Morgan Stanley は2026年6月18日、提案中の Morgan Stanley Ethereum Trust と Morgan Stanley Solana Trust について、ステーキングを組み込む修正S-1登録届出書(S-1/A)を提出した。
新たな仕組みでは、ステーキング報酬の5%をステーキングサービスプロバイダーとカストディアンへ支払い、残りをトラストに帰属させてNAVに反映する。年率0.14%のスポンサー報酬を課し、スポンサーは管理報酬を超えてステーキング報酬を受け取らない。
イーサリアムの提出書類によると、2026年5月18日時点でバリデーターの有効化待ち行列は約364万ETHにのぼり、1エポックあたり最大256 ETH(1日あたり約57,600 ETH)の有効化上限から、報酬獲得まで約63日の待機が見込まれる。ソラナの修正書類は同様の報酬分配を記すが、1日あたりの流入上限は明記していない。
Morgan Stanley は今年、現物ビットコイン連動の上場取引型商品(MSBT)を展開し、Galaxy Digital とも提携している。
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Morgan Stanley adds staking incentive to Ethereum, Solana ETFs
【編集部解説】
今回の修正届出書で最も注目すべきは、Morgan Stanley が打ち出した年率0.14%という手数料水準です。The Block の報道によれば、この0.14%は米国のイーサリアムETF・ソラナETFの両市場において、通常手数料ベースで最安水準とされます。SoSoValue のデータに基づく同社の集計では、これまでの通常手数料の最安はイーサリアムが Grayscale の Mini Ethereum Trust(0.15%)、ソラナが Franklin Templeton の SOEZ(0.19%)でした。ただし一部の商品には期間限定の手数料免除があるため、実効コストは時期や資産残高によって異なります。後発だからこそ手数料で優位を取りにいく、という王道の戦略がここに見て取れます(ティッカーはイーサリアムがMSSE、ソラナがMSOLとされます)。
「ステーキング報酬の5%を事業者報酬とし、残りをトラストに帰属させる」という設計も、読み解くと投資家にとっての意味が見えてきます。ステーキングとは、保有する暗号資産をネットワークに預けて取引の承認に協力し、その対価として報酬を得る仕組みです。従来の現物ETFは値上がり益しか取れませんでしたが、ステーキングを組み込むことで「保有しているだけで利回りが乗る」状態に近づきます。報酬のうち5%は、実際にバリデーター(承認作業を担う計算機)を運用する事業者やカストディアン(資産の保管業者)へ支払われ、残りはトラストに帰属します。なお報酬はNAVに反映され、月次または少なくとも四半期で投資家へ分配される見込みですが、利回りは保証されず、ゼロになる可能性もあります。
ここで効いてくるのが、運用の外部委託という構造です。The Block や CoinCentral の報道、およびSEC提出書類では、ステーキングの実務は Figment、Galaxy Blockchain Infrastructure、Coinbase Canada といった専門業者が担い、資産の保管は BNY Mellon と Coinbase Custody が務めるとされています。銀行本体ではなくカストディアンが秘密鍵を管理し、ステーキング事業者は資産移転用の鍵を持たない設計です。伝統的金融が暗号資産の技術的リスクをどう「分業」で吸収しているかが、よく表れた構造といえます。
一方で、見過ごせないリスクも開示されています。ひとつはスラッシング、つまりバリデーターがルール違反や稼働不良を起こした際に預けた資産の一部が没収される罰則です。利回りには必ず代償が伴う、という当たり前の原則がここにもあります。
もうひとつが、イーサリアム特有の「約63日の順番待ち」です。届出書では2026年5月18日時点で約364万ETHが有効化の待ち行列に並び、1エポックあたり最大256 ETH、1日あたり約57,600 ETHしか新規参入できないと記されています。つまりファンドが資金を集めても、すぐ全額を稼働させて利回りを生めるわけではありません。ソラナ側の修正書類にこの種の日次上限が明記されていないのは、両チェーンの設計思想の違いを映しています。
規制の文脈を補えば、この動きは決して突発的なものではありません。SEC は2026年3月17日に、非証券とされる暗号資産のプロトコル・ステーキングなどへの連邦証券法の適用を明確化する解釈を公表しました。これにより、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)型資産のステーキングETFを組成する道筋が大きく開けました。すでに BlackRock の ETHB や Bitwise の BSOL といった先行商品が走っており、Morgan Stanley はその潮流に低コストで合流しようとしている、と位置づけられます。
長期の視点で見ると、本件の本質は「利回りを生む暗号資産」が、証券口座のなかの普通の金融商品として並び始めたことにあります。ウォレットも秘密鍵も意識せず、銀行や証券会社の画面から利回り付きのデジタル資産に触れられる——その地ならしが、いま静かに進んでいるのです。
ただし、これらはあくまで SEC の審査中であり、上場日も確定していません。手数料競争の激化が運用各社の体力を削る可能性や、利回りを求める資金がネットワークの待ち行列をさらに長くするといった副作用も、今後注視すべき論点として残されます。
【用語解説】
ステーキング
保有する暗号資産をブロックチェーンのネットワークに預け入れ、取引の承認作業に協力する仕組みである。その対価として報酬(利回り)を受け取れる。PoS型のチェーンで採用されている。
エポック
イーサリアムにおける時間の単位である。一定数のスロットをまとめた区切りで、バリデーターの有効化はこの単位で処理される。届出書では1エポックあたり最大256 ETH(約8バリデーター相当)が新規に有効化できる上限とされ、これが1日あたり約57,600 ETHに相当する。
S-1登録届出書
米国で証券を公募する際に SEC へ提出する登録書類である。事業内容やリスク、手数料などを開示する。修正版は「S-1/A」と呼ばれる。
PoS(プルーフ・オブ・ステーク)
資産を預けた量などに応じて承認権限を割り当てる、ブロックチェーンの合意形成方式である。
【参考リンク】
Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)(外部)
米国の大手投資銀行・資産運用会社。本件のステーキング型ETFを提出した主体である。
SEC EDGAR|Morgan Stanley Ethereum Trust S-1/A(外部)
有効化上限256 ETH/エポック、57,600 ETH/日、約63日待機などを記す一次情報である。
SEC EDGAR|Morgan Stanley Solana Trust S-1/A(外部)
SOLのステーキング手順や報酬配分、最大100%ステークの設計を記す一次情報である。
Galaxy Digital(外部)
暗号資産の運用・トレーディング・インフラ事業を手がける企業。本件で提携先や基盤として登場する。
Figment(外部)
機関投資家向けにステーキングインフラを提供する企業。本件のサービスプロバイダーの一社である。
BNY Mellon(外部)
米国の老舗カストディ銀行。本件で資産の保管や現金カストディ、事務管理を務める。
SoSoValue(外部)
暗号資産ETFの資金流入や手数料を集計するデータ基盤。本件の手数料比較の根拠を提供する。
Ethereum 公式(ステーキング解説)(外部)
イーサリアムのステーキングの仕組みを公式に解説するページ。待ち行列の理解に役立つ。
Solana 公式(ステーキング解説)(外部)
ソラナのステーキングと委任の仕組みを公式に解説するページである。
【参考記事】
Morgan Stanley files amendments for ETH and SOL ETFs, revealing lowest fees in market(The Block)(外部)
両ETFの手数料0.14%が両市場で最安水準と報道。Figment等の業者やMSSE/MSOLのティッカーにも触れている。
Morgan Stanley Reveals 0.14% Fees for Proposed Ethereum and Solana ETFs(CoinCentral)(外部)
手数料は日次計上・現金払いで、95%が投資家・5%が業者へ配分される構造を解説している。
Breaking: Morgan Stanley Reveals Fee Details For Ethereum, Solana ETFs In New Filing(Coingape)(外部)
1日約57,600 ETHの制限から約63日の待機が見込まれ、ソラナに日次上限がない点を指摘している。
SEC Crypto Ruling Impact: ETFs, Staking, and Institutional Access in 2026(Phemex)(外部)
2026年3月17日にステーキング利回りの証券法上の扱いが整理された経緯を解説している。
Solana ETF Approval: Where Things Stand in 2026(usethebitcoin)(外部)
包括的上場基準で承認期間が240日超から約75日へ短縮された経緯と現状を解説している。
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【編集部後記】
ウォレットも秘密鍵も意識せず、いつもの証券口座から「利回りの乗った暗号資産」に触れられる日が、すぐそこまで来ているのかもしれません。みなさんは、こうした流れをどう受け止めるでしょうか。手軽さに期待が膨らむ一方で、スラッシングや順番待ちといった「裏側の仕組み」を知ると、見える景色も少し変わってくる気がします。もし関心が湧いたら、ステーキングがそもそも何を支えているのか、その根っこを一緒にのぞいてみませんか。

