2026年4月11日前後、ハッキンググループShinyHuntersが、Rockstar Gamesのクラウドサーバーに侵入しGTA OnlineおよびRed Dead Onlineの財務データを流出させたと主張した。4月13日にKotakuがデータを照合・確認した。
流出データをもとにした複数報道によると、2025年9月から2026年4月にかけてのGTA Onlineの平均収益は、日次で約131.9万ドル、週次で約959.2万ドルとされる。一方、Red Dead Onlineの週平均収益は約50.7万ドルと報じられている。さらに、2014年から2024年までのShark Card累計売上は50億ドル超、GTA Onlineのアクティブプレイヤーに占める課金者比率は約4%とされるが、いずれもRockstar Gamesによる公式確認は出ていない。
Rockstar Gamesの親会社はTake-Two Interactiveであり、GTA 6は2026年11月にリリースが予定されている。なお、これらの数値はRockstar Gamesによる公式確認を得ていない。
From:
Hackers Reveal Rockstar Earns Over $1 Million A Day From GTA Online | Kotaku
【編集部解説】
今回の事案でまず理解しておきたいのは、ハッキングの手口です。ShinyHuntersはRockstar Gamesのシステムを直接攻撃したのではありません。Rockstarが利用していたサードパーティ製クラウドコスト監視ツール「Anodot」を起因としてクラウドデータウェアハウス「Snowflake」に侵入したとされています。いわゆる「サプライチェーン攻撃」です。企業がどれほど自社のセキュリティを強化しても、連携する外部ベンダー側に穴があれば突破されてしまう——現代のクラウド依存型インフラが抱える構造的なリスクを、改めて露わにした事例と言えます。
なお、Rockstar Gamesが被害を受けたサイバー攻撃としては今回が3年ぶり2度目にあたりますが、2022年の攻撃は英国の10代の少年が社内SlackへのアクセスによってGTA 6の開発映像などを流出させた別個の事案であり、ShinyHuntersとは無関係です。ShinyHuntersにとって、Rockstar Gamesは今回が初めての標的となります。
流出したデータの中身について、一部メディアが「GTA 6のソースコードが漏れた」と騒いだ向きもありましたが、実際に流出したのはGTA OnlineおよびRed Dead Onlineの収益・プレイヤー指標に関するメトリクスデータが中心です。流出件数については、ShinyHunters側が7,860万件のレコードを保有していると主張しているものの、Reutersはこのデータを即時には検証できていないとしています。そのためRockstarが述べた「限定的な量の非重要情報」とどの程度食い違うか現時点では断定できません。現時点での主要報道ではゲームの開発データやプレイヤーの個人情報が含まれていないとされています。
収益の構成についても補足しておきます。Game World Observerの報道によれば、GTA Onlineの日次収益のうちShark Cardの売上が約74%、GTA+サブスクリプションが約26%を占めるとされています。10年以上稼働するタイトルが、今なお課金とサブスクの二本柱で年間約5億ドル規模(年換算推計)を維持しているという事実は、ライブサービス型ゲームのビジネスモデルの成熟を示すものとして注目に値します。
プラットフォーム別の収益内訳も興味深いポイントです。週間収益でPS5が他の全プラットフォームの合計を上回っており、PCは週間アクティブユーザー数が89万人以上いるにもかかわらず収益は最下位です。この非対称な構造が、Rockstar GamesがGTA 6のPCリリースをコンソールより後回しにしている経営判断の根拠のひとつと見ることもできそうです。
最も皮肉な展開が、株式市場の反応でした。データ流出という通常であれば株価を押し下げるニュースを受けて、翌4月14日の市場開場直後にTake-Two Interactiveの株価はむしろ上昇し、一時的に時価総額が約10億ドル増加したとKotakuは伝えています。投資家たちは「被害」よりも「GTA Onlineが今も莫大な収益を生んでいる事実」を評価した可能性があります。ハッカーが「今ごろ見出しの主役はどんな気分だ」と煽ったつもりが、結果的にRockstarの広告塔になった格好です。
規制や法的観点から見れば、今回の事案はゲーム業界に限らず、クラウドサービスを活用するあらゆる企業に対して、ベンダー管理(TPRM:Third-Party Risk Management)の強化を迫るものです。EUのGDPRや日本の個人情報保護法においても、委託先管理の不備は直接の責任を問われうる領域であり、今後の規制議論に影響を与える可能性があります。
そして視野を2026年11月19日リリース予定のGTA 6に向けると、今回の流出データが持つ意味は一層大きくなります。ShinyHuntersが意図せず「GTA 6への期待感」を市場に再確認させる材料を提供した——このことから、GTA 6のオンラインモードが発表された場合にはGTA Onlineと同等かそれ以上の収益を生み出す可能性が出てくると言えるでしょう。この逆説的な結末は、ライブサービスゲームという産業の巨大さを、業界外の人々にも伝えるできごとになりました。
【用語解説】
ShinyHunters
2020年頃から活動するハッカー集団。Microsoft、Ticketmaster、Cisco、AT&Tなど大企業を標的に、窃取したデータを身代金交渉の材料とする手口で知られる。
Shark Card
GTA Online内で使用できる仮想通貨(ゲーム内マネー)と交換できる、有料のプリペイドアイテム。現実のお金で購入する主要な課金手段であり、今回の流出データによれば週間売上の約74%を占める。
GTA+
Rockstar Gamesが提供するGTA Online向けの月額サブスクリプションサービス。加入者は限定車両やゲーム内通貨などの特典を受け取ることができる。
ライブサービス型ゲーム(Live Service Game)
リリース後も継続的にコンテンツや機能のアップデートを提供し、課金やサブスクリプションによる収益を長期間にわたって得るゲームの運営モデル。
TPRM(Third-Party Risk Management)
企業が外部ベンダーやサプライヤーとの取引・連携において生じるリスクを評価・管理するフレームワーク。
【参考リンク】
Rockstar Games 公式サイト(外部)
GTAシリーズを開発するスタジオ。Take-Two Interactiveの子会社で、GTA Onlineの運営元。1998年設立、本社はニューヨーク。
Take-Two Interactive 公式サイト(外部)
Rockstar Gamesの親会社にあたるゲームパブリッシャー。NASDAQ上場(ティッカー:TTWO)。今回の流出データ公開後、株価が一時的に上昇した。
Snowflake 公式サイト(外部)
大企業が広く採用するクラウド型データウェアハウスサービス。今回の侵害はAnodotを経由して発生したとされる。
Anodot 公式サイト(外部)
AIを活用したクラウドコスト監視・異常検知SaaSを提供する企業。今回の攻撃の侵入経路となったとされる。
【参考記事】
Rockstar’s GTA Game Hacked – Attackers published 78.6 Million Records Online(外部)
流出7,860万件の詳細やAnodot経由のサプライチェーン攻撃の手口、Shark Card・GTA+の収益内訳を報じた専門記事。
Hackers leaked data from Rockstar Games — every day, the company earns over a million dollars from GTA Online(外部)
収益構成(Shark Card 74%・GTA+ 26%)や国別売上データなど原記事にない詳細数値を伝える記事。
Rockstar Hackers Releasing GTA Online Financials Actually Made Take-Two’s Stock Go Up(外部)
流出後にTake-Two株が一時的に約10億ドル増加した逆説的な市場反応を詳報したKotakuの記事。
Rockstar Hack Reveals GTA Online’s $500M Annual Revenue, PS5 Dominance, and PC’s Surprising Lag(外部)
GTA OnlineとRed Dead Onlineの収益格差(約18倍)やPS5優位の構造を分析した記事。
ShinyHunters Leaks Rockstar Games Data: GTA Online Makes $1.3 Million Every Single Day(外部)
流出データをGTA OnlineとRed Dead Onlineで対比形式に整理し、プラットフォーム別分析も充実した記事。
Rockstar Games Hacked, Team Behind It Threaten A Massive Data Leak If Not Paid Ransom(外部)
2022年の英国少年による別事案との違いを明記した、今回のハッキング事案に関するKotakuの初報記事。
【編集部後記】
GTA Onlineが1日に100万ドル以上を稼ぎ続けているという事実、皆さんはどう感じましたか。報道ベースでは、課金しているプレイヤーは全体の約4%にとどまるとされています。れでも巨大な収益規模が成り立っている点は、ライブサービス型ゲームの経済構造を考えるうえで興味深いと言えるでしょう。ライブサービス型ゲームの経済圏は、私たちが思う以上に深く、静かに育っていたのかもしれません。GTA 6のオンラインモードが動き出したとき、この数字はどこまで跳ね上がるのか、一緒に見届けていきたいと思っています。

