IBMのAI研究の歴史
IBMは長年にわたりAI分野の研究開発を行ってきました。1997年に日本で開発されたテキストマイニング技術「TAKMI 」がWatson の基礎となり、2011年にはクイズ番組でWatson が人間のチャンピオンに勝利するなど、AIの先駆者的存在でした。そして2023年5月、年次イベント「Think 2023」で企業向けAI・データプラットフォーム「IBM watsonx 」を発表しました。
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watsonx の特徴
統合されたAI開発環境:AIの開発、デプロイ、管理を支援するツールやサービスを統合した環境を提供しています。企業はAIを自社のビジネスに迅速かつ簡単に導入可能です。
マルチ基盤モデルアプローチ:IBM独自の基盤モデル、サードパーティーのモデル、オープンソースのモデルなど、複数の基盤モデルを1つのプラットフォーム上で扱えます。
企業独自データでのカスタマイズ・拡張:企業独自のデータを用いてAIをカスタマイズ・拡張できる点が大きな強みです。
Red Hat OpenShift上に構築:クラウドだけでなくオンプレミスやエッジ環境でも利用可能です。
責任あるAIワークフローの構築:AIガバナンスツールキットにより、透明性や説明可能性を備えたAIを実現します。
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watsonx の機能
watsonx.ai :AIモデルの開発・トレーニング・デプロイを行うAI開発プラットフォームです。
watsonx.data :オープンなレイクハウスアーキテクチャに基づくデータストアです。
watsonx.governance :責任あるAIワークフローの構築を支援するAIガバナンスツールキットです。
具体的な使用例
人事管理やIT運用の自動化:watsonx を活用し、業務を大幅に効率化します。
ゴルフのマスターズ・トーナメントでのAI分析・予測提供:watsonx を活用し、ファンに詳細な分析や予測を提供しています。
イタリアの通信会社Wind TreやESPNのファンタジーフットボールアプリでの活用事例があります。
第66回グラミー賞での候補者に関する編集コンテンツ生成にも利用されました。
レガシーシステムのモダナイゼーション:COBOLアプリケーションのJavaへの変換などに利用可能です。
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他社AIプラットフォームとの比較
watsonx は、AWS、Google、Microsoft、OpenAIなどが提供する同様のサービスと比較すると、以下のような特徴があります。
エンドツーエンドのAIワークフローの実現や、クラウドだけでなくオンプレミス・エッジ環境への対応などが差別化ポイントです。
言語モデルだけでなくエンタープライズのAIニーズ全般に対応しようとしている点がOpenAIとの違いです。
他社は部分的な機能に注力しているのに対し、watsonx は包括的なプラットフォームを目指しています。
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個人での利用は?
watsonx.ai は基本的に企業向けのサービスですが、一部の機能については個人でも無料で利用可能です。具体的には、Watson Machine Learningの無料枠を利用することで、月に25,000トークンまでは無料でwatsonx.ai を利用できます。
ただし、これはあくまでも試用的な利用を想定したものであり、本格的な個人利用には向いておりません。watsonx.ai は企業のAI開発・運用を支援するための機能を豊富に備えており、個人の利用ニーズに合わない可能性が高いです。
また、無料枠を超えると料金が発生するため、個人で継続的に利用するのは現実的ではないでしょう。
watsonx.ai を個人で利用する場合は、以下の点に注意が必要です。
利用可能な機能が限定的であること
無料枠を超えると料金が発生すること
企業向けの機能が多いため、個人の利用ニーズに合わない可能性があること
したがって、個人でAIを利用したい場合は、OpenAIのAPIなど、個人利用に適したサービスを検討するのが賢明だと言えます。watsonx.ai は、あくまでも企業のAI活用を支援するためのプラットフォームであることを理解しておく必要があります。
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まとめ
IBMは長年のAI研究の蓄積をベースに、企業のAI活用を包括的に支援するプラットフォームとしてwatsonx の提供を開始しました。統合されたAI開発環境、マルチ基盤モデルアプローチ、企業独自データでのカスタマイズ性、クラウドからエッジまでの対応、AIガバナンス機能など、他社との差別化を図っています。
人事管理やIT運用の自動化、スポーツ分野での分析・予測提供、レガシーシステムのモダナイゼーションなど、幅広い分野での活用が期待されます。OpenAIとは異なり、言語モデルだけでなくエンタープライズのAIニーズ全般に対応しようとしている点も特徴です。
個人での利用は一部の機能に限定され、試用的な位置づけとなります。本格的な個人利用には向いておらず、企業のDXを加速する強力なツールとして位置づけられます。
今後のwatsonx の動向から目が離せません。IBMのエンタープライズ向けの技術力とサービス基盤を生かしつつ、最新の生成AIにも対応した総合的なAIプラットフォームとして、企業のAI活用の選択肢を広げていくことでしょう。
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【参考サイト】IBM® watsonx™ IBM watsonx.aiを使ってみた