Superteam Brazilは2026年6月17日、オープンソースのSolana開発者ツールキットをリブランドおよび拡張し、従来「solana-claude」と呼ばれていたプロジェクトをSolana AI Kitとして公開した。
導入方法は2通りである。Claude Codeのプラグインとして使う場合は、まず /plugin marketplace add solanabr/solana-ai-kit でマーケットプレイスを追加したうえで、/plugin install solana-ai-kit@stbr を実行する。一方、ワンライナー curl -fsSL https://aikit.superteam.codes | bash(GitHubリポジトリ github.com/solanabr/solana-ai-kit へ解決)では、18の外部スキルサブモジュールまで含むフル構成を導入できる。
キットは15の専門エージェント、29のワークフローコマンド、18の外部スキルサブモジュール、7つのMCPサーバー統合をまとめており、サブモジュールにはSolana Foundation、SendAI、Cloudflare、Trail of Bits、Anthropicなどが管理する公式リポジトリが含まれる。対象はプログラム設計からデプロイ、セキュリティ監査、ドキュメント作成までの開発ライフサイクル全体である。
【編集部解説】
今回のニュースの本質は「ツールが増えた」ことではなく、「Solana開発の知見が、配布できる部品として梱包された」ことにあります。これまでsolana-claudeとしてGitHubに置かれていた設定集が、Claude Codeのプラグインとして配布されるようになりました。ここで一点おさえておきたいのは、導入経路によって手に入る範囲が異なることです。プラグイン版(Core kit)は15エージェント・29コマンド・7 MCPサーバーなどを含む一方、18の外部スキルサブモジュールはcurlによるフルインストール側の構成で、READMEでもプラグイン版はサブモジュールを運べないと明記されています。それでも、発見と導入のハードルが一段下がったことに変わりはありません。
ここで理解しておきたいのが「プラグインマーケットプレイス」という仕組みです。Anthropicは2025年10月、Claude Codeにプラグイン機構を導入しました。スラッシュコマンド、専門エージェント、MCPサーバー接続、フックといった「AIの働き方」をひとまとめのパッケージにし、npmのように共有・インストールできる構造です。Solana AI Kitは、その器にSolana開発のノウハウを丸ごと詰めたもの、と捉えると分かりやすいでしょう。
注目したいのは、18の外部スキルサブモジュールという設計判断です。Superteam Brazilはすべてを自前で書かず、Solana Foundation、SendAI、Cloudflare、Trail of Bits、Metaplex、そしてAnthropicといった、各領域をもっともよく知る組織の公式リポジトリを「取り込む」形を選びました。これは、エコシステム全体の知見を一点に集約する試みと言えます。
実務的に何ができるようになるのか。Solanaを触ったことのない開発者でも、/doctor で環境を点検し、本番投入できる構成を最初から手にできます。一方、熟練の開発者にとっての価値は /audit-infra にあります。CIログに漏れた鍵や、汚染された依存関係といった、オンチェーンの外側に潜むリスクを、開発と同じAIアシスタント上で点検できる。後回しにされがちな作業を、ワンコマンドの習慣に変える発想です。
ただし、楽観だけでは語れません。便利な「自動構成」は、裏を返せば、開発者が中身を十分に理解しないまま本番環境に到達できてしまう、ということでもあります。鍵を扱うブロックチェーン開発において、AIが組んだ設定をそのまま信じることの危うさは、軽視できません。「思考と判断の主体は人間」という原則は、まさにこうした局面で問われます。
サプライチェーンの観点も見落とせません。18の外部リポジトリを束ねるということは、依存関係が18本に増えるということでもあります。皮肉にも、その依存リスクを点検するためのTrail of BitsやGhost Securityのスキルが同梱されている。守りの道具と、守るべき対象が、同じパッケージに同居している構図です。
規制との関係では、直接的な影響は今のところ限定的でしょう。これは開発支援ツールであり、金融商品ではありません。とはいえ、AIが生成した監査済みコードの「責任の所在」は、将来的に議論の的になりえます。AIが見落とした脆弱性が原因で資金が流出したとき、誰が説明責任を負うのか。この問いは、まだ答えが用意されていません。
長期的に見れば、これは「ブロックチェーン開発の標準作法が、AIに読める形で言語化されていく」流れの一例です。Triton OneがSolanaの履歴台帳をClickHouse上に再構築したオープンソースの読み取り基盤「Superbank」を公開するなど、2026年のSolana開発環境は着実に厚みを増しています。人間が暗黙知として抱えていた設計判断が、エージェントとコマンドという形で形式知化される。その積み重ねが、次の世代のビルダーの出発点を引き上げていくはずです。
【用語解説】
Solana(ソラナ)
高速・低コストの取引処理を特徴とするブロックチェーンの一つ。多数の取引を高いスループットで処理できる設計で、DeFiやゲーム、決済などの分野で使われている。ネイティブ通貨はSOL。
Claude Code(クロードコード)
Anthropicが提供する、ターミナル上で動くエージェント型のコーディングツール。自然言語の指示でコードの作成や修正、テスト、デプロイなどを代行させられる。
MCP(Model Context Protocol)サーバー
AIエージェントを外部のツールやデータ、APIに接続するための共通規格。Solana AI Kitでは、オンチェーンデータ取得やドキュメント参照など、7つのMCPサーバーが事前設定されている。
サブモジュール(submodule)
別のリポジトリを、自分のリポジトリの中に部品として組み込む仕組み。Solana AI Kitは18の外部スキルを、各組織の公式リポジトリからサブモジュールとして取り込んでいる。
【参考リンク】
solana-ai-kit(GitHub: solanabr)(外部)
Superteam Brazilが公開するSolana AI Kitのソースコード。エージェントやサブモジュール構成を確認できる。
Superteam Brazil(外部)
ブラジルのSolanaコミュニティ公式拠点。開発者向けにメンタリングや助成金、イベントを提供している。
Solana(公式)(外部)
Solanaブロックチェーンの公式サイト。技術仕様や開発者向けドキュメント、エコシステム情報がまとまる。
Claude Code(公式ドキュメント)(外部)
AnthropicのClaude Code公式ドキュメント。プラグインやマーケットプレイスの仕組みも解説されている。
【参考記事】
Claude Code’s Plugin Marketplace: npm for AI-Assisted Development Workflows(外部)
プラグイン機構を「npm的に共有できるパッケージ」と解説。2025年10月の導入経緯にも触れる。
Discover and install prebuilt plugins through marketplaces(Claude Code公式)(外部)
プラグインがスキルやMCPサーバーを1つの導入単位に束ねる仕組みを公式の立場から説明する。
Inside Superbank: Architecture Breakdown(Triton One公式)(外部)
Solana全履歴をClickHouseで再構築したオープンソース基盤Superbankの技術解説。38倍高速の裏付け。
Customize Claude Code with plugins(Anthropic公式)(外部)
2025年10月9日付のプラグイン機構公式発表。導入手順と利用時の信頼性確認の注意喚起を記載。
【関連記事】
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開発者の役割が「コードを書く人」から「エージェントを設計・監督する人」へ移る流れを論じた一本。本記事の編集部解説の問題意識と直接つながる。
【編集部後記】
今回のSolana AI Kitは、「ブロックチェーン開発のノウハウが、AIに渡せる部品になっていく」流れの一場面のように映ります。専門家だけの領域だったものが、コマンド1つで触れられる距離に近づいてきました。みなさんは、こうした変化をどう感じるでしょうか。便利さに心が動く一方で、「中身を分からないまま使ってしまう」不安も、きっと同居するはずです。その両方の感覚を、私たちも一緒に持ち続けたいと思っています。次に何かを「作ってみたい」と思ったとき、その入口がどこまで広がっているか、よければ一緒に確かめていきませんか。

