フューチャー株式会社は2026年6月より、医療機関や医療業界の企業向けのAI-Drivenコンサルティングサービス「Future MedicAl」の提供を開始する。最新のAIをエンジンとした高速アジャイル開発と業務改善を融合したサービスである。
フューチャーおよびフューチャーアーキテクトは、専門チームのHealthcare Innovation Groupを中心に、デジタル庁の標準型電子カルテα版改修業務の受託、SaMD「ミレボ」の開発から上市、神戸大学との共同研究などの実績を持つ。
Future MedicAlは、体験型プロトタイプを数日~数週間で提示してPoCを実施し、AI駆動開発で得た業務知見をシステム基盤へ蓄積、医療情報セキュリティ基準への対応などの導入課題をクリアする。フューチャーの本社は東京都品川区、代表取締役社長は谷口友彦。
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フューチャー、医療業界向け AI 伴走型コンサルティング「Future MedicAl」を提供開始
【編集部解説】
まず押さえておきたいのは、このリリースが単なる新サービスの告知ではなく、日本の医療現場がいま直面している「時間との戦い」への一つの回答だという点です。2024年4月に医師の時間外労働の上限規制(いわゆる医師の働き方改革)が適用され、限られた人員でいかに業務を効率化するかが、ほぼすべての医療機関にとって待ったなしの課題になりました。
そのうえで「Future MedicAl」の核心は、開発の進め方そのものにあります。従来のシステム開発は要件定義から実装まで数カ月から年単位を要し、完成した頃には現場のニーズとずれている、という構造的な弱点を抱えていました。フューチャーはこれを「AI駆動開発」、すなわちAIを設計や実装の各工程に組み込み、動く試作品を数日から数週間で提示する手法で乗り越えようとしています。
ここで鍵になるのが、リリースが掲げる「自律進化型の業務改善モデル」という構想です。担当者個人の経験に閉じていた業務ノウハウを、AIが参照する「コンテキスト」としてシステム側に蓄積し、改善のサイクルに活かしていく。属人化を解消し、人が入れ替わっても知見が残る仕組みを目指す発想であり、慢性的な人材不足に悩む医療分野とは相性がよいといえます。
このサービスが置かれた文脈も見逃せません。国は「標準型電子カルテ」の整備を進めており、2025年度にα版のモデル事業を通じて課題収集と改修を重ね、2026年度中の完成を目指すとしています。フューチャーはそのα版改修業務を受託した実績を持ち、今回のサービスはこの国策の流れに自社の事業を接続する一手と読み取れます。
一方で、冷静に見ておくべき点もあります。同社が将来的な達成目標として掲げる「生産性3倍」(2026年4月30日のステートメント)は力強い数字ですが、これは現時点の実績ではなく、あくまで今後に向けた目標です。開発業界全体でも、AI駆動開発はいったん過熱した期待が落ち着き、「万能ではない」と認識され始めた段階にあるという指摘が出ています。試作の速さと、本番運用に耐える品質や安全性は別物だという視点は、読者として持っておきたいところです。
とりわけ医療は、扱う情報が人の生命と直結します。リリースが掲げる継続的な学習・改善の構想についても、具体的な学習方式や、医療データを用いる際の同意・検証の手順までは現時点の発表では確認できません。患者データの取り扱いには国の医療情報セキュリティ基準への対応が不可欠で、リリースが特長の3番目にこの点を明記しているのは、裏を返せばそれだけ導入のハードルが高い領域だということでもあります。「速く作れること」と「安全に動かし続けること」の両立こそが、このサービスの真価を決めるでしょう。
長期的な視座でいえば、注目すべきは個別の効率化そのものより、医療現場のノウハウがAIの学習資産として蓄積・移転されていく流れです。フューチャーが掲げる「AI-Native」、つまりAIを後付けの機能ではなく事業の前提に据える発想が、医療という最も慎重さを要する分野でどこまで通用するのか。その実装の質を皆さんと共に見届けていきたいと考えています。
【用語解説】
AI駆動開発(AI-Driven開発)
AIをコーディングの補助にとどめず、要件定義・設計・実装・テストといった開発の各工程に組み込み、開発そのものを高速化する手法。試作品(プロトタイプ)を短期間で動かしながら改善を繰り返す点が従来型と異なる。
アジャイル開発
最初にすべての仕様を固める従来型に対し、小さな単位で開発・検証・改善を反復し、変化する要求に柔軟に対応する開発手法である。
SaMD(プログラム医療機器)
Software as a Medical Deviceの略。診断や治療の支援を目的とするソフトウエア自体が、規制上の医療機器として承認・管理される製品分野である。
ミレボ
フューチャーとアイ・ブレインサイエンスが協業して開発した、認知症の診療支援に用いる神経心理検査用プログラム。アイトラッキング(視線計測)技術により約3分で検査を行い、結果を客観的にスコア化する。2025年1月14日に販売開始された、認知症診療支援に用いるソフトウエアとしては日本初の製品とされる。
AI-Native
AIを既存業務への後付け機能とみなすのではなく、事業やシステムの設計段階からAIを前提に組み立てる発想・あり方を指す。
Healthcare Innovation Group
フューチャー社内で医療・ヘルスケア分野のDXとイノベーションを専門に担う組織。医学・薬事分野の知見を持つコンサルタントが在籍する。
フューチャーアーキテクト
フューチャーの主要事業会社。多様な業界の基幹システム刷新やコンサルティングを手掛け、本リリースでも中核を担う。
【参考リンク】
フューチャー株式会社 公式サイト(外部)
ITコンサルティングとビジネスイノベーションの2軸で事業を展開する、東証プライム上場企業(証券コード4722)の公式サイト。
フューチャー 医療・ヘルスケア事業(外部)
リリース内で案内される、フューチャーの医療・ヘルスケア領域のソリューション紹介ページ。事業の全体像を確認できる。
厚生労働省「医療DXについて」(外部)
国が進める医療DXの目的・全体像・施策をまとめた公的な解説ページ。本サービスが位置づく政策の文脈を把握できる。
デジタル庁(外部)
標準型電子カルテの整備など、医療を含む行政・社会のデジタル化を主導する官庁の公式サイトである。
ミレボ(MIREVO)公式サイト(外部)
フューチャーが開発に関わった神経心理検査用プログラム「ミレボ」の製品公式サイト。検査の仕組みや特長を紹介している。
株式会社アイ・ブレインサイエンス(外部)
「ミレボ」を共同開発した大阪大学発のベンチャー企業。アイトラッキング技術を用いた認知機能評価法の開発を進めている。
【参考記事】
厚生労働省「電子カルテの普及について」(健康・医療・介護情報利活用検討会 資料)(外部)
標準型電子カルテについて「2026年度中目途の完成を目指す」と明記した公式資料。スケジュール表現の根拠とした。
標準型電子カルテの開発と普及(メディアスホールディングス株式会社)(外部)
標準型電子カルテの開発工程を整理。2025年度モデル事業から2026年度中の完成目標までの流れの参考とした。
【2026年版】標準型電子カルテの現状と今後の予定を整理!(ウィーメックス株式会社)(外部)
2026年3月時点の状況をまとめた記事。2026年度中の完成を目指すが具体的日付は未定、費用が課題と指摘する。
「AI駆動開発」の現在地を振り返って(Qiita)(外部)
AI駆動開発をハイプサイクルになぞらえ、「万能ではない」と理解され始めた幻滅期の入口にあると論じる論考。
フューチャー、生成AI時代におけるレガシーシステム刷新プランを提供(PR TIMES)(外部)
2026年4月30日発表の「生産性3倍」という将来目標を掲げたステートメントを参照する関連リリース。
「ミレボ®」が販売開始(PR TIMES)(外部)
2025年1月14日のミレボ販売開始を報じた記事。約3分の検査でスコア化する仕組みの裏付けとした。
厚生労働省「医師の働き方改革 ~医療を未来に繋ぐために~」(外部)
時間外労働上限規制が2024年4月1日から適用される仕組みをまとめた公式資料。同年月の適用開始の根拠とした。
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【編集部後記】
「速く作れること」と「安全に動かし続けること」。この二つの間には思いのほか深い谷があるのかもしれません。
AI駆動開発が医療という慎重さを要する現場に入っていくとき、みなさんなら何を一番に確かめたいでしょうか。試作の速さに心が躍る一方で、患者データを預ける重さに立ち止まる感覚も、きっと自然なものです。この技術が数年後、私たちの通う病院の待ち時間や診療の手触りをどう変えていくのか。同じ時代を生きる一人として、その行方を一緒に見つめていけたら嬉しく思います。
