Startale・SBI・Sony、6,300万ドル調達——日本の金融がブロックチェーンと本格接続へ

Startale Groupは2026年3月26日、シリーズAラウンドで総額6,300万ドルの調達完了を発表した。2026年1月にSony Innovation Fundが実施した1,300万ドルの第1クローズに加え、SBI Groupが5,000万ドルを出資した。シンガポール拠点の同社は日本で事業を展開し、トークン化証券向けブロックチェーン「Strium」、円建てステーブルコイン「JPYSC」、ドル建てステーブルコイン「USDSC」、Soneium連携のコンシューマーアプリ「Startale App」を手がける。

調達資金はStriamのスケールアップ、JPYSCおよびUSDSCの普及拡大、Startale AppのSuperApp化に充てられる。CEO・渡辺創太は日本株に連動したトークン化株式の推進と円建てステーブルコインの普及を今年中に進めると述べた。日本では片山さつき財務大臣が暗号資産取引の証券取引所への統合を支持すると表明している。

From: 文献リンクSBI, Sony back Startale’s $63 million push to expand Japan’s tokenized finance stack

【編集部解説】

今回の資金調達を単なる「スタートアップへの投資ニュース」として読み流すのは、もったいない。この一件は、日本の金融システムがブロックチェーンと本格的に接続しはじめる「構造転換の予告編」として捉えるべきです。

まず、Startale Groupというプレイヤーを理解しておく必要があります。同社はシンガポール拠点ながら、実質的に日本市場を主戦場とする企業です。創業者の渡辺創太氏は、日本最大級のパブリックブロックチェーン「Astar Network」を立ち上げ、ソニーとともにEthereumレイヤー2の「Soneium」を共同開発してきた人物。Web3業界における日本側の中核的な技術者のひとりといえます。

今回のシリーズAには、構造的に注目すべき点があります。SBI Groupの5,000万ドルは単なる財務的な出資にとどまらず、すでに共同開発中のStriamとJPYSCというプロダクトへのコミットメントを「資本」という形で明示したものです。Sony Innovation Fundの1,300万ドルも同様で、Soneiumエコシステムとの連携強化という戦略的な意図が読み取れます。「パートナーシップ発表」から「資本注入」へのステップアップは、両社がStartaleの事業仮説を本格的に信頼したことを示しています。

ここで押さえておきたいのが、Striamの現在地です。2026年2月5日に発表されたこのLayer 1ブロックチェーンは、現時点ではまだ概念実証(PoC)フェーズにあり、テストネットの公開も「近日予定」という段階。商業ローンチの日程は未発表です。「スケールアップに資金を使う」という発表ではありますが、実際のプロダクトはこれから本番環境に向けて開発が進む局面であることは、冷静に認識しておく必要があります。

円建てステーブルコイン「JPYSC」についても同様で、2026年Q2のローンチを目標としながらも、規制当局の承認待ちという状況が続いています。信託銀行(新生信託銀行)の裏付けを持つという点は、従来のオフショア発行型ステーブルコインとの決定的な差別化要因になりえます。一方で、規制対応のプロセスが遅延するリスクは否定できません。

このプロジェクトが示す最も重要な方向性は、「垂直統合」という設計思想です。インフラ(Strium)→決済レイヤー(JPYSC/USDSC)→コンシューマー接点(Startale App)という層構造を、一社グループで完結させようとしている。これが実現すれば、日本株のトークン化証券を個人ユーザーがスマートフォン一つで24時間取引できるような世界が、現実味を帯びてきます。

背景として見逃せないのが、政府の動向です。片山さつき財務大臣が2026年を「デジタル元年」と宣言し、証券取引所への暗号資産取引統合を公言したことは、SBI・Startaleの事業計画に強力な追い風となっています。また金融庁は主要105銘柄の暗号資産を金融商品として再分類する方針を進めており、規制の枠組み自体が急速に整備されつつあります。

潜在的なリスクを挙げるとすれば、Striamがパーミッション型かパーミッションレス型かという基本設計がいまだ公開されていない点、そして規制承認のタイムラインが想定よりも長引く可能性です。また、SBIは同時期にRippleとのステーブルコイン連携や100億円規模のオンチェーン債券発行も進めており、Startaleとのプロジェクトがそのエコシステム内でどう優先されるかという問いも残ります。

それでも、SBIが持つ8,000万人以上の既存顧客基盤とStartaleの技術スタックが組み合わされば、日本発の「オンチェーン金融インフラ」が本格的に離陸しうるポテンシャルがあります。2026年は、その答え合わせが始まる年になるでしょう。

【用語解説】

シリーズA
スタートアップ企業の資金調達ラウンドの段階を示す呼称である。「シード」の次に位置し、プロダクトの実用化・スケールアップを目的とした本格的な機関投資家向け資金調達を指す。

RWA(リアルワールドアセット)
不動産・株式・債券など、現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でトークン化したものの総称である。「現実資産」とも訳される。

トークン化証券
株式や債券などの金融商品をブロックチェーン上のトークンとして表現したもの。24時間取引・即時決済・少額単位での売買が可能になる点が従来の証券と異なる。

ステーブルコイン
法定通貨(円・ドルなど)や資産に価値を連動させ、価格変動を抑えた暗号資産の一種。JPYSCは円建て、USDSCはドル建てのステーブルコインである。

Layer 1 / Layer 2
Layer 1はブロックチェーンの基盤となるネットワーク(例:EthereumやStrium)。Layer 2はLayer 1の上に構築された処理効率を高めるための追加レイヤーで、SoneiumはEthereumのLayer 2にあたる。

SuperApp
決済・資産管理・SNS・サービス利用などの複数機能を一つのアプリケーションに統合したプラットフォームの総称。WeChat(中国)やGrab(東南アジア)が代表例として知られる。

PoC(概念実証)
Proof of Conceptの略。新しいシステムや技術の実現可能性を検証する初期段階のテストを指す。本番環境への移行前の重要なステップである。

垂直統合戦略
インフラ・中間レイヤー・エンドユーザー接点までを単一のグループで一貫して提供する事業戦略。外部依存を減らし、ユーザー体験の質とコスト効率を高めることができる。

【参考リンク】

Startale Group(外部)
シンガポール拠点のブロックチェーン開発企業。Strium・JPYSC・Soneiumを手がけ、SBIおよびSonyと戦略的連携を結ぶ。

SBI Group(外部)
日本最大級の総合金融グループ。証券・銀行・保険・暗号資産分野で事業展開し、Startaleへの出資でオンチェーン金融を推進。

Sony Innovation Fund(外部)
ソニーグループのCVCとして2016年に設立。新興テクノロジー企業への投資を行い、今回のStartaleへの出資を主導した。

Soneium(外部)
ソニーとStartaleの合弁会社が開発したEthereum Layer 2。2025年1月のメインネット後、急速に成長したブロックチェーン。

Strium(外部)
SBI HoldingsとStartaleが共同開発したLayer 1ブロックチェーン。アジアのトークン化証券・RWA市場の基盤を目指す。

Astar Network(外部)
渡辺創太氏が創設した日本最大級のパブリックブロックチェーン。Polkadot上に構築されStartale Groupの技術的ルーツにあたる。

【参考記事】

Startale Group Closes $63 Million Series A with Investment from SBI Group and Sony Innovation Fund(外部)
Startale $63Mシリーズ完了の一次情報源。SBIとSonyの出資背景や各プロダクト用途、両社首脳のコメントを収録。

SBI Backs Startale’s L2 and Tokenization Push With $50M(外部)
SBI・Startale協業の2025年8月から2026年3月までの時系列を詳述。資本参加に至る関係深化を理解できる記事。

Startale and SBI Holdings Unveil Strium, a Layer 1 Blockchain Designed for Tokenized Securities and RWA Trading(外部)
Strium発表の公式資料。18.9兆ドル規模の市場試算とSBI顧客8,000万人超の活用方針、PoC段階の仕様を詳述する。

Japan’s Finance Minister Says She Supports Crypto Trading at Stock Exchanges(外部)
片山さつき財務大臣が東証の新年挨拶で2026年を「デジタルの年」と宣言。暗号資産取引の証券取引所への統合支持を詳報した記事。

SBI, Startale progress tokenized trading platform Strium(外部)
Strium分析記事。18.9兆ドルの市場を背景に、パーミッション型か否かという技術的未解明点にも踏み込んだ専門媒体の解説。

SBI Holdings, Startale Launch Strium Network for Tokenized Securities Trading(外部)
SBI・Startaleが発表したStriamはPoC段階にあり、テストネットや商業ローンチの日程が未発表であることを明示した記事。

Japan’s SBI to Issue 10 Billion Yen Onchain Bond with XRP Rewards for Retail Investors(外部)
SBIが100億円(約6,450万ドル)のオンチェーン債券を個人向けに発行。Startale以外の軸での展開を示す重要な背景情報。

【編集部後記】

日本の金融とブロックチェーンが、いよいよ本格的に交差しはじめています。SBIの8,000万人超の顧客基盤がオンチェーンにつながる日は、もう遠くないかもしれません。

あなたは、スマートフォン一つで日本株をトークンとして24時間取引できる未来を、どう感じますか?ワクワクしますか、それとも少し不安ですか?ぜひ、あなたの声を聞かせてください。

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