Ultrahuman Ring PRO発表、バッテリー15日間とAI「Jade」でヘルスケアの未来へ

Ultrahuman Ring PRO発表、バッテリー15日間とAI「Jade」でヘルスケアの未来へ

Ultrahumanは、第3世代スマートリング「Ring PRO」とリアルタイム・バイオインテリジェンスAI「Jade」を発表した。Ring PROはチタンユニボディ製で、最大15日間のバッテリー駆動時間と250日分のオンデバイスデータ保存に対応する。

心拍センシングアーキテクチャの再設計、オンチップ機械学習搭載のデュアルコアプロセッサを備える。緊急時にリングを切断しやすくするProRelease Technologyも搭載される。PRO Charging Caseは最大45日分のバッテリーと1年分のデータ保存機能を持つ。

Jadeは、Ringデータ、120以上のBlood Visionバイオマーカー、M1 CGMグルコーストラッキング、Ultrahuman Homeの環境データを統合し、リアルタイムで実行可能なガイダンスを提供するAIである。StandardモードとDeep Research Modeの2モードを備える。Ring PROは米国を除きグローバルに発売され、価格は479ドル、出荷は3月開始である。最大115ドルの下取りオプションも用意される。Jadeは米国を含む全Ultrahumanユーザーに展開される。

From: 文献リンクUltrahuman Ring Pro is big on AI, health and is arriving soon | Shortlist

【編集部解説】

今回の発表を理解するうえで、まず押さえておくべき背景があります。Ultrahumanは2025年9月、米国国際貿易委員会(ITC)においてフィンランドのOURAとの特許紛争で敗訴し、同年10月21日付でスマートリングの米国への輸入および販売が禁止されました。RingConnがOURAとライセンス契約を結んで米国市場に残留したのに対し、Ultrahumanは現在も法的な膠着状態にあります。

つまり、Ring PROが米国を除くグローバル発売となっている理由は、単なる販売戦略ではなく、この特許紛争の直接的な結果です。元記事ではこの点に触れられていませんが、製品の評価にあたっては不可欠な文脈といえます。TechCrunchの報道によれば、Ultrahumanは新設計のRing PROを米国税関・国境警備局(CBP)に提出し、輸入許可の取得を目指しているとのことです。

それでも、Ultrahumanの事業は堅調に推移しています。TechCrunchによると、年間売上高のランレートは約1億5000万ドルに達し、2025年3月期の営業収益は6400万ドルでした。ただし、訴訟費用や関税、リデザインへの投資により、利益率の縮小が見込まれています。

ハードウェアとしてのRing PROの注目点は、最大15日間というバッテリー駆動時間です。Wareable誌のテストでは、Oura Ring 4のバッテリーは7〜8日間とされており、Ring PROはその約2倍に相当します。また、Ouraの充電ケースが別売り99ドルであるのに対し、Ring PROには45日分のバッテリーを持つPRO Charging Caseが標準で付属します。479ドルという価格はOura Ring 4の349ドルより130ドル高いものの、充電ケース込みの総コストで考えると差は縮まります。

さらに重要なのは、Ultrahumanがサブスクリプション不要のビジネスモデルを維持している点です。Oura Ring 4はフル機能の利用に月額5.99ドルのサブスクリプションが必要ですが、Ring PROではすべての機能が本体価格に含まれます。長期的なランニングコストを考慮すると、この違いは無視できません。

一方、AI基盤であるJadeは、この発表のもう一つの核心です。従来のウェアラブルAIが過去データの要約にとどまっていたのに対し、Jadeはリングデータ、血液バイオマーカー、持続血糖モニタリング、環境データをリアルタイムに統合し、呼吸法の指示や心房細動の検出といったアクションを実行できます。Ultrahumanが長期的に目指すのは、24時間365日バックグラウンドで動作する自律型ヘルスエージェントの実現です。同社はこのアプローチを、テスラのFull Self-Drivingモデルになぞらえた「継続的リアルタイム処理」と位置づけています。

ただし、この「リアルタイム・バイオインテリジェンス」という概念には慎重な評価が必要です。医療機器としての認証状況は現時点で明確ではなく、AFib検出のような機能が各国の薬事規制上どのように扱われるかは、今後の焦点となります。健康データをAIが自律的に解釈し行動を促すという方向性は、精度と安全性の両面で高いハードルを伴います。

スマートリング市場全体に目を向けると、Counterpoint Researchによれば、2025年のグローバル出荷台数は前年比約80%増と急成長しています。OURAが市場の3分の2以上を占め、Ultrahumanは第2位の位置にあります。IDCのデータでは、2025年第3四半期の出荷台数は前年同期比約30%増の約100万台に達し、Ultrahumanはその約25%を獲得しています。

Ring PROとJadeの組み合わせが示しているのは、ウェアラブルデバイスの役割の転換です。身体データを受動的に記録する段階から、リアルタイムに解釈して能動的に介入する段階へ。この方向性が実現すれば、パーソナルヘルスケアの在り方そのものが変わる可能性を秘めています。しかし同時に、データプライバシー、医療機器規制、AIの判断精度という課題が、業界全体にとって避けて通れない論点として浮上してくることも確かです。

【用語解説】

バイオインテリジェンスAI(Biointelligence AI)
生体データをリアルタイムに解析し、健康に関する洞察や行動提案を自律的に行うAIシステム。従来の過去データ分析型AIとは異なり、即座に介入やガイダンスを実行する点が特徴である。

AFib検出(Atrial Fibrillation Detection)
心房細動の検出機能。心房細動は不整脈の一種で、脳卒中のリスク因子とされる。スマートリングの光学式心拍センサーにより、夜間の連続モニタリングから異常なリズムを検知する。

CGM(Continuous Glucose Monitoring)
持続血糖モニタリング。皮下に挿入したセンサーにより血糖値をリアルタイムで計測する技術。Ultrahumanでは「M1」というCGM製品を展開し、Abbott社のFreeStyle Libreセンサーと連携する。

ProRelease Technology
Ultrahuman Ring PROに搭載された安全機能。指の腫れやけがが発生した場合にリングを容易に切断できるようにする技術。24時間装着を前提とするウェアラブルにおける緊急時対応として設計された。

ITC(International Trade Commission)
米国国際貿易委員会。貿易紛争を扱う米国の連邦機関。特許侵害に基づく輸入差止命令を発行する権限を持つ。2025年にOURAの特許侵害訴訟でUltrahumanに対する排除命令を発行した。

【参考リンク】

Ultrahuman Ring PRO 公式製品ページ(外部)
Ring PROのスペック、カラーバリエーション、Jade AIの詳細、プレオーダー情報を掲載する公式ページ。

OURA公式ブログ:ITC特許裁定に関する声明(外部)
OURAがUltrahumanおよびRingConnとの特許紛争におけるITC最終裁定について公式見解を述べたブログ記事。

Ultrahuman公式ブログ:ITC裁定後の対応声明(外部)
米国ITC裁定後のUltrahumanの対応方針、既存ユーザーへのサポート継続、新製品開発の方針を表明した記事。

【参考記事】

TechCrunch:Ultrahuman bets on redesigned smart ring to win back US market after Oura dispute(外部)
Ring PROの詳細スペック、OURA特許紛争の経緯、Ultrahumanの財務状況、スマートリング市場データを包括的に報道。

Tom’s Guide:The Ultrahuman Ring Pro is a flagship Oura Ring 4 competitor(外部)
Ring PROとOura Ring 4の価格・機能比較、充電ケース同梱の価格優位性、米国での入手不可問題を解説。

Wareable:Ultrahuman Ring Pro arrives with a 15-day battery to take on Oura(外部)
Oura Ring 4との実測バッテリー比較、Jade AIの機能詳細、OURAの他社への訴訟拡大について報道。

Android Authority:This smart ring is coming for Oura with two-week battery life(外部)
Ring PROの充電ケース込みの価格比較分析、サブスクリプション不要モデルの優位性を詳述した記事。

Trusted Reviews:Ultrahuman’s Pro smart ring can last for two weeks(外部)
JadeをテスラのFSDモデルになぞらえた分析、ProRelease Technologyの安全面での意義を解説。

Digital Trends:Ultrahuman’s new Ring Pro aims to end your smart ring battery worries(外部)
Ring PROのハードウェア仕様、PRO Charging Caseの機能一覧、Jade AIの展開範囲を詳細にまとめた記事。

BusinessWire:U.S. ITC Rules in Favor of ŌURA in Patent Case(外部)
2025年9月のITC最終裁定の公式プレスリリース。UltrahumanとRingConnへの排除命令の詳細を記載。

【編集部後記】

皆さんは、ウェアラブルデバイスに何を求めますか。睡眠の記録を「見る」だけで終わっていた時代から、AIが「次に何をすべきか」をリアルタイムで提案してくれる時代へ。その変化は確かに魅力的ですが、自分の身体データをAIに委ねることへの期待と不安は、きっと人それぞれだと思います。スマートリングという小さなデバイスが描く未来について、皆さんのお考えをぜひ聞かせてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です