株式会社イー・トライアドは2026年6月11日、音声コンテンツから話者が分かる字幕付きショート動画を作成するサービス「Radio Choppit」に、個人ポッドキャスターやラジオ番組向けの新プラン「for ポッドキャスター」を提供開始した。月額1,650円(税込)で毎月10クレジットを利用でき、1クレジットは動画書き出し1分に相当する。60秒動画なら月10本、90秒動画なら月6本程度を書き出せる。
無料のお試しプランは5クレジット、放送局・企業向けの「for ビジネス」は月額16,500円(税込)で月150クレジットである。Radio Choppitは2026年4月に提供を開始し、先行導入先の北陸放送株式会社では制作の作業時間を60分から18分へ短縮した。中核技術は2026年1月8日に特願2026-001853として出願済みである。同社の代表取締役社長は山辺英洋、本社は石川県金沢市。
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ポッドキャストの“聴きどころ”をSNS向けショート動画に。Radio Choppit、個人ポッドキャスター・ラジオ番組向け月額1,650円プラン「for ポッドキャスター」提供開始
【編集部解説】
なぜ今、この一見すると地味な「料金プランの追加」を取り上げるのか。背景には、ポッドキャストという音声メディアの“聴かれ方”そのものが、ここ数年で静かに、しかし決定的に変わったという事実があります。
かつてポッドキャストは、専用の音声アプリで「能動的に探して聴く」メディアでした。ところが今は違います。出典であるオトナル・朝日新聞社の調査では、ポッドキャストの聴取プラットフォーム1位はYouTube、2位がSpotifyという結果が出ています。音声がYouTubeやSNSという「映像の土俵」で発見される時代に入ったわけです。
この変化が、番組のつくり手に新しい宿題を突きつけました。良い番組を配信するだけでは足りず、「まだ番組を知らない人」に向けて、映像として要点を切り出して届ける必要が出てきたのです。Radio Choppitが繰り返し使う“入口”という言葉は、この課題を的確に言い当てています。
技術的な中核は、単なる文字起こしではありません。複数の話者を聞き分ける「話者分離(ダイアライゼーション)」と、会話の中から盛り上がる箇所を見つける「ハイライト抽出」、そして誰の発言かが分かる字幕の自動生成。この一連の処理について、同社発表によれば、2026年1月8日に特願2026-001853として出願済みとされており、技術的な独自性の主張になっています。なお出願日が比較的新しいため、公開特許公報での第三者確認は今後の公開を待つ段階です。
注目したいのは料金体系の細部です。同サービスは「1クレジット=動画書き出し1分」と定義しています。じつはOpusClipなど海外の代表的なツールは、元素材の長さでクレジットを消費する方式をとっており、1時間の番組を読み込めば短い動画1本でも相応のクレジットを使います。これに対しRadio Choppitは“完成した動画の長さ”で課金する設計で、月10クレジットで60秒動画なら10本という見通しの立てやすさにつながっています。
市場全体を見渡せば、この領域はすでに激戦区です。OpusClipは多話者検出を、Choppityは公式ブログで97言語対応や話者追跡をうたい、Spotifyもエピソードごとにショート動画を載せられる仕組みを整えてきました。Radio Choppitの立ち位置は、日本語の番組運営と放送局品質の運用実績を起点にした“国内特化型”という点に見いだせます。
実利は明快です。先行導入した北陸放送(MRO)では、1本あたりの制作時間が従来の60分から18分へと短縮された事例が示されています。これまで専任チームがなければ手が回らなかった作業が、個人や小規模番組でも月額1,650円で回せるようになる——制作能力の“民主化”と言ってよい変化でしょう。
一方で、見落とせない側面もあります。切り抜き文化は本編への入口を広げる反面、文脈を削ぎ落とした断片だけが独り歩きするリスクをはらみます。発言の一部が意図と異なる形で拡散する懸念や、AI文字起こしの誤変換がそのまま字幕に残る可能性は、つくり手側のチェック責任として残り続けます。
長期的には、こうしたツールの普及が「短く・縦型で・字幕付き」というSNS最適化の作法を音声メディア全体へ広げ、標準化が進む可能性があります。それは発見されやすさを高める一方で、番組の個性が定型フォーマットに均質化していく懸念とも背中合わせです。便利さと引き換えに何を手放すのか。Tech for Human Evolutionを掲げる私たちは、その問いごと読者に手渡したいと考えています。
【用語解説】
ポッドキャスト
インターネット経由で配信される音声番組のこと。専用アプリのほか、近年はYouTubeやSpotifyなどでも聴かれている。誰でも配信できる手軽さが特徴である。
話者分離(ダイアライゼーション)
1つの音声の中で「いま誰が話しているか」を機械的に聞き分ける技術。複数人が出演する番組で、発言者ごとに字幕や表示を切り替える土台になる。
ハイライト抽出
長い音声の中から、盛り上がった部分や要点となる箇所を自動で見つけ出す処理のこと。切り抜き動画の「どこを切るか」という選定作業を支える。
ビデオポッドキャスト
音声に映像を組み合わせたポッドキャスト。YouTubeなどで視聴され、話者の表情や字幕とともに楽しめる形式を指す。
クレジット制(1クレジット=書き出し1分)
利用量に応じて消費する単位のこと。Radio Choppitでは完成した動画の長さ(書き出し1分)で1クレジットを消費する設計になっている。
特願(特許出願)
特許庁へ特許を申請した状態を指す。「特願2026-001853」は出願番号であり、審査を経て認められれば特許権が成立する。
【参考リンク】
Radio Choppit(公式サービスサイト)(外部)
音声から話者付き字幕ショート動画を作成するサービスの公式サイト。料金や使い方を掲載。
株式会社イー・トライアド(公式サイト)(外部)
Radio Choppitを運営する石川県金沢市の企業。サービス一覧や会社概要を確認できる。
オトナル|第6回ポッドキャスト国内利用実態調査(外部)
本文で引用した利用率データの出典。朝日新聞社と共同実施した国内調査の概要。
OpusClip(公式サイト)(外部)
長尺動画を縦型ショートに自動変換する代表的な海外AIツール。比較対象として掲載。
【参考記事】
Opus Clip Tested 2026: Where the AI Wins (and the 40% You’ll Discard)|BIGVU(外部)
OpusClipは元素材1分につき1クレジット消費。出来上がる本数に関係なく45分なら45クレジットを使うと検証する。
Why Indie Podcasters Need AI Video Clipping Tools in 2026|OpusClip Blog(外部)
ポッドキャスト産業が世界で300億ドル規模を突破。個人がAIクリッピングで大手と戦う必要性を論じる。
OpusClip Review 2026: Is It Worth It?|Unkoa Marketing(外部)
OpusClipのProプランは年払いで月額約14.50ドル。AIは下書き製造機であり全クリップ確認が前提と指摘。
11 Best AI Podcast Clip Makers & Generators 2026|Choppity(外部)
97言語対応や多話者追跡を紹介。ある事例では公開1週間でDL400%増、SNS表示5万件増と記す。
AI Podcast Clipping Goes Mainstream|OpusClip Blog(外部)
動画クリップが音声より成果を出す理由を整理。音声番組が縦型・字幕付きへ最適化される潮流を裏づける。
【編集部後記】
音声番組が「聴くもの」から「SNSで見つけてもらうもの」へ。その変化のただ中に、私たちもいます。あなたが普段ポッドキャストに出会うのは、音声アプリでしょうか、それともYouTubeやSNSのショート動画からでしょうか。
もし発信する側に立ったとき、60秒の切り抜きで番組の魅力を伝えられるとしたら、どんな一言を選ぶか——少しだけ想像してみると、この技術の意味が自分ごとに見えてくるかもしれません。一緒に考えていけたら嬉しいです。

