プロセスにも言及。

Uniswap Launches 7 AI Skills to Automate DeFi Operations(KuCoin)(外部)
公式発表日を2月20日と記載。初期テストでトランザクション失敗率低減と実行タイミング改善が確認されたと報道。

【編集部後記】

DeFiの操作主体が「人間」から「ソフトウェアエージェント」へと広がり始めています。今はまだ開発者向けのツールキットですが、これがウォレットやアプリに組み込まれたとき、私たちの資産運用の選択肢はどう変わるのでしょうか。「AIに資産を任せる」という判断の境界線について、みなさんはどうお考えですか。ぜひご意見をお聞かせください。

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