NTTドコモがSOXAI RING 2を発売、サブスク不要の国産スマートリングが全国展開へ

NTTドコモがSOXAI RING 2を発売、サブスク不要の国産スマートリングが全国展開へ

NTTドコモは2026年2月27日、NTTドコモ・ベンチャーズが出資するSOXAIが開発した健康管理用スマートリングの新モデル「SOXAI RING 2」を発売した。同日からドコモオンラインショップおよび対象ECサイトで販売を開始し、3月下旬からは全国のドコモショップと昭和西川の対象3店舗でも取り扱う。

本製品は幅約6.7mm、厚み約2.7mm、重量約2gで、バッテリー駆動時間は前モデル「SOXAI RING 1.1」の最大9日間から最大14日間に延長された。独自開発のPPGセンサー「Deep Sensing™」を新搭載し、心拍数や血中酸素レベル、皮膚温度の計測精度が向上した。IP68相当/100m防水で、シチズン時計の表面硬化技術「デュラテクト」加工を採用する。価格は3万9980円(税込)。カラーはシルバー、マットシルバー、マットブラック、ピンクゴールドの4色展開である。

ドコモの「dヘルスケア」と連携し、歩数・消費カロリー・睡眠データの一元管理が可能となる。

From: 文献リンク健康管理用スマートリングの新モデル「SOXAI RING 2」を発売(NTTドコモ プレスリリース)

【編集部解説】

スマートリング市場は今、急速な転換期を迎えています。IDCのデータによれば、2025年のスマートリング出荷台数は前年比49%増と、同6%増にとどまったスマートウォッチを大きく上回る成長を記録しました。市場調査会社の推計では、2026年時点で約5億ドル規模のこの市場が、2032年には25億ドルを超える規模にまで拡大すると見込まれています。

そうした中で今回のSOXAI RING 2の発売が持つ意味は、単なる新製品の登場にとどまりません。これは「日本発のヘルステックが、グローバル市場でどこまで通用するか」を問う試金石でもあります。

現在、スマートリング市場はフィンランドのOura Healthが支配的な地位を築いています。Ouraは2024年12月に2億ドルの資金調達を実施し、評価額は50億ドルに達しました。米国防総省との9600万ドルの契約を獲得するなど、コンシューマー製品を超えた展開も進めています。一方で、Ouraは特許戦略においても攻勢を強めており、2025年にはUltrahumanやRingConnなど競合に対して米国際貿易委員会(ITC)を通じた輸入禁止措置を勝ち取りました。こうした知財を武器にした市場支配は、新興プレイヤーにとって大きな参入障壁となっています。

SOXAI RING 2が技術面で注目すべきは、独自開発のPPGセンサー「Deep Sensing」です。PPG(光電容積脈波)とは、LEDの光を皮膚に照射し、血流量の変化を光学的に検出する技術で、心拍数や血中酸素レベル、皮膚温度などの計測に用いられます。SOXAIはこのセンサーに「空間分解型多波長PPG」という構成を採用しており、同社によれば主要スマートリングブランドの中で世界最高水準の計測精度を実現したとしています。ams OSRAMやSTMicroelectronicsといった欧州の半導体メーカーとの技術提携も、センシング精度の向上に寄与しているとみられます。

ビジネスモデルの面では、サブスクリプション不要の買い切りモデルを採用している点が際立ちます。Oura Ring 4が本体価格5万2800円に加え月額999円のサブスクリプションを必要とするのに対し、SOXAI RING 2は3万9980円の一度の支払いで全機能が利用可能です。2年間の総所有コストで比較すると、その差は約3万7000円に達します。ただし、SOXAI側も「将来的に一部有料での機能を提供する可能性」を注記しており、この点は今後注視が必要でしょう。

もうひとつ見逃せないのは、NTTドコモの販売網に乗ったという事実です。SOXAIは2021年創業のスタートアップであり、初期にはクラウドファンディングでの発送遅延や品質管理、サポート体制に対する厳しい声もありました。今回、NTTドコモ・ベンチャーズからの出資を背景に、全国のドコモショップという強力な物理チャネルを獲得したことは、ブランド信頼性の面でも大きな転機です。さらに、量産においてはシャープの技術支援を受けて品質管理体制を強化したとされ、設計から製造・検査・データ管理まで国内完結を謳っています。

企業向け展開も注目に値します。NTTPCコミュニケーションズの「健康経営支援サービス」との連携では、従業員の睡眠・ストレスデータを組織レベルで可視化し、AIエージェントが行動改善を促す仕組みを構築しています。日本では2024年度から「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」認定の基準が一段と重視される中、こうしたウェアラブルデバイスを活用した従業員の健康管理ソリューションへの需要は、今後さらに高まる可能性があります。

一方で、留意すべき点もあります。SOXAI RING 2は医療機器ではなく、一般的なウェルネス・フィットネス目的の製品です。睡眠時無呼吸の「傾向」を検知する機能はあるものの、診断や治療を行うものではありません。この境界線は、ヘルステック製品全般に共通する規制上の課題であり、各国の薬事規制当局がウェアラブルデバイスをどう位置付けるかは、今後の市場成長に直接影響を及ぼすテーマです。

スマートリングというフォームファクターは、スマートウォッチに比べて画面を持たず、操作のインタラクションも限定的です。その制約の中で、睡眠・心拍・活動量といった「受動的な健康モニタリング」に特化し、指先という脈波の検出に有利な位置を活かすのがスマートリングの本質的な強みと言えます。

SOXAIのような日本発スタートアップが、国内の半導体技術と製造品質を活かしつつ、大手通信キャリアの販路とヘルスケアエコシステムを組み合わせるモデルは、海外勢が圧倒的なこの市場において独自のポジションを確立し得るアプローチです。グローバル市場でOuraやSamsungと正面から戦うのではなく、日本語対応・国内サポート・データの国内管理・サブスクリプション不要というローカライズされた価値提案で、まず国内市場を固めるという戦略の妥当性は高いと言えるでしょう。

【用語解説】

PPG(光電容積脈波)センサー
LED光を皮膚に照射し、血流量の変化を光学的に検出するセンサー技術である。心拍数、血中酸素レベル、皮膚温度などの計測に用いられ、スマートリングやスマートウォッチのバイタル計測の中核を担う。SOXAI RING 2が搭載する「Deep Sensing」は、多波長×空間分解型の構成を採用した独自PPGセンサーである。

IP68
電子機器の防塵・防水性能を示す国際規格(IEC 60529)の等級である。「6」は粉塵の侵入を完全に防ぐことを、「8」は一定の水深での継続的な水没に耐えることを意味する。SOXAI RING 2はIP68相当かつ100m防水を謳っている。

健康経営
従業員の健康管理を経営的な視点から捉え、戦略的に実践する取り組みである。NPO法人健康経営研究会の登録商標であり、経済産業省が「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」などの認定制度を運営している。

【参考リンク】

SOXAI公式サイト(外部)
2021年創業の日本のヘルステックスタートアップ。睡眠管理用スマートリング「SOXAI RING」シリーズを開発・販売している。

NTTドコモ・ベンチャーズ SOXAIへの出資に関するリリース(外部)
NTTドコモ・ベンチャーズがSOXAIへ出資した際の公式発表ページ。SOXAIの事業概要や出資の背景を記載している。

NTTPC「健康経営支援サービス」SOXAI RING 2企業向け販売開始(外部)
NTTPCコミュニケーションズがSOXAI RING 2を企業向けに販売開始した告知ページ。健康経営支援サービスとの連携詳細を記載。

dヘルスケア(NTTドコモ)(外部)
NTTドコモが提供するヘルスケアアプリ。歩数や体重などの健康データを管理し、ミッションクリアでdポイントを獲得できる。

【参考動画】

SOXAI RING 2 プロモーションムービー(SOXAI公式)

SOXAI RING 2 製品発表会(SOXAI公式)

【参考記事】

Smart Ring Market Size, Share | Industry Report [2025-2032](外部)
世界のスマートリング市場が2026年の5億1890万ドルから2034年に37億7240万ドルへ拡大するとの予測。Ouraの評価額50億ドルについても記載。

Soxai Ring 2 is a new Japanese titanium smart ring(NotebookCheck)(外部)
SOXAI RING 2のスペックを英語圏向けに詳報。幅6.7mm、バッテリー最大14日間、サブスク不要、約257ドルとして紹介している。

Best smart rings 2026: Oura, Samsung, and top alternatives(Wareable)(外部)
Ouraの特許戦略による競合への輸入禁止措置の経緯や、月額5.99ドルのサブスクモデルが競合参入機会となっている点を報じている。

Smart Rings Transform Wearable Tech(Packaging Digest)(外部)
スマートリング市場が2025年の4億1690万ドルから2032年に25億ドル超へ成長するとの予測。Oura累計500万台超や米軍向け製造施設の計画も報じている。

【編集部後記】

みなさんは「睡眠の質」をデータで確認したことはありますか?スマートリングは、身に着けるだけで自分の身体の状態を”見える化”してくれる、とても身近なテクノロジーです。海外勢が先行するこの分野に、日本発のプロダクトが独自の設計思想で挑んでいます。サブスクリプション不要という選択肢が広がることで、初めてのスマートリングへのハードルはぐっと下がりました。ご自身の健康との向き合い方を見直すきっかけとして、こうしたウェアラブルデバイスの動向に関心を寄せていただけたらうれしいです。

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