メディアエクイティ株式会社は、東武トップツアーズ株式会社と連携し、富山市の関係人口創出事業「TOYAMAみらい市民パスポート」第2弾の募集を、2026年4月28日からNFTマーケットプレイス「HEXA」上で開始した。募集期間は5月11日まで、発行枚数は1,000枚で、富山県外居住者を対象に無料で配布される(譲渡・転売不可)。デザインは富山県出身のマンガ家・山口さぷり氏が手がける。
2026年1月20日から2月15日に実施された第1弾は、定員1,000枚に対し2,433件の応募が集まり、応募者の約75%が20〜30代、約6割が移住検討者、約25%が富山市居住経験者、男女比は男性6割・女性4割であった。保有者特典には富山市ガラス美術館の入館無料、コワーキングスペース「スケッチラボ」の2時間無料利用、オンラインコミュニティへの参加などが含まれる。
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定員の2.4倍・2,433件が応募した富山市公式NFTパスポート、第2弾1,000枚の募集をHEXAで開始!
【編集部解説】
なぜ今、編集部が富山市のNFTパスポートに注目するのか。それは、この事例が「NFT=投機対象」というイメージを静かに塗り替え、Web3技術が地方自治体にとって”使える道具”として定着しつつあることを示すマイルストーンだからです。
第1弾の応募者数2,433件という数字は、人口約41万人を擁する中核市・富山市の規模を考えれば爆発的とまでは言えません。注目すべきは、応募者の約6割が「移住検討中」と回答した点です。従来の観光プロモーションでは捉えきれなかった「潜在移住者」の存在を、デジタル登録証という入口を通じてデータとして可視化できた——ここに本事業の本質があります。
NFTという用語を補足しておきます。Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略で、ブロックチェーン上に「唯一性」と「保有者」を記録する仕組みです。今回のパスポートは譲渡・転売が禁止されており、保有自体に金銭的価値は設計されていません。代わりにNFTを”プログラム可能な会員証”として機能させ、保有者限定コミュニティへのアクセス権として活用しています。
技術的な選択として見逃せないのが、HEXAというプラットフォームです。暗号資産・ウォレット不要、日本円決済対応で、Polygonなどのチェーン上にNFTを発行する仕組みを提供しています。一般ユーザーは「ブロックチェーンに触れている」という意識すら持たず参加できる——この摩擦の少なさが応募殺到を生んだ最大の要因と編集部は見ています。
文脈として押さえておきたい先行事例があります。新潟県山古志地域の「Nishikigoi NFT」(2021年〜)、山形県西川町の「デジタル住民票NFT」(定員の約13.4倍が応募)、石川県加賀市の「e-加賀市民証」(2024年〜)など、地方自治体によるNFT活用は既に蓄積されてきました。富山市の事例で新しいのは、これまで人口数百〜数万人規模の自治体で先行していた手法を、人口約41万人規模の中核市が無料・抽選・関係人口創出という設計で採用した点です。「NFT=有料の権利商品」から、「NFT=関係を継続させるための識別子」へと用途がシフトしているのが見てとれます。
ポジティブな側面は明確です。自治体は「興味を持つ人」を継続的に追跡でき、移住・Uターン情報を本人が望むタイミングで届けられます。第1弾データは、このパスポートが将来の定住人口創出パイプラインの最上流に位置づけられる可能性を示しています。石破政権が掲げた「地方創生2.0」でブロックチェーン活用が言及されている現状、政策的な追い風も吹いています。
一方、課題も冷静に見ておく必要があるでしょう。コミュニティの熱量を継続的に維持する運営の難しさ、NFT保有が条件となることでデジタルリテラシーが低い層を結果的に排除してしまう構造、そしてプラットフォームやチェーンの長期運用に依存する技術リスクです。NFTは現状、改正資金決済法上の暗号資産には該当しないと解釈されており、金融規制の枠外にあります。ただし普及が進めば、消費者保護や個人情報の観点から新たな規制議論が生じる可能性も否定できません。
長期的に見れば、本事例は「地方自治体×Web3」のテンプレートとなり得ます。中核市規模での再現性が示されたことで、人口20〜50万人クラスの自治体が追随する流れが加速するはずです。「行政が住民でない人とどう関わるか」という問いに対し、デジタル証明とコミュニティを組み合わせた解が一つの標準形になりつつある——その萌芽を、第2弾募集の開始に読み取ることができます。
【用語解説】
NFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)
ブロックチェーン上に「唯一性」と「保有者」を記録できるデジタルデータの一種である。コピー可能だったデジタル情報に「世界で一つ」という証明を与える技術であり、近年は会員証・チケット・デジタル登録証など実用的な用途への応用が進んでいる。
ブロックチェーン
取引や保有者の情報を、複数のコンピュータに分散して記録する技術である。一度記録されたデータは事実上改ざんが困難で、暗号資産やNFTの基盤として使われている。
Web3
ブロックチェーンを基盤に、特定企業に依存しない分散型のインターネットを目指す概念である。NFTやDAO(分散型自律組織)など、ユーザーがデータや価値を所有・移転できる仕組みを含む次世代の情報空間を指す。
Polygon
イーサリアム互換のブロックチェーンの一つで、低い手数料と高速な処理が特徴である。HEXAでもNFT発行用のチェーンとして採用されている。
関係人口
総務省が政策概念として提唱する用語で、移住した「定住人口」でも観光で訪れる「交流人口」でもなく、地域に対して継続的に多様な形で関わる人々を指す。地方創生政策における重要指標として位置づけられている。
中核市
人口20万人以上の都市のうち、政令で指定された市を指す。保健所の設置など、政令指定都市に準じた事務権限が委譲される。富山市は2005年に中核市に移行した。
デジタル住民票
実際にその地域に居住していなくとも、地域のファンや応援者が「デジタル上の住民」としてコミュニティに参加できる仕組みである。住民票は法律上の住所を公証するものではなく、地域への愛着や関与を可視化するシンボルとして機能する。
Nishikigoi NFT(山古志地域)
新潟県長岡市の旧山古志村が2021年12月に発行した、錦鯉をモチーフにしたNFTアートである。デジタル住民票の機能を兼ね、世界中から「デジタル村民」を集めた先駆事例として知られる。
改正資金決済法
資金移動や暗号資産(仮想通貨)に関するルールを定めた日本の法律である。NFTは決済手段として使われないため、現状は暗号資産には該当せず、同法の規制対象外と解釈されている。
地方創生2.0
石破政権が掲げる地方創生政策の新フェーズである。デジタル技術や民間活力の導入を強化し、ブロックチェーン・NFTを通じて地域資源の価値を世界規模で最大化する方針が示されている。
【参考リンク】
HEXA(ヘキサ)(外部)
国内最大級のNFTマーケットプレイス。暗号資産・ウォレット不要、日本円のクレジットカード決済で発行・購入が可能。
メディアエクイティ株式会社(外部)
HEXAを運営する東京・品川の企業。NFTを活用した自治体・企業向けソリューションを展開している。
東武トップツアーズ株式会社(外部)
東武鉄道グループの旅行会社。地域活性化事業や官公庁との連携プロジェクトに強みを持つ。
富山市公式ウェブサイト「TOYAMAみらい市民パスポート」(外部)
富山市公式の本事業案内ページ。応募条件、特典、デザイン、抽選プレゼントの詳細が掲載されている。
TOYAMAみらい市民パスポート申込ページ(HEXA)(外部)
第2弾の申し込み窓口。HEXA上に設置された専用ページで、対象者は無料で応募可能。
富山市ガラス美術館(外部)
建築家・隈研吾氏が設計した複合施設「TOYAMAキラリ」内の美術館。本パスポート保有者は入館無料。
Sketch Lab(スケッチラボ)(外部)
富山市が整備した未来共創拠点・コワーキングスペース。本パスポート保有者は2時間無料利用可。
【参考記事】
富山市、NFT活用の関係人口施策が高反響「みらい市民パスポート」募集終了で移住導線を強化(外部)
第1弾募集終了後の総括記事。応募2.4倍、20〜30代74%、移住検討58%、来訪歴89%の実績データを詳述。
富山市公式「TOYAMAみらい市民パスポート」募集開始5日で申込1,000枚超!(外部)
2026年1月25日時点で発行予定数1,000枚を超過したことを伝える第1弾募集中のプレスリリース。
【実績数No.1】全17自治体がHEXA(ヘキサ)でNFTを発行!(外部)
2025年7月時点でHEXA経由のNFT発行自治体が17に達したことを示す調査結果のプレスリリース。
自治体DX事例:人口約5,000人の町が日本初のNFT住民票で関係人口を拡大(外部)
山形県西川町の事例解説記事。1,000円NFTに対し13,440件の購入申し込みが殺到した経緯を詳述。
NFT×デジタル住民票で関係人口を増やせ!旧山古志村で始まる新しい地域再生(外部)
山古志地域のNishikigoi NFTを紹介。人口800人に対し1,000人超のデジタル村民が誕生した事例。
デジタル住民票とブロックチェーン/NFT、地方創生での活用事例(外部)
山古志、加賀市など複数自治体のデジタル住民票事例を横断的にまとめた解説記事。
地方自治体によるNFT活用事例【完全版】(外部)
HEXAが運営する自治体NFTの実績集。八千代町788人の関係人口創出など具体的数値とともに紹介。
加賀市(石川県)の人口推移・将来推計(外部)
2023年住民基本台帳ベースで加賀市の人口を約62,545人と紹介する解説ページ。
【編集部後記】
「NFT」と聞くと、まだ投機や高額アートを連想する方も多いかもしれません。でも今回の富山市の事例は、その印象を少し更新するきっかけになりそうです。お金のやり取りではなく、地域とのつながりを継続させるための”鍵”としてNFTが機能し始めている——そんな静かな変化が、いま地方で起きています。
みなさんがいま想いを寄せている街や故郷はありますか?もしそこから「デジタル市民になりませんか」と声がかかったら、参加してみたいと感じるでしょうか。Web3が私たちの暮らしや帰属意識をどう変えていくのか、編集部も一緒に考えていきたいと思っています。

