AI×3Dプリント×ロボットアーム——撃墜ドローンを回収する「Project R.E.D.」、米陸軍ドローン競技会で頂点に

AI×3Dプリント×ロボットアーム——撃墜ドローンを回収する「Project R.E.D.」、米陸軍ドローン競技会で頂点に

2026年2月17日から19日にかけて、アラバマ州ハンツビルのハンツビル試験場で米陸軍初の「Best Drone Warfighter Competition」が開催された。

現役部隊、州兵、陸軍予備役から兵士が参加し、「最優秀オペレーター」「最優秀戦術分隊」「最優秀イノベーション」の3部門で競われた。イノベーション部門では、ペンシルベニア州兵・第28歩兵師団の4名のチームが優勝した。同チームの「Project R.E.D.(Recovery Exploitation Drone)」は、AI搭載の物体認識ソフトウェアで撃墜されたドローンを識別し、3Dプリント製カーボンファイバー製ロボットアームで回収するシステムである。審査は初日のプレゼンテーションと2日目のライブデモンストレーションで構成された。

同チームには、Army Research Labのドローン試作機と1年間の研究開発協定も授与された。第28歩兵師団は3部門すべてに出場した唯一の州兵部隊であった。2月19日の授賞式にはダン・ドリスコル陸軍長官が出席した。

From: 文献リンクPennsylvania Guard Team Wins Innovation Category at Army Drone Competition

【編集部解説】

今回の「Best Drone Warfighter Competition」は、米陸軍がドローン戦闘に特化した競技会を初めて開催したという点で注目に値します。Best RangerやBest Sapperといった伝統的な陸軍技能競技会の系譜に連なるもので、ドローン運用がもはや一部の専門部隊だけでなく、陸軍全体の基本能力として位置づけられ始めたことを象徴しています。

米陸軍公式発表によれば、この大会には200名以上の競技者と800名以上の参加者が集まりました。現役部隊、州兵、予備役の枠を超えた参加が実現しており、UAS運用の裾野の広がりを示しています。

イノベーション部門で優勝した「Project R.E.D.」が特に興味深いのは、その発想の転換にあります。現代の戦場ではドローンは「使い捨て」の消耗品と見なされがちですが、このプロジェクトは撃墜されたドローンを回収し、搭載されたデータの活用や機体の修理再利用を目指すものです。AI物体認識による敵味方識別と、3Dプリント製カーボンファイバー製ロボットアームという要素技術の組み合わせにより、戦場でのドローン運用サイクルを根本的に変える可能性を秘めています。

この大会の背景には、米国防総省が推進する大規模なドローン戦略があります。ピート・ヘグセス国防長官(戦争長官)が主導する「Drone Dominance Program」は、総額約11億ドル、4段階にわたる調達プログラムで、2027年までに20万機以上の低コスト小型ドローンを調達する計画です。2026年2月3日には第1段階「the Gauntlet」に参加する25社が選定され、同月18日からジョージア州フォートベニングで評価が開始されました。

ウクライナ戦争がこの動きを加速させた点は見逃せません。ラトビアの情報機関の報告によれば、ロシア・ウクライナ戦争における死傷者の70〜80%はドローンに起因するとされ、ウクライナ側だけで1日あたり9000機のドローンを消費しているとも報じられています。こうした現実が、米軍のドローン大量調達と人材育成の両面を加速させています。

大会の運営面からも示唆が得られます。DefenseScoopの報道によると、UAS変革担当のニコラス・ライアン大佐は、競技を通じて兵士間のコミュニケーションの課題や、装備の標準化の必要性が浮き彫りになったと指摘しています。ドローン操作の技術だけでなく、運用に関する統合的な訓練体系の構築が今後の課題となりそうです。

一方、潜在的なリスクにも目を向ける必要があります。AI搭載ドローンによる自律的な敵味方識別は、誤認のリスクと常に隣り合わせです。Project R.E.D.のような回収システムが実戦配備される場合、敵のドローンに仕掛けられた罠や偽装への対処も求められるでしょう。また、バイデン政権下のReplicator計画では、目標の「数千機」に対して実際に納入されたのは「数百機」にとどまったという議会調査局の指摘もあり、大量調達計画の実現性は未知数のままです。

ドローン技術の民主化は軍事分野にとどまりません。3Dプリンティングによる迅速なプロトタイピング、AI物体認識、自律回収といった技術は、災害対応やインフラ点検といった民生分野への応用可能性も十分にあります。州兵チームという、民間の知見と軍事の実務を兼ね備えた組織から生まれたイノベーションであるという点が、その可能性をより説得力のあるものにしています。

【用語解説】

Best Drone Warfighter Competition(最優秀ドローン戦闘員コンペティション)
米陸軍が2026年に初めて開催したドローン技能競技会。Best RangerやBest Sapperといった伝統的な陸軍技能大会と同じ系譜に位置づけられ、「Agile, Adaptive, Lethal(機敏・適応・致命的)」をテーマに掲げる。最優秀オペレーター、最優秀戦術分隊、最優秀イノベーションの3部門で構成される。

Project R.E.D.(Recovery Exploitation Drone)
第28歩兵師団チームが開発した回収・情報活用ドローンシステム。AI搭載の物体認識ソフトウェアで撃墜された敵味方のドローンを識別し、3Dプリント製カーボンファイバー製ロボットアーム(クロー付き)で対象を掴んで持ち帰る。

UAS(Unmanned Aircraft System:無人航空機システム)
ドローン本体だけでなく、地上管制装置、通信リンク、支援装備を含む無人航空機の運用体系全体を指す用語である。

FPV(First Person View)ドローン
操縦者がゴーグルやモニターを通じてドローン搭載カメラの映像をリアルタイムで見ながら操作する方式のドローン。一人称視点による直感的な操縦が可能で、軍事用途では偵察や攻撃に用いられる。

SALUTE報告
Size(規模)、Activity(活動)、Location(位置)、Unit(部隊)、Time(時刻)、Equipment(装備)の頭文字を取った敵活動報告の標準書式である。

Drone Dominance Program(ドローン優位プログラム)
米国防総省が推進する大規模なドローン調達プログラム。総額約11億ドル、4段階で構成され、2027年までに20万機以上の低コスト小型攻撃ドローンを取得する計画である。

Replicator計画
バイデン政権下で2023年に開始された、安価な自律型ドローンの大量調達・配備を目的とした計画。目標の達成に課題を残し、現在はDefense Autonomous Warfare Group(DAWG)に再編されている。

州兵(National Guard)
米国の各州に配置される予備軍事力。平時は州知事の指揮下で災害対応などにあたり、連邦政府の命令により海外派遣も行う。民間での職業を持ちながら軍務に従事する「市民兵士」としての性格を持つ。

【参考リンク】

Army Aviation Association of America(AAAA)公式サイト(外部)
1957年設立の非営利団体。米陸軍航空の利益を代表する唯一の組織で、今回の大会の主催団体。

Best Drone Warfighter Competition 2026 公式ページ(外部)
2026年大会の公式情報ページ。大会概要、スケジュール、関連ワークショップの情報を掲載している。

DVIDSHUB — Best Drone Warfighter Competition 特集ページ(外部)
米国防総省の映像・画像配信サービスDVIDSによる大会特集ページ。公式写真や動画が掲載されている。

Army Research Laboratory(ARL)公式サイト(外部)
米陸軍の基礎・応用研究機関。優勝チームにドローン試作機と1年間の研究開発協定を授与した。

National Guard Bureau Innovation Hub(外部)
州兵のイノベーション推進を目的とした情報ハブ。州兵による技術革新の取り組みを紹介している。

【参考動画】

U.S. Army Best Drone Warfighter Competition — 大会初日映像(DVIDSHUB公式)(外部)
2026年2月18日の大会初日の様子を収めた米陸軍公式映像。ドローン操縦や戦術競技の模様が記録されている。

U.S. Army Best Drone Warfighter Competition — 授賞式映像(DVIDSHUB公式)(外部)
2026年2月19日の大会最終日および授賞式の公式映像。最優秀オペレーター部門の競技シーンも収録。

【参考記事】

Army announces winners of inaugural Best Drone Warfighter Competition(外部)
米陸軍公式発表。参加者200名以上、来場者800名以上の大会規模と全3部門の受賞者を記載した一次情報。

Triumphs, trials and a tight timeline: the Army crowns its best drone soldiers for the first time(外部)
DefenseScoop報道。ライアン大佐の発言や装備標準化の課題、大会企画の経緯を詳細に伝えている。

Army’s Inaugural Drone Awards Competition Draws 200-Plus Participants(外部)
Military.com報道。Drone Dominance戦略との関連やハンツビル大学の試験場運営への関与を紹介。

Pentagon names 25 vendors for Drone Dominance Program Phase I(外部)
DefenseScoop報道。第1段階で25社選定、1億5000万ドルの予算、総額11億ドル超の計画詳細を記載。

For the Pentagon’s drone push, the “factory is the weapon”(外部)
Axios報道。ウクライナ戦争の死傷者70〜80%がドローン起因、1日9000機消費という数値を引用。

National Guard team clinches award for clawed drone at Army competition(外部)
Military Times報道。Project R.E.D.のAI敵味方識別機能やArmy Research Labとの協定の詳細を紹介。

Army’s first drone warfighter competition crowns winners(外部)
Washington Examiner報道。ARL研究者のコメントや戦術分隊部門の具体的な課題内容を詳しく報じている。

【編集部後記】

ドローンが「消耗品」として使い捨てられる時代に、それを「回収して再利用する」という発想が現場の兵士たちから生まれたことに、私たちは強い関心を持ちました。AI、3Dプリンティング、ロボティクスといった技術の組み合わせが、軍事だけでなく災害対応やインフラ点検の現場をどう変えていくのか。みなさんはこの「回収と再利用」というアプローチに、どんな可能性を感じますか?

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